先週、中国では重要指標の発表が相次ぎました。まず、4月9日に3月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で3.6%の上昇になったと発表されました。3.3%の市場平均予想や2月の3.2%の上昇を若干上回ったため、金融緩和が遠のくのではないかとの懸念から、翌日の株式市場は下落しました。そして、10日に発表された3月の貿易収支は、2月の314億8000万ドルの赤字から一転、3月は53億5000万ドルの黒字になりました。もっとも、輸入の伸び率が2月の39.6%増から3月は5.3%増に大きく落ち込んだため、中国の減速が高まる結果となまりした。しかしながら株式市場はかえって金融緩和が近づいたと見て、反発しています。
4月11日には世界銀行が中国の経済成長率の予測を8.4%から8.2%に引き下げました。また、13日には一番重要な中国の2011年第一四半期の経済成長率が発表。予想を下回る3年ぶりの低水準(8.1%)で、市場平均予想である8.4%を下回り、過去3年間で最低の伸び率になりました。しかしながらこれらの成長率がスローダウンする見通しや結果が発表されたことで逆に金融緩和が進むと期待され、中国本土株式市場は結局13日(金)まで4営業日続伸となっています。このように、中国本土株式市場は引き続き金融緩和の状況がどうなるかを見守っている状況です。中国の景気がスローダウンする数字が発表された場合、金融緩和が進むと見られ株価が上昇し、逆に活況を示す数字が発表されると金融緩和が遠のく懸念が出て株価が下がります。
日本のマスコミではこれらの中国経済の成長率減速を見て、「中国経済急成長のゆがみが遂に出た」とか「中国バブル破綻か!?」と騒いでいますが、中国は2010年第2四半期ごろから、世界に先駆けて引き締め政策に転じていたのであって、今のスローダウンはその成果です。以前にも指摘したとおり、今のところソフトランディングに成功していると言ってよい状態で、早くから引き締めを行っていた中国政府はむしろ、預金準備率や金利引き下げなどの、景気をハードランディングさせないための武器をたくさん持っています。ちなみに4月11日に発表された3月の新規融資金額は予想の8000億元を大きく上回る1兆100億元となっており、実質的な金融緩和は徐々にですが確実に進んでいます。通常、新規融資の伸び率が回復してくると、景気は少し遅れて回復してくるので、欧州危機が深刻にならなければ、中国経済は巡航速度での成長を続けることが出来、ハードランディング懸念で割安になっている株価も、いずれ回復してくると予想します。