建設業の就業者数は減少傾向

日本は生産年齢人口が減少する中で、あらゆる業界で生産性向上が課題となっています。中でも建設業は1997年をピークに就業者数が減少に転じ、高齢化や人材不足の深刻度が増しています。今後、建設業の高齢就業者の多くは退職を迎えるなど長期的な就業者数の減少傾向は避けられないといわれています。

【図表1】建設業の雇用者数推移(万人)
出所:総務省「労働力調査」より株式会社QUICK作成

近年では激甚化・頻発化する自然災害への対応が増えているほか、既存の道路や橋などのインフラ機能は1950~70年代の高度経済成長期に整備されたものが多く老朽化が進んでいます。これらの危機に対応するためにも、将来を見据えて建設業の人材不足への備えは喫緊の課題となっています。ただ、建設業は就業環境が悪いというイメージもあり、若い人材が集まらなかったり就業したとしても定着しづらかったりという現状があります。そのため高齢就業者の技術伝承も難航しています。

ICT活用が急務、少ない工事日数で同じ仕事量を

そこで注目されているのが「ICT(情報通信技術)施工」の普及です。人手に頼る作業をできる限り省力化するため、建設現場にICTを導入し建設生産システム全体の生産性向上を狙うのが目的です。国土交通省も調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までの全ての建設生産プロセスでICTなどを活用する「i-Construction」を推進しています。これまでより少ない人数と工事日数で同じ工事量を実現していくことで、2025年度までに建設現場の生産性に関して2割の向上を目指しています。 

政府が2021年度から始めた「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」でも施策の1つとして「国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進」が掲げられています。施工の効率化・省力化に資する対策、災害関連情報の予測、収集、集積、伝達の高度化などを掲げています。ICT関係で建設現場の生産性向上を促す関連銘柄を以下にまとめました。

【図表2】ICT関係で建設現場の生産性向上を促す関連銘柄
出所:株式会社QUICK作成

建機メーカーなどにも注目 

シーティーエス(4345)は建設ICTの専門企業として知られます。建設現場向けの測量計測器とITシステムサービスを提供しています。土木現場の測量効率化に特化したIT端末を提供しているほか、あらゆる工事データを格納できるクラウドストレージサービスを展開するなど、建設業のICT普及に注力しています。10月29日に発表した2021年4~9月期連結決算は売上高が前年同期比5%増の51億700万円、営業利益が19%増の11億9700万円でした。建設現場での需要増を背景に主力のデジタルデータサービス事業や測量計測システム事業が伸びました。 

建機メーカー大手の小松製作所(6301)は建設現場をデジタル化する「スマートコンストラクション」に取り組んでいます。建設機械での施工をデジタル技術で自動制御する「ICT建機」を軸に、建設生産プロセスの全工程、関与する全ての人やモノを最新のICTで有機的につないで全体最適の実現を目指しています。

5G(次世代通信規格)技術の進展に伴い、将来的に建機の遠隔操作がさらに普及する可能性が高いとされています。建機メーカーは自動化も含めてICT施工で担う役割が大きいですが、その建機の自動化を支えるのがトプコン(7732)です。トプコンは得意とする測量やGPS関連システムの技術が建機自動化に寄与しており、コマツをはじめ世界の建機メーカーとの取引があります。株価も年初から6割超上昇しており、株式市場での評価も高まっています。 

労働集約型産業と呼ばれる建設業界。次の成長に向けて業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)化は待ったなしとなっています。ICT施工を支える企業が注目される状況は当面続くかもしれません。