ウォーレン・バフェットが10年以上継続保有している主な4銘柄

コカ・コーラ(KO)といえば、古くからウォーレン・バフェット氏が投資していた銘柄として有名です。ウォーレン・バフェット氏が運営するバークシャーハサウェイの2009年3月末(金融危機後)の保有株リストを見てみるとコカ・コーラはポートフォリオの22%を占めるトップ銘柄でした。その後、10年以上が経過し、当時の上位保有銘柄のうち、現在も主要株として保有を続けているのはコカ・コーラ、ウェルズ・ファーゴ(WFC)、アメリカン・エキスプレス(AXP)、ユー・エス・バンコープ(USB)の4銘柄程度で、プロクター・アンド・ギャンブル(PG)は現在僅か0.02%に、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)も僅か0.01%にまで激減、石油大手のコノコ・フィリップス(COP)においては保有無しにまで変わっています。

なぜ、ウォーレン・バフェット氏はコカ・コーラに長期投資を行っているのでしょうか?コカ・コーラは1886年設立の当初はコカインを混ぜた薬用酒を販売していた歴史の古い会社ですが、1920年代の禁酒法時代や第二次世界大戦中に米軍の軍需品として需要が拡大し、戦後も米国や世界の消費拡大の波に乗って業績を拡大してきた会社です。

現在のコカ・コーラの株価推移は、どちらかというと緩やかです。しかし、ウォーレン・バフェット氏が投資を初めてからの数十年間という長期で見ると、大きな成長遂げた銘柄であったと言えます。2021年11月5日(終値)現在の株価は56.84ドルです。

【図表1】コカ・コーラ株価チャート(1977年1月~2021年10月末まで)
出所:Bloombergよりマネックス証券作成

1977年にコカ・コーラ株を100万円相当分買っていれば

コカ・コーラの配当データについて調査しました。配当については1977年6月まで遡ることができました。その頃からの株価と配当を計算してみると面白いことが分かります。

まず、1977年5月の(株式分割を加味した)株価は0.7487ドルとなります。配当を除いても株価は約76倍になった計算となります。それでは、ここに配当を加味するとどうなるでしょうか?

過去の配当データで取得できた最も古い配当金額と時期は1977年6月の1株につき0.008021ドルの現金配当です。コカ・コーラは現金配当をその後も四半期毎に出し続けているのですが、基本的には毎年増え続けています。そして、仮に配当が出た翌月末の株価で配当分だけコカ・コーラの株を買い増していった場合、2021年10月末までに持ち株は2.725387株となっています。つまり、株価で約76倍になっている一方、配当分の買い増しによって持ち株も1株から2.725387株まで増えていますので、単純にかけ算をすると206.9倍になっている計算になります。(※)

(※)正確に計算する場合は、単純にかけ算はできないため、あくまで倍率はイメージとなります。また、単位株未満で買う制度があった場合の配当金再投資による参考事例です。なお、税金や取引手数料、為替手数料は考慮しておりません。

もしも、1977年5月に100万円分コカ・コーラの株を買った場合、為替レートが同じあれば、現金配当分を買い増ししていなくても、およそ44年後の2021年10月には7,800万円となっており、買い増していれば、2億690万円まで増えていることになります。たしかに時間は長くかかっていますが、魅力的な金額と言えるのではないでしょうか。

ウォーレン・バフェットがコカ・コーラを保有し続ける理由とは

ところで、コカ・コーラは、現在においては急成長が止まり、緩やか成長となっています。しかし、このような状況でもウォーレン・バフェット氏はコカ・コーラへの投資を継続しています。それは一体なぜでしょう?

ここでコカ・コーラの直近の業績を確認してみましょう。2021年7-9月期の業績は、売上高は16.1%増の約100億ドル、当期利益は42.3%増の24億7100万ドルと増収増益です(数値は、いずれも前年同期比)。もっとも前年同期(2020年7-9月期)は新型コロナウイルスの感染拡大で業績が悪化した時期です。では、新型コロナウイルスの感染拡大前の2019年(通年)の業績と比較すると、売上は8.6%増となっており、この数年は非常にゆったりとした業績成長であることが分かります。

直近1年の成長率だけをみると、コカ・コーラに魅力を感じることは難しいかもしれません。しかし、ここで視点を変えて、20年、30年を超えるような複利効果を狙った超長期投資においては、緩やかな成長が続き、配当も増え続けるコカ・コーラは非常に魅力な銘柄と考えられます。

米国株の中で連続増配、配当利回り3%、好配当のコカ・コーラ

利益については近年成長が止まっており、また年によって当然バラつきもありますが、配当額は増え続けてきました。(図表2参照)

【図表2】コカ・コーラの年間配当履歴推移(1979年~2021年)
出所:Bloombergよりマネックス証券作成
2021年は予想値(直近四半期実績を通期換算)

コカ・コーラの場合、毎年の株価の上昇率がおよそ+8%、それに加え約3%の配当利回りがありましたので、結局キャピタルゲインとインカムゲインを合わせて+11%増という増加が、長期間に渡り続いていました。近年利益は伸びていませんが、過去に蓄積された利益と安定したフリーキャッシュフローによって、配当額の増加ペースにブレがなく、利益の80%近くから配当を出し、増配を続けています。

コカ・コーラの1977年以降の月足株価推移をみると、波はありますが、同社の年間パフォーマンスは高くないものの、非常に安定していることがわかります(図表1)。2008年に発生した金融危機のような緊急事態が無ければ、大きく下がること少ないと考えられます。そして3ヶ月ごとに出される四半期配当は毎年増額されています。ウォーレン・バフェット氏は、この配当でコカ・コーラ株を買い増すということを数十年以上も続けてきたのです。

S&P500指数構成銘柄においても配当総額は増加

米国主要企業500社の平均であるS&P500指数についても同じようなことが言えます。同指数の構成銘柄を見てみると1990年以降、一株当たり純利益は年間平均25.6%増、配当は年間平均5.7%増となっています。

【図表3】S&P500の1株当たり純利益、配当一覧 前年比増加率(1990年から2020年まで)
出所: Bloombergよりマネックス証券作成

【米国株】25年以上連続増配の銘柄5選

米国にはコカ・コーラのように圧倒的なブランド力を持ち、数十年間増配を続けている銘柄が複数銘柄あります。第2のコカ・コーラを探して投資を行うというのも選択肢の1つではないでしょうか。

エマーソン・エレクトリック(EMR)

産業用オートメーション業界で世界4位の企業。世界的な電気電子機器メーカーで、産業用から一般消費者用まで幅広い電子・電気器の開発・製造・販売を行っています。手掛ける製品は、制御機器や電源装置、計測装置、電動工具など幅広い電子機器、またソフトウエア、システム、サービスと幅広く、中でも電源設備や精密空調等の分野、プラント向けのプロセスオートメーションに強みを持っています。

全世界で約170億ドル(2020年9月期)の売上規模を誇り、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、中東、アフリカの150カ国240拠点でビジネスを展開しています。グローバル成長企業としてのプレゼンスも高く、2020年には「Fortune500」に24年連続で、また「Fortune 世界で最も称賛されるべき会社」に7年連続で選出されています。

また産業IoTというメガトレンドに乗る企業の一社であり、3年連続で「IoT Breakthrough Awards」を受賞しています。世界の産業用オートメーション市場は、生産性向上を目指す製造業界における産業用ロボットの採用増を背景に、高い成長率で拡大が続くと予想されています。また脱炭素化の取り組みは長期間に渡る設備投資サイクルとなりますので、中長期的な市場機会の広がりは大きなプラスです。

【図表4】月足ローソク足チャート(2013年~直近)
出所:マネックス証券米国株取引ツール「トレードステーション(ウェブブラウザ版)」

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)

4大穀物メジャーの一角。小麦、大豆、トウモロコシなどの穀物を農家から買い入れ、集荷し、保管、輸送を行う穀物商社です。特に穀物では、とうもろこしや油脂、小麦の取り扱いや製粉にも強みを持ち、穀物メジャーとしてはトウモロコシで最大の流通量を誇ります。また、世界160か国をつなぐ穀物メジャーとして、買い付けた穀物を貯蔵するサイロやエレベーターを約500施設、約350の原料製造施設、また輸送手段として鉄道車両やトレーラー、外航船などを保有するなど、世界有数の穀物ネットワークを構築しています。

この巨大ネットワークは、そもそも参入障壁の高い穀物市場での高い競争力となっています。寡占市場で確立された事業基盤と安定した収益、永続的市場での展開、という特徴を礎に、増配が今後も続くのではないかと期待します。

【図表5】月足ローソク足チャート(2013年~直近)
出所:マネックス証券米国株取引ツール「トレードステーション(ウェブブラウザ版)」

キャタピラー(CAT)

重機の世界シェア1位を走り続ける世界的企業であり、継続した配当が見込まれる大型高配当銘柄。同社の製品は建設業界や資源業界の影響を大きく受ける特徴があります。したがって、株価自体は景気が良いときと悪いときで大きく変動しています。

しかし、同社はその圧倒的なシェアと、バランスの取れた売上構成(2020年12月期の地域別売上構成は北米が43.6%、アジア太平洋地域が24.5%、EAMEが23.6%、南米が8.2%)から増配を続けられる体制を構築しており、今後も世界経済の拡大と共に堅調に業績を拡大していけるものと思います。

【図表6】月足ローソク足チャート(2013年~直近)
出所:マネックス証券米国株取引ツール「トレードステーション(ウェブブラウザ版)」

アルビマール(ALB)

世界最大のリチウム原料生産企業です。ノースカロライナ州シャーロットを拠点とする
1887年からの古い歴史を持つ企業でリチウム、高性能科学薬品、触媒ソリューションなど
特殊化学品の老舗企業。製薬会社、洗浄製品メーカー、水処理会社、農業会社、電子製品メーカー、製油所など幅広い業界で製品の添加剤、及び中間体として利用されています。

売上の約4割を占めるのがリチウムです。電気自動車やノートパソコン、スマートフォンなど、リチウム電気の需要は拡大が続いており、同社の業績も堅調に拡大しています。世界75ヵ国以上で事業を展開しており、約2300の顧客に製品を提供しています。売上の75%は米国外での売上となります。同社は事業拡大の一環として買収による事業拡大を行っており、今後も買収による事業拡大が続く見通しです。

2015年にはリチウム製品メーカーで世界最大手であったロックウッド社を62億ドルで買収しており、リチウム事業を大きく拡大しています。今後もリチウム電池を大量に使う電気自動車の普及によってリチウム事業は堅調に拡大していく見通しで、今後も堅調な業績拡大が期待出来るところと思います。

【図表7】月足ローソク足チャート(2013年~直近)
出所:マネックス証券米国株取引ツール「トレードステーション(ウェブブラウザ版)」

オートマチック・データ・プロセシング(ADP)

データ・プロセシング(ADP)は、クラウドベースのHCMソリューションを提供する大手プロバイダーです。HCMとは、(Human Capital Management:人的資本管理)の略で、HCMソリューションは、給与計算から税務処理、勤怠管理、福利厚生管理、人材管理、人事コンサルティングサービスなどを指します。

ADPはこの企業の総務的な部分を、ITを活用して請負うサービスを提供しています。HCMの自動化、クラウドHCM、モバイルHCMの分野ではパイオニア企業として知られます。特に1985年以降は、米国の労働者の約20%の給与を処理するまでに成長を遂げ、今では世界最大の給与計算アウトソーシング会社としてポジションを確立しており、そのビッグデータを基にADP雇用統計を出している企業でもあります。

労働力ビッグデータを新サービス構築に活用できる競争優位性がある企業と言えます。同社のビジネスモデルは、顧客から定期的に料金収入を得るサブスクリプション型、ストック型であり、経常的に収益が生まれる構造となっています。今後も業績の拡大が期待出来ます。

【図表8】月足ローソク足チャート(2013年~直近)
出所:マネックス証券米国株取引ツール「トレードステーション(ウェブブラウザ版)」