株価上昇の勢いを増している3社とは
日本株の時価総額ランキングに大きな変動が起きています。ご存知の通り、日本企業の時価総額はトヨタ自動車(7203)が長く1位を維持しています。そして、直近では大きく時価総額を伸ばしたソフトバンクグループ(9984)が2位の座を占める状況が続いていました。しかし、ソフトバンクGの株価が伸び悩んでおり、直近では時価総額ベスト5からも外れ、6位になっています。子会社であったドコモを統合したNTT(9432)も時価総額を伸ばしており、5位になっていますが、注目すべきは2位から4位です。11月15日時点で時価総額2位はソニーグループ(6758)、そして3位はキーエンス(6861)、4位はリクルートホールディングス(6098)になっています。
例えば、アベノミクス相場が始まった直後の2012年末の時価総額を見てみると、ソニーは50位以内に入っていません。キーエンスも35位でした。リクルートHDはまだ上場さえしていませんでした。リクルートHDは2014年10月に上場しましたが、リクルートHDが年末の時価総額で50位以内に入ったのは2016年でした。
2016年末はキーエンスが13位、ソニーが16位、リクルートHDは41位です。2016年末の時価総額上位はNTTドコモと日本電信電話が2位・6位、子会社のソフトバンクモバイルが上場する前のソフトバンクグループが4位、KDDI(9433)が5位と通信会社が上位を占めています。三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)が3位、ゆうちょ銀行(7182)は7位、三井住友フィナンシャルグループ(8316)、みずほフィナンシャルグループ(8411)がそれぞれ8位、10位で金融も上位だったことが分かります。
つまり、ソニー、キーエンス、リクルートHDはここ数年間でそれらの企業を一気に抜き去っていったわけです。この半年間ほどはその3社の勢いが増してきており、日経平均・トヨタ自動車・NTTとの比較チャートは以下のようになります。
リクルートHDの株価上昇が抜けており、ソニー、キーエンスもそれに続きます。トヨタも健闘していますが、NTTは他と比べるとだいぶ劣り、日経平均は全然冴えないと言ってもいいような状況です。マネックス証券のスクリーニング機能は時価総額順に表示することができます。さらに移動平均との乖離率をあわせて表示することで、直近で株価が上がっている銘柄を確認することができます。時価総額上位の銘柄の現状を見てみましょう。
時価総額ランキング新メンバーの株価推移
図表2を見ると、先述のソニー、キーエンス、リクルートHDの対26週移動平均乖離率が目立ちます。分かりやすく言うと、この半年間で特に値上がりしているということです。他には、東京エレクトロン(8035)とOLC(オリエンタルランド)(4661)が目立つことも分かります。OLCは新型コロナウイルス感染拡大の落ち着きに伴う反発の面が大きそうですので、先述の3社に東京エレクトロンを加えたあたりが時価総額上位の新メンバーと言えそうです。2016年末の時価総額上位50社に東京エレクトロンは入っていません。2020年末でも20位だったのが、今や7位ですから、まさに成長株と言えるでしょう。
それら5社の2019年末、2020年末、直近の株価と2020年、2021年直近までの上昇率をまとめると図表3のようになります。東京エレクトロンは2年連続で5割以上の上昇で、2019年末から株価は倍を超えています。リクルートHDは2021年の値上がりが目立っており、2019年末と比較するとやはり倍くらいになっています。ソニー、キーエンスも概ね倍くらいになっていることが分かります。
時価総額上位企業の株式を保有する企業は?
前回の記事で凸版印刷(7911)がトッパン・フォームズ(7862)を公開買付することをお伝えしましたが、凸版印刷はリクルートHD株を売却することで保有現金を大幅に増やしていました。リクルートHD株は引き続き、凸版印刷のほか大日本印刷(7912)、日本テレビ放送網(日テレHD(9404)の子会社)など印刷会社・放送会社が少なくない株式を保有しています。一方で、凸版印刷や日テレHDの株価はそれほど上昇していません。他にリクルートHD株を保有している企業は、直近決算時でその後売却していなければ、インターネットイニシアティブ(3774)が75万株、博報堂DYHD(2433)が1071万株、テレビ朝日HD(9409)が750万株、TBSHD(9401)が約2500万株、日本製紙(3863)が約266万株、共同印刷(7914)が150万株、フジ・メディア・ホールディングス(4676)が650万株などです。いずれも自社の時価総額を考えても小さくない金額です。
TBSHD(9401)は東京エレクトロンの大株主としても知られます。TBSの有価証券報告書によれば、2020年3月末決算で約1220億円だった東京エレクトロン株は2021年3月末には約2800億円、直近株価だと約3500億円まで値上がりしています。一方、TBSの時価総額は約3400億円にとどまります。
時価総額上位の変動により、保有株式の価値も大きく変わってきています。さらに、凸版印刷の例のように保有株の売却を進めるような動きもあります。先述の通り、ただ保有しているだけですと企業の株価にあまり影響はありません。しかし、今後株式が売却されたり、その資金が活用されたりする場合には、注目されうると思います。次回は保有株の確認方法などを見ていきましょう。