今週の日本株相場はリスク要因の後退から戻りを試す展開と予想する。

米連邦政府の債務上限問題は12月まで一時的に棚上げされ、目先の債務不履行リスクは後退した。中国の不動産大手、恒大集団の債務リスクはくすぶるものの、とりあえず国慶節連休明けの中国市場が堅調だったことで、こちらも目先一服か。

しかし、なんと言っても最大の懸念材料の後退は、岸田首相がフジテレビの番組「日曜報道 THE PRIME」に出演し、先の自民党総裁選挙で言及した富裕層の金融所得への課税の在り方について、当面、見直しは考えていないという認識を示したことである。

自民党総裁選以降、約12年ぶりとなる日経平均の8営業日続落など日本株は突出した下げを演じてきたが、その要因の多くが、岸田首相の経済政策に対する不信、中でも金融所得課税の見直し議論が最大の悪材料になってきたと言っても過言ではない。

それを封じたということは、岸田さんは評判通り「話をよく聞く」人だったということだ。市場の声に耳を傾けたのだろう。これで一安心していいかは予断を許さないが、目先、市場は首相の態度の変貌ぶりを好感するだろう。

予兆はすでにあった。8日の所信表明演説で金融所得課税の見直しには触れなかった。8日の日経平均が一時大幅高となったのはそれを好感したからという面もあったと思われる。

残るリスクはインフレ懸念と米国の長期金利上昇だ。その意味では13日に発表される米国の消費者物価指数(CPI)、14日に発表される中国の生産者物価指数(PPI)、CPI、米国のPPIなど物価指標の発表は警戒心を持って注視したい。

加えて9月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録も注目される。但し、既に「終わった話」である。しかもこのFOMCに参加していたFRBメンバー数人の交替が予定されている。一層、過去の情報との捉え方がされるだろう。従って今回は相場材料にはならないと見る。

国内では今週は小売などの6-8月期決算発表が佳境を迎える。14日には日経平均への寄与度が高いファーストリテイリング(9983)の本決算がある。月次データが振るわず株価は軟調だが、来期2022年8月期の見通しをどのように出してくるか市場の注目は高い。また、良品計画(7453)の決算にも注目したい。

米国では7-9月期決算発表が始まる。JPモルガン(13日)、バンク・オブ・アメリカ、モルガンスタンレー、ウェルズファーゴ、シティグループ(14日)、ゴールドマンサックス(15日)などの金融株のほか、デルタ航空(13日)、ユナイテッドヘルス、ウォルグリーンブーツ、アルコア(14日)などが予定されている。

僕は岸田政権に対する失望からこれまでの総選挙アノマリー、すなわち解散から総選挙までは株高という過去の経験則が今回は不発だろうと見ていたが、首相が金融所得課税の見直しを封印したことで、選挙と株高アノマリーがやはり今回も起こるだろうとの期待が復活した。首相が市場をケアして、市場にネガティブな政策をすぐに方向転換する柔軟な政治家だということがこれで分かった。これは、大きな成果だ。ますます年末株高シナリオの蓋然性が高まったと考える。