9月に掲載した以下の記事では、直近で大幅に上昇した日経平均の動きの見方をご紹介しました。その後、中国恒大問題の影響を受けて、やや下落しており、その動きの見方についても解説しました。
急騰の日経平均、この半年間のパフォーマンスは欧米指数に勝っている?(2021年9月14日)
中国発のショック?株価チャートから見えること(2021年9月22日)
上記の記事では、マネックス証券のチャート機能の特徴である長期間のチャート表示、複数チャートの比較、豊富なテクニカルチャートを用いて、どのように現状を見るべきかをご説明しました。これらは主要指数のチャートから現状を見てみようというものですから、全体像からのアプローチ方法と言えると思います。一方、今回はそのアプローチ方法とは逆に、個々の銘柄の値動きから現状を見る方法を探ってみましょう。
9月の株価パフォーマンスが良かった銘柄・悪かった銘柄
マネックス証券には「スクリーニング機能」があります。これは一定の条件に合う銘柄を絞り込む機能ですが、ランキング表示のような使い方もできます。
菅首相の退陣表明から約1ヶ月が経過しました。この1ヶ月間の株価パフォーマンスが良かった銘柄、悪かった銘柄を見ることで、これらの銘柄の値動きから直近の上昇局面について確認することができます。
では、どのようにスクリーニングを設定すれば良いのでしょうか。
マネックス証券のスクリーニング機能では「移動平均乖離率」で絞り込むことができます。移動平均乖離率というのは現在の株価が一定期間の平均(移動平均)と比べて、どれだけ乖離しているかを示すものです。
上方乖離(プラス乖離)の場合は一定期間より直近の株価が高い水準で、下方乖離(マイナス乖離)の場合はその逆です。つまり乖離の大きさでその期間の株価パフォーマンスが良かったものを見ることが可能です。スクリーニング機能では移動平均乖離率を対5日、対25日、対13週、対26週で設定できます。つまり、それぞれ1週間・1ヶ月・3ヶ月・半年のパフォーマンスと比較できるということです。
それでは、以下のように設定してみましょう。
本日(10月1日)時点で、東証上場銘柄は4,095銘柄あり、そのうちマーケットを代表するような時価総額の大きい銘柄(1兆円以上)は155銘柄あることが分かります。その上で対25日移動平均乖離率を設定しています。
ここで対25日移動平均乖離率の値で絞り込むこともできます。例えば0%以上とすると25日移動平均乖離率がプラスの銘柄だけを絞り込めます。しかし、ここではマーケットを代表するような銘柄の移動平均乖離率がどのような状況かを見たいので、あえて絞り込まずに結果を出してみましょう。
「検索結果を表示する」をクリックすると、結果が表示されます。
最初は銘柄コード順に155銘柄が表示されます。ここで、対25日移動平均乖離率の大きい順・小さい順に並び替えができます。それぞれ並び替えをした結果を見てみましょう。
9月後半はアフターコロナ銘柄が好調
こうして見ると、乖離率が大きい銘柄は原油高を受けたINPEX(1605)が最上位にある以外はJR東海(9022)、JR東日本、(9020)、JAL(9201)、ANA(9202)、東急(9005)、OLC(4661)と、ほぼアフターコロナ銘柄が並んでいることが分かります。
一方、乖離率の小さい、多くはマイナスの銘柄を見ると海運の郵船(9101)や製鉄の日本製鉄(5401)、JFE(5411)、そして半導体関連が並ぶなど、世界的な景気の影響を受ける銘柄が多いようです。
これはこの1ヶ月ほどの株価の推移が「総理の交替」と「日本国内における感染の落ち着き」を追い風とする一方、中国の問題を起因とする「世界的な景気警戒」が逆風になっていたことを示していると言えそうです。この結果を見ると、輸出比率の高い企業を中心に投資している人と、内需銘柄を中心に投資している人ではマーケットの見え方が全く違うのではないかと思います。
プラス乖離の代表としてJR東海、JAL、マイナス乖離の代表として日本製鉄、郵船をピックアップし、この1ヶ月間の比較チャートを確認すると以下のようになります。
この1ヶ月間で見ると、9月半ばまでは日本製鉄と郵船が比較的好調でしたが、9月半ば以降はアフターコロナ銘柄が大きく上昇しており、直近の中国恒大問題への警戒感の中でも好調であることが分かります。
上記は個別銘柄で比較していますが、業種ごとの比較なども可能です。それらを活用することで、今マーケットがどのような状況にあるのかが、より明確に見えるように思います。期間や銘柄、項目など、変更が可能ですので、一人ひとりのアイディアを活かしたマーケット分析が行えるでしょう。
数回にわたって直近のマーケットの動向について解説してきましたが、次回以降は改めて関西スーパー(9919)の買収の動きなど国内アクティビストの動向を見ていきたいと思います。