株主提案が注目された株主総会の季節を過ぎ、アクティビストの話題もやや落ち着いてきているように思います。現在実施されている公開買付を見ても、ごく一部以外はそれほど注目するような話題もなさそうです。一方、国内マーケットは大きな動きが出ています。言うまでもなく、菅義偉首相の事実上の退陣表明からの新総裁ラリーです。様々な投資機会を探すためには全体の動向を見ることも重要です。今回はこのような大きなマーケットの変動を背景に、直近の動きとその確認方法について解説していきます。

日経平均は菅首相の退陣表明前から上昇していた!?

菅首相の退陣が明らかになったのは9月3日でした。菅首相の退陣表明を受け、当日の株価は高騰。日経平均終値は前日比584円高となっています。菅首相の退陣表明で大きく株価が上がったように見えます。しかし、実は、退陣表明前の9月2日の日経平均終値は28,543円で、直近安値の8月20日の27,013円からは9営業日で1,500円以上上げています。退陣表明を受けて株価上昇が進んだ9月3日以降(9月13日まで)の上げ幅は7営業日で2,000円弱の上昇です。退陣表明が印象的でしたが、実はそれ以前から株価は上がっていたということです。

【図表1】8月中旬以降の日経平均株価
出所:マネックス証券

上記の日経平均株価のチャートを見ても分かるように、もともと上昇傾向だった日経平均は菅首相の退陣表明で弾みがついた動きをしているように見えます。このような動きは国内以外の株価指数と比較することで、より明確に見られます。マネックス証券のチャート機能で比較チャートを表示してみましょう。

【図表2】日経平均、NYダウ平均、DAX30の1ヶ月比較チャート
出所:マネックス証券

米国・欧州の指数と比較しても日経平均が大きくアウトパフォームしていることが分かります。そして、その傾向は菅首相の退陣表明前から確認できます。一方、上記の比較チャートをもう少し長い目で見てみるとまた違った姿も確認できます。

日経平均は8月中旬から欧米の指数を急激にキャッチアップ

【図表3】日経平均、NYダウ平均、DAX30の6ヶ月比較チャート
出所:マネックス証券

上記は先ほどのチャート(1ヶ月)を6ヶ月で表示したものです。こちらを見ると、日経平均は米国・欧州の指数に比べ、ずっと低迷していたことが分かります。まさに8月中旬までは上下動を繰り返しながらも欧米の指数との差が開いていき、切り返す直前は15-20ポイント程度乖離していたことが分かります。しかし、8月中旬以降、急激に切り返し、欧米の指数をキャッチアップしていることが分かります。もう少し長い期間で見ると、どのような形になるでしょうか。

【図表4】日経平均、NYダウ平均、DAX30の5年比較チャート
出所:マネックス証券

同じチャートを5年という期間で見てみると、日経平均と欧米のチャートは概ね同じ動きだということがよく分かります。やや欧州のDAX30のパフォーマンスは劣っていますが、基本的な動きは同様です。

上記のチャートはマネックス証券のチャート機能で表示でき、様々な期間が設定できますが、期間によってはDAX30のパフォーマンスが必ずしも悪いわけではありません。考えてみれば当たり前のことですが、ある程度世界の経済は連動するようになっており、日経平均も実際の構成銘柄はグローバル展開している企業が多数です。

日経平均の急回復は低迷からの反発か

典型的なのは新型コロナウイルスが感染拡大した2020年初頭で、各指数はまったく同じように崩れています。各地で感染の拡大ペースや沈下ペース、その時期は異なったものの、株価指数の動きはほぼ同じということが分かります。上記のチャートを見ると、この半年間ほど日経平均は欧米指数に比べて極端に低迷しており、今回のマーケットの回復もその低迷からの反発だと説明できることが多いように思います。

では、その低迷期は一体どのような状況だったのでしょうか。その指数自体の値動きを見ると分かりそうです。時系列データで株価を見ると、一定期間ごとの株価推移が確認できます。以下は、日経平均の四半期ごとの推移です。

【図表5】日経平均の時系列データ(四半期足)
出所:マネックス証券

四半期という長い単位で見ると、日経平均も基本的には上昇基調であることがよく分かります。上記は約5年間の推移(2021年9月は直近までの推移)で、四半期ごとですので、5×4=20回の四半期の株価推移となります。実に15勝5敗と日経平均は上昇のほうが多かったことがよく分かります。(一方、上昇に比べると下落の数字が大きいようですので、「コツコツドカン」という言葉も必ずしも間違いではないようです)特に2021年4月~6月は珍しい下落だったわけです。

先ほどの比較チャートでご覧の通りNYダウ平均とDAX30は四半期単位で見ると2020年1月~3月のコロナ禍の影響が特に大きかった時期以降はずっと値上がりしており、この時期(2021年4月~6月)の日経平均の動きが特徴的だったことがよく分かります。

このように、やや長い目でチャートや時系列データを確認し、他の指数との比較も行うことで直近のマーケットの状況をより重層的に理解できるように思います。直近で日経平均は27,000円から30,000円を超えるという急騰を果たしています。短期に上がりすぎではないか…と思う方も少なくないのではないでしょうか。しかし、この半年間のパフォーマンスで見ると、日経平均はまだ欧米指数に追いついていない状況なのです。

これを念頭に置くと直近のマーケットの解釈も変わってくるように思います。今回はマーケットを鳥瞰的に眺めました。次回はもう少し個別の動きを見てみたいと思います。