日本に拠点を持ち、日本企業に積極的に投資しているアクティビストが「オアシス・マネジメント(以下、オアシス)」です。この記事では、同社が企業に対してどのような提案をしているのかについて解説します。

オアシス・マネジメントとは

オアシスは、最高投資責任者(CIO)セス・フィッシャー氏が2002年に設立。現在、香港・東京・オースチンの3地域に事務所を置き、40名以上のプロフェッショナルを擁しています。

東京オフィスは、2020年6月に設立されました。海外のアクティビストが日本に拠点を構えるのは珍しく、長期にわたって日本への投資を行なっていく姿勢がうかがえます。

また、同社は「物言う株主」として知られ、日本企業の株主総会で積極的に株主提案を行なっています。では、実際にどのような提案をしているのか見てみましょう。

東芝の増資を引き受けたオアシス

不正会計で自己資本が大きく毀損した東芝(6502)は、2017年12月に約6,000億円の第三者割当増資を行いました。そして、その多くを引き受けたのが海外のヘッジファンドやアクティビストです。

その結果、東芝の外国人保有比率は2017年3月末の38%から、2019年3月末には70%と約2倍になりました。そして、東芝は23億株の新株を発行し、オアシスは3,900万株を引き受けました。

CVCの東芝買収提案は「安すぎる」との見解を表明

2021年4月、英国の投資会社CVCキャピタル・パートナーズ(以下、CVC)が、東芝に買収提案を出しました。CVCの買収提案価格は、1株当たり約5,000円。買収が報じられる前の4月6日の終値3,830円に対し、31%のプレミアムが上乗せされた価格です。

しかし、オアシスは「買収提案価格の5,000円は安すぎる」とし、1株6,200円以上が妥当との見解を示しました。オアシス・マネジメントの提案が伝わると東芝の株価は上昇し、一時前日比2.8%高まで上昇しました。

また、2020年の東芝の株主総会の運営を巡り、不当な影響を一部の株主に与えていたとの調査報告書を受け、オアシスのフィッシャー氏は、「日本のコーポレートガバナンスが試されていという意味で重要だ」と述べ、引き続き動向を注視する考えを示しました。

オアシスは東芝の株主として積極的に意見を表明し、株価にも影響を与えたと考えられます。

三井不動産の東京ドームへのTOBはオアシスへの対抗

2020年11月、三井不動産(8801)は東京ドームをTOB(株式公開買い付け)で買収すると発表しました。TOB価格は1株1,300円で、11月26日の終値897円に対して約45%のプレミアムが加味されました。このTOBの背景にあったのが、筆頭株主であるオアシスへの対抗です。

東京ドームの大株主であるオアシスは当時、東京ドームの経営改革が進んでいないことを不服とし、社長を含む役員3人の解任を求めて会社側と対立していました。三井不動産によるTOBは、オアシスに対する「ホワイト・ナイト」としての役割があります。

しかし、オアシスのフィッシャー氏は、テレビ東京とのインタビューで「今回のTOBは歓迎するべきだ。三井不動産と読売新聞でより良い東京ドームが実現できる」と述べました。三井不動産は読売新聞グループと組んで東京・水道橋の「東京ドームシティ」をテコ入れし、将来的には周辺一帯の再開発も視野に入れていたようです。

オアシスは「TOBに参加するかは三井不動産や読売新聞と直接話して決める」とし、同社が対立姿勢を強めてTOB価格が引き上げられるという市場の思惑は後退しました。

そして2021年1月19日に、三井不動産は東京ドームに対して実施していたTOBが成立したと発表しました。TOBは、2020年11月30日から2021年1月18日まで1株1,300円で実施されました。オアシスもTOBに応募し、三井不動産は同社が保有する東京ドーム株のすべてを買い取る契約を結びました。オアシスと東京ドームの対立は、三井不動産のTOBという形で決着がついたものと思われます。

東洋製罐に脱炭素関連の株主提案

オアシスは、2021年6月の東洋製罐グループホールディングス(5901)の定時株主総会で5つの議案を提案しました。相談役・顧問の廃止や監査等委員会設置会社への移行などの提案に加え、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」を踏まえた経営戦略や計画を開示する内容の条文を定款で新設するよう求めました。

フィッシャー氏は、オンライン会見のなかで「ESG(環境・社会・ガバナンス)が会社の業績にもたらす効果を投資家は注視している」と述べ、さらに「気候変動はグローバルな現象で、提案は日本でも増えてくる」と指摘しています。

欧米では企業と投資家が環境に対する話し合いをすることは珍しくありません。オアシスが、「環境アクティビスト」として日本企業に対応を迫るケースが今後も見られるのではないかと思います。