好決算にサポートされ上昇する米国株

8月に入って1週間が過ぎました。猛威を振るうデルタ変異株の急増が米国民の消費行動に悪影響を与え、米国経済の回復に支障をきたすのではないかという懸念が浮上しているにもかかわらず、米国株は堅調に推移しています。8月6日に発表された米雇用統計が予想以上の雇用者数の伸びを示したこともあり、ダウ工業株価指数は35,208ドル、またS&P500は4,436ポイントで引け、ともに史上最高値を更新しました。

私がこの局面でもマーケットの上昇に安心していられるのは、企業業績というファンダメンタルズの裏付けがある株価の上昇だからです。第2四半期の業績発表については、これまででS&P500採用の89%の企業が発表を終え、前年同期比で99%の増益となっており、86%の企業が事前予想を上回っています。99%の増益は2020年同期の決算がコロナ禍で大きく減益したこともあり、今回大きくリバウンドしたためです。

今後についてですが、10月から始まる第3四半期の決算発表については現時点で28%の増益が見込まれています。さすがに今期ほどの高い成長率ではないものの、企業業績の伸びは今後も継続するとみられており、株価の上昇をサポートすると考えています。 

上院で審議が進む1兆ドルのインフラ法案

なかなか成立の兆しが見えなかったバイデン米大統領が進める1兆ドル(約110兆円)規模のインフラ法案ですが、8月8日(日)にも上院で話し合いが行われています。上院で法案が可決されると、次は下院での審議となります。 

2020年からインフラ法案がいずれかのタイミングで成立するだろうとの期待感もあり、インフラ関連銘柄が買われてきましたが、これで株価の上昇が終わるわけではありません。インフラ投資は息の長い投資となるからです。道路、橋、トンネルなどの建設ブームから恩恵を受けるのは、キャタピラー(CAT)、ディア(DE)、テレックス(TEX)、ユナイテッド・レンタルズ(URI)、EV充電関連でチャージポイント・ホールディングス(CHPT)などが挙げられます。 

年末の米国株が高いことを示唆するアノマリー 

米国株市場のアノマリーを1つご紹介したいと思います。アノマリーとは、理論的に説明できないものの、そのような傾向が見られるというマーケットの規則性のことです。こちらのデータご覧ください。 

【図表】S&P500 パフォーマンス 
S&P500が年初から7月末までに15%上昇した場合の8月以降のパフォーマンス
出所:筆者作成

皆さんご存じの通り、2021年に入って7月末までのS&P500は17%上昇しました。1928年からのデータで、S&P500が7ヶ月間で15%以上上昇したのは20回しかありません。その20回の8月のリターンの平均は-0.12%ですが、その後8月末からその年の年末までのリターンは平均+3.91%となっており、その間S&P500が下落したのは20回中3回だけとなっています。 

9月、10月に訪れるかもしれないマーケットの調整への心の準備を忘れずに

7月12日付の記事で述べた通り、私は年末のS&P500の引けは4,500ポイントと予想しています。今より若干高いレベルを目標としていますが、9月から10月の間に5〜10%程度の調整があると考えています。これは、あくまでも米国株のブルマーケットの中の調整であり、今後マーケットが上昇する上で、必要不可欠な調整だと考えています。今後そのような調整があるかもしれないことを、読者の皆さんも心しておいてください。