配当貴族銘柄が選ばれる「3つの理由」
株式投資でリターンを得る方法は2つ、キャピタルゲインとインカムゲインである。キャピタルゲインは株式を売却して得られる値上がり益のことで、インカムゲインは株式を保有していることで得られる配当金収入である。今回は資産である株式を保有し続けながら、富を生み出していくインカムゲインに焦点を当ててみたい。
高配当利回り銘柄に投資するメリットは3つあると考える。1つはリスクの高いビジネスを展開している企業を足切りできるということ。2つ目は複利効果が期待できるということ。3つ目は株価急落時における下値硬直性を持つことである。
まず1点目。配当金を支払う企業は、株主に対して配当金を支払うための収益またはキャッシュフローを生み出している可能性が高い。つまり収益が出ていない新興企業やその他の財政的苦痛を経験している企業を除外することを意味している。また、高い配当金を支払うということは、経営陣が株主還元に積極的だという姿勢も示している。
2つ目は、複利効果が期待できること。ハートフォードファンドの調べによると、1960年以降、過去50年間に受け取った配当を再投資した場合、配当を含まない場合に比べてリターンが圧倒的に大きくなることがわかった。配当は投資家のリターンに重要な役割を果たしてきたと言える。
配当を再投資した場合のリターン(青) 配当を再投資しなかった場合のリターン(グレー)
3つ目の下値硬直性について。配当貴族が強みを発揮するのは、相場が大きく下げた時のドローダウンが小さいことである。例えば、2008年の世界金融危機の際にS&P 500が4割近く下落したのに対して、配当貴族指数の下落率は22%にとどまった。
以下は1973年以降の配当ポリシー別の平均リターンとベータ値をハートフォードファンドのデータを元にまとめたものである。配当を支払っている株の平均リターンは配当のない株やS&P500指数のリターンに比べて高い。さらに増配をしている株(配当成長株)は平均リターンが相対的に高いだけでなく、ベータ値が低く抑えられている。
では、その配当成長株(=増配株)の例として配当貴族指数を見ていこう。
配当貴族指数にはどのような銘柄があるのか?
配当貴族指数は、25年以上連続して増配を行っている、S&P500に組み入れられている、などの条件を満たした65銘柄から構成されている。配当貴族を構成する65銘柄のうち、8割超の銘柄が時価総額100億ドル以上の大型株で、内訳を見ると生活必需品やヘルスケア、資本財セクターの占める割合が高い。
次の表は、配当貴族構成銘柄のうち配当利回りの高い順に30社をまとめたものである。トップはAT&T(T)、上位にはエクソン・モービル(XOM)やシェブロン(CVX)、アイビーエム(IBM)が入っている。その他、スリーエム(MMM)やキャタピラー(CAT)などの利回りも高く、さらには、ペプシコ(PEP)、プロクター・アンド・ギャンブル(PG)など生活必需品セクターの企業も含まれている。
次のチャートは配当貴族銘柄(一部を除く)を連続増配年数と配当利回りでプロットしたものである。
配当貴族指数の中からテクノロジー企業として唯一構成銘柄に組み入れられているアイビーエムと、60年余りにわたり増配を続けていて利回りの高いスリーエムの決算を確認していく。
配当貴族銘柄の業績
アイビーエム(IBM)
IBMが7月19日に発表した2021年第2四半期(4月から6月)の決算は、クラウド分野で着実な成長を示し、売上高、1株利益ともに市場予想を上回る着地となった。増収となるのは2四半期連続で、なかでもクラウドの総売上高は前年同期比13%増の70億ドルとなった。
営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローは2018年から2019年に落ち込むところがあったが、ともに伸びてきている。
スリーエム(MMM)
スリーエムの第2四半期決算も売上高、1株利益ともに市場予想を上回った。また、コロナ禍からの経済回復を背景に主要な分野での需要が増加しているとし、売上高と利益の見通しを引き上げた。
営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローともに安定的に伸びている。