なぜ米国雇用統計が注目されるのか?

為替の変動要因は様々ですが、経済指標も重要なファクターです。為替の世界では米ドルが基軸通貨として市場の中心にあるため、米国の経済指標は非常に重要です。

中でも最も市場関係者の注目を集めるのは「米国雇用統計」です。就業者数や失業率など、どの国も発表している統計ではあるものの、「雇用統計」といえば米国のものを指します。

原則として、毎月第1週目の金曜日、ニューヨーク時間午前8時30分に米国労働省より発表されます。米雇用統計の発表は月次統計の中では他の経済指標に先駆けているため、他の指標の予測に結び付くことも注目度が高い理由の1つと言えるでしょう。

また、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を決める上でも最重視しているため、為替のみならず、債券や株式の市場関係者も皆、注目しています。その日は日本時間で21時30分(サマータイム、冬時間では22時30分)とはいえ、トレーダーたちは固唾を呑んで米雇用統計の発表を見守っているのです。

特に注目される指標は?

雇用統計では様々な統計(10以上)が発表されます。その中で、特に注目されるのが以下の2つの指標です。

1.NFP (Nonfarm Payroll Employment、非農業部門雇用者数)
2.失業率

この2つは事前に市場アンケートにより予想が発表されるため、市場参加者はその数値をベースに発表に臨みます。発表以前に予想に基づいてポジションを持ち、発表と同時に予想より高い、低いということで判断して動くことも多く、結果だけ見て取引を行おうとすると市場参加者の手仕舞いに巻き込まれることになりかねません。

上記2つの指標についてもう少し詳しく解説しましょう。

1.NFP

Nonfarm Payroll Employment(=非農業部門雇用者数)の略で、民間企業や政府機関に雇用されている人の総数を表します。業績によりレイオフがすぐに行われる米国ならではの指標で、景気状況が即座に反映されるとされます。

ただし季節変動も多く、速報値と改定値(翌月に発表)が大きく乖離することもあります。中央銀行の使命である雇用と物価の安定は、FRBにとってももちろん同様で、かつ移民の多い米国においては常に雇用増大が必要である点は他の国以上に重大な意味を持っているのです。

2.失業率

雇用増大に直接関係する指標です。前述のレイオフなどもここにも見えてきます。雇用者数は減っているのに労働意欲がない人が増えることで失業率も減ってしまうということもあり、失業率が低い=好景気とは言えないこともあります。就業中、求職中の人の合計の全人口に占める割合である労働参加率と合わせて見る必要があります。

発表前後の為替相場

米雇用統計発表時の為替市場は上述もしましたが、値動きが激しくなることが多々あります。発表前は、市場関係者が今か今かと構えているので相場としては穏やかな動きになる傾向があります。

発表直後に一番相場が乱高下しやすくなります。特に予想から乖離した結果が出た時などは大きく動くことも珍しくありません。その後も調整などで売買高が増え、相場の動きは激しくなりがちです。

注意すべきは発表数値が良かったからといって、一斉に「米ドル買い」に行くとは限らないことです。数値の意外性、予想との乖離具合、市場関係者の事前ポジション状況などによって、反対の動きを見せることもあります。

FX初心者にとっては発表タイミングで取引を行うのはリスクが高いことを十分に認識しましょう。