欧米の「カーリング・パパ(Curling Dad)」に中国の「チキン・ベイビー」…いずれも親の熱血教育を表わす言葉です。カーリング競技のスイーパーのように子供の前の障害物を親が懸命に取り払う行為や、強壮剤とされる鶏血を子供に与えて励ますことなどから来ています。新型コロナのオンライン教育で、子供の授業を目の当たりにした親の教育熱が世界的に高まっているようです。
しかし、中国では、こうした教育産業に白羽の矢が立ちました。先月24日、教育産業の非営利化や資本調達の禁止が発表され、テンセントが出資するデカコーンの猿輔導や外資ファンドが出資する瑞思教育などが事業の見直しを迫られています。
中国はこの1年弱でさまざまな規制を厳格化し、世界市場の波乱要因となっています。4月にはアリババ等の優越的地位の乱用が罰せられ、5月には暗号資産の使用や投資、マイニングが禁止され、次いで不動産関連の融資上限も強化されました。IT企業に厳格な対策を義務付ける個人情報保護法の準備も進められており、配車アプリ滴滴出行(ディディ)は6月末にデータ管理の不備を指摘されました。さらに先週同社は、競争を阻害する慣行も当局から非難されました。
中国の独占禁止法は2008年の施行以来、少し前まで矛先が外資に向けられていましたが、最近はプラットフォーマーが標的になっています。米国のように裁判で争うこともなく処分が決まることから、不意打ちぶりと規模の大きさが市場を震撼させます。
今後も中国の規制強化は世界市場の動揺要因になるでしょう。例えば、ゲーム業界や医療など、寡占産業や国民生活に直結する分野が標的として懸念されているようです。以前とは異なり、市場規模が巨大な中国での規制強化は世界的な打撃となり得るだけに注意が必要です。
一方、規制が強化されるのは高成長産業であることの現れでもあります。不動産も暗号資産もその一つです。結局、何度も規制してもその熱は形を変えて再燃しています。今回の教育産業規制もそうかもしれません。たとえ一部で規制が強化されても、恐らく、その熱意が止むことはないでしょう。逆説的に、規制強化は“成長痛”として、中長期的にはポジティブな投資テーマとして注目してよいのではと思います。