米国では住宅価格の上昇が顕著になっています。
オンライン不動産情報サイトのジローの調査によると、テスラがギガファックトリーを建設中であり、同社CEOのイーロン・マスク自身も引っ越したテキサス州のオースティンの5月の平均住宅価格は前年比30.5%上昇しています。同じくアリゾナ州のフェニックスでは23.5%、ユタ州のソルトレイクシティでは20.6%それぞれ上昇しています。
全米50州のうち46の州で、住宅価格は前年比10%かそれ以上上昇しているそうです。

既に不動産を保有しているアメリカ人にとっては、とても良いことですが、これから家を買わなければならない人にとっては大変な状況です。
米国の不動産価格の上昇というと、私がどうしても忘れられない体験があります。
1992年当時働いていた米国投資銀行のニューヨーク本社での勤務中のことです。日本は絶好調だったバブル経済の余韻がまだ残っていた頃です。その時のニューヨークは、景気が良くないだけでなく、ATMで現金をおろす時は気をつけろとすら言われた時代です。実際、当時の日本企業の駐在員がATMで強盗にあったという話を聞いたのは一回だけではありませんでした。 

そんな頃です、私はニューヨークはマンハッタンの年季の入ったアパートに住んでいました。5年間の駐在を経て帰国が決まりオーナーにその旨を伝えた時のことです。1995年の4月くらいのことでした。オーナーは、私にそのアパートを買わないかとかなりしつこく勧めてきたのです。当時私はまだ社会人として若かったこともあり、外国の銀行に借金して米国の不動産を買うという発想は全くありませんでした。

その物件というのは、マンハッタン南部のニューヨーク大学キャンパスの近くで、5番街から歩いても5分程度というロケーションは今から考えても最高のエリアにありました。広さは1,760平方フィート(163平方メートル)くらいで、肝心の価格はというと25万ドル(当時の為替レートで約2,500万円)くらいだったと記憶しています。
この話は完全に忘れていたのですが、その後15年ほど経ってからでしょうか、たまたま訪米中に、そのアパートに住んでいる友人を訪ね、話す機会がありました。
マンハッタンの不動産価格が値上がりしているという話になりました。その友人の話ですと、なんとそのアパートが200万ドル、今の為替で2.4億円で取引されたと聞いたのです。

その後も米国の不動産価格は経済成長や株価と共に上昇を続けており、史上最高値を更新しています。直近のマンハッタンの分譲マンションの平均取引価格は190万ドルと言います。私が住んでいたアパートは、マンハッタンでもそれなりに広く、ロケーションも良い為、値段は最近の平均取引価格よりもっと高いはずですが、もはや、その値段には興味はありません。間違いなく、でてくるのは後悔だけですから。
私の投資話で最も後悔している話でした。