>> >>特別インタビュー【2】プラグ・パワー(PLUG)の差別化戦略、高まるESG意識は追い風に

プラグ・パワーの競合状況は?

岡元:プラグ・パワー社の競合状況についてお聞かせください。競合他社のトップ3はどこの企業でしょうか。

フリードランダー氏:バラード・パワー・システムズ社(BLDP)の燃料電池スタックは、非常に優れており、私たちも実際に購入していました。

私たちが独自に設計して製造する以前から、シーメンス社のような電解槽のプレーヤーがいることを知っていました。パワーシェル社のような他の燃料電池事業者もあります。一方で様々な水素アプリケーションのセグメントを考えてみると、弊社はマトリックスですべてのセグメントに関われる存在として、まさに中心にいます。道路輸送能力、オンロードモビリティ、マテハン、液体水素の製造など、100%再生可能な方法でビジネスを展開していくことを目指しています。

電解槽を見てみましょう。今、私たちのグローバルでの実績を見ると、これらすべての項目に触れながら発言できる企業は他にありません。私たちはこれらのビジネスをグローバル規模で展開しており、素早く行動する能力があります。そして、私たちには強固なバランスシートによるリソースがあります。約50億ドルの現金および現金同等の資金を保有しているので機動性が高く、新たな市場にも積極的に参入できます。

2050年には10兆ドル規模の水素経済が到来すると言われている中で、私たちは市場シェア拡大に向けて積極的な水素製造戦略に着手しました。

ワラント契約はサプライヤー・顧客の双方にとって有益

岡元:グロス・セールスではなく、グロス・ビリングを重視しているのはなぜですか。

フリードランダー氏:遠くない将来、私たちはグロス・ビリングの使用から脱却していくでしょう。

マテハン事業を始めた時、私たちは急成長すると考えていました。2014年のウォルマート(WMT)との契約は、大きな成功でした。2017年にアマゾン(AMZN)と契約した時、アマゾンは必ずしもボリューム拡大でASP(売却単価)を下げることを望んでいませんでした。彼らは成長を望んでおり、サプライヤーである弊社と利害を一致させたいと考えていました。そこで、彼らは弊社のワラントを獲得する収益取引システムを構築しました。そのシステムでは収入が一定のマイルストーンに達すると条件が満たされます。

私たちはウォルマートともアマゾンと同様の契約形態にすることに同意しました。そして、彼らが成長を続け、共にビジネスをしていくことで、ワラントが発行されます。それは補償金のように、貸借対照表上の非現金支出となります。

ウォルマートやアマゾンは私たちへの支払額が増えれば増えるほど彼らのビジネスと収益は拡大します。これらの非現金費用を与える数式は、ブラック・ショールズ・モデルとも言えるでしょう。株価は変動しますので、株価が高くなればなるほど、また収益ベースでビジネスが伸びるほど、その費用は高くなります。グロス・ビリングは、基本的には現金支出を伴わないワラント費用を引く前の総収入の数字です。

2021年から2022年にかけて、アマゾンでは弊社の製品を導入する拠点が30以上追加され、導入拠点数はほぼ倍増します。そのようなことからも、12~18ヶ月以内に最後のマイルストーンに到達すると思われます。そして、彼らは私たちと共に収益を上げることが増え、売上総利益とワラント費用を差し引いた後のスプレッドは拡大の一途をたどっていました。そこで私たちは、2020年末に残っていたアマゾンのワラントを加速させるという戦略的な決断を下しました。その結果、非常に大きな非現金支出が発生しました。

しかし、今後は、ウォルマートの非現金ワラントチャージ費用のみが発生します。そのワラントチャージ費用は四半期で150万ドルから200万ドル、年間ベースで約800万ドルです。

岡元:ワラントを行使して株式に変えた時、彼らのポジションはどのくらいの大きさになるのでしょうか。彼らは重要な株主になるのでしょうか。

フリードランダー氏:理論的にその可能性はあります。アマゾンが獲得したワラントの残額は5,500万以上になり、2027年に期限が切れます。ですので、もしアマゾンがワラントを全部行使したら、9~10%の保有株主になります。ウォルマートも同様です。しかし、彼らが戦略的に行使して大株主になるかどうかはわかりません。弊社の株価が再び上昇を続ける中、アマゾンは取引先の複数の企業とこのようなワラント契約を結んでいます。では、彼らはこのワラントを保有し、その後行使してその株式を保有するのでしょうか。答えはアマゾンやウォルマートに聞いた方がいいかもしれません。

しかし、このようなワラント契約は、私たちと顧客の利害が一致しており、双方にとって有益なものとなっています。

プラグ・パワーの財務状況、収益黒字化への見通しは?

岡元:御社の財務状況について教えてください。

フリードランダー氏:現状、財務上の問題はありません。弊社の監査役であるKPMGの助言のもと、10K(年次の業績報告書)を修正しました。

私たちはセール&リースバックという仕組みで契約を行なっています。マテハンのビジネスは車を購入するようなものです。車を直接購入するか、ファイナンスを利用するか、リースを利用するかのいずれかです。マテハンのクライアントは同じ方法で支払いを行います。6割ほどは直接購入、残りの4割は機器をリースするという方法で、銀行が間に入ります。

会計規則が制定された2018年にリース会計を貸借対照表に記載することになりました。これは当時のKPMGのアドバイスのもとに行い、それに合わせてモデル化しました。2021年に販売台数が増える中で再確認したときに、セール&リースバックの仕組みを見てシミュレーションを行い、貸借対照表の数字に違いが出てくるか検討しました。そして、そのうちのいくつかは異なるものにすべきだと判断しました。GenDriveを買い戻した時の残価などを考慮して修正を行いました。今後もKPMGの意見やアドバイスを受けながら業績発表を行なっていきます。

岡元:GenDriveユニット1台の販売価格はいくらですか。

フリードランダー氏:GenDriveは3種類のクラスがあり、価格にも幅があります。それに保証代金が上乗せされます。平均的な全部込みの販売価格帯は約15,000~20,000ドルです。すべて保証付きです。

岡元:1年前はどれくらいでしたか。

フリードランダー氏:20,000ドル~25,000ドルの間だと思います。導入済みの輸送用車両を倍に増やし続けることで、コストカーブを劇的に下げています。

岡元:同様に、生産性も向上されているのですね。

フリードランダー氏:はい。生産性の向上によっても、コストカーブが下がってきました。 そのため、現実には収益計画に一部ASP(単価)の減価があります。しかし、契約を更新し、各サイトで5~6年ごとにGenDriveを交換していても影響は見られませんでした。非常に似たようなASPで契約していますので。

岡元:では、最後の質問です。2024年までに収益黒字化できる見通しはありますか。

フリードランダー氏:2024年ではなく、2022年末までには黒字化できると考えています。 

市場が拡大する中で、今年は特に多額の設備投資を行っています。これから参入するすべての市場で、大きなマーケットシェアを獲得したいと考えています。今後も、巨大市場において確固たるマーケットシェアを築けるよう、積極的に取り組んでいきます。そして、2022年末には収益が黒字化すると期待しています。

岡元:ロベルトさん、本日はインタビューに応じていただきありがとうございました。

フリードランダー氏:こちらこそ、ありがとうございました。

岡元:今年も御社にとって素晴らしい1年になりますように。

本インタビューは2021年6月24日に実施しました。