早いもので、2021年も半年が過ぎてしまいました。

2021年前半はインフレ懸念による金利上昇や、政策金利の引き上げが懸念材料となり、調整する局面もあった米国株市場ですが、S&P500の年初から6月末までの半年間のリターンは14.41%となりました。ナスダック総合指数は中長期債券の上昇を受けて、2月末から3月にかけて途中調整する局面もありましたが、最終的に12.54%上昇となっています。加えて米ドル高であったことも手伝って、円ベースでのS&P500のリターンは23.3%、ナスダック総合は21.2%と、リスクを取る価値のあるリターンになりました。

S&P500の15.21%上昇に対し、平均16.15%上昇!

1月4日付のコラムで2021年の米国株参考銘柄リストを公開しました。図表1はそのリストの2021年前半のパフォーマンスをまとめたものです。株式には配当金が支払われますので、配当金の再投資を含むトータルリターンで評価をしてみたいと思います。

【図表1】2021年米国株参考銘柄リストのパフォーマンス
(リターンは、配当金の再投資を含むトータルリターン 2020年12月31日~2021年6月30日まで)
出所:筆者作成

全体の結果ですが、2021年半年間のS&P500の配当の再投資を含むトータルリターンは15.2%でしたが、私の参考リストの銘柄全体のポートフォリオの平均トータルリターンは16.15%とベンチマークを1%アウトパフォームする(上回る)ことができました。

このパフォーマンスをテーマごとに分けていきますと、長期成長銘柄が14.2%、経済回復銘柄が21.8%、バイデン関連銘柄が10.5%、高配当銘柄が17.9%とそれぞれ上昇しました。 

【図表2】2021年 テーマ別参考銘柄のパフォーマンス  
出所:筆者作成

長期成長銘柄とは、私が長期に渡って成長が継続すると考えている、いわゆるグロース(成長)銘柄が多く含まれています。長期とは、5年以上の投資期間を考えています。2020年大きく上昇したグロース銘柄は、先述の通り2021年前半に大きく調整する局面がありましたが、その後回復し、S&P500のリターンに近づいてきました。最終的にはS&P500のリターンが15.2%に対し、長期成長銘柄は14.2%の上昇とS&P500をアンダーパフォーム(下回る)していますが、S&P500グロース指数のリターンが13.2%であったことを考えると、決して悪くないリターンではないかと思います。

2021年前半、パフォーマンスが冴えなかった銘柄の見通しは?

個別銘柄を見てみますと、足を引っ張っているのは2021年前半パフォーマンスが冴えなかったGAFAMの中のアップル(AAPL)とアマゾン(AMZN)です。業績は伸びているにも関わらず、株価が上がっていませんので株価の割高感がなくなっています。2020年に大きく上昇したテスラ(TSLA)も2021年前半のパフォーマンスは冴えませんでした。2020年の同社株は年前半より後半に大きく上昇しました。7月後半には同社の自動運転の技術について披露する「AIデー」の開催が予定されています。この内容が好感され株価も動き始めるのではないかと思っています。

このリストの中で最も大きく株価が下がっているのが、「アフリカのアマゾン」とも呼ばれるジュミア・テクノロジーズ(JMIA)です。アフリカ経済の長期的な成長、ミドルクラスの増加、インターネットとオンラインショッピングの普及等、長期的な成長ストーリーの恩恵を受けて今後成長していくでしょうから、私はアマゾンの20年前に投資をするようなものだと考えています。長期的には魅力的と考えていますがボラティリティの高い銘柄ですので、株価が下がった時に皆さんのポートフォリオの一部としてそっと買っておかれると良いと思います。(ジュミア・テクノロジーズについては、こちらの記事もご覧ください。)
 
平均21.8%上昇した経済関連銘柄については、まさに米国経済が回復する過程において素直に上昇し、S&P500のリターンをアウトパフォームした銘柄がほとんどでした。唯一株価が下がった銘柄であるブッキング・ホールディングス(BKNG)は、Booking.comやアゴダなどのブランドで知られるオンライン旅行会社です。読者の皆さんの中には、これらのサービスを使ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。株価が上がっていないのは、同社の売上の9割は米国外ということもあり、2021年前半は米国外の経済に足を引っ張られたのが理由です。今後世界経済が回復する局面で同社の業績は恩恵を受けるでしょう。

バイデン関連銘柄とは、バイデン米大統領の経済対策の恩恵を受けるだろうと思われる銘柄です。そのリターンは10.5%の上昇ですが、S&P500の15.2%の上昇を4.7%下回っています。その理由は、ここで上げた銘柄が4銘柄と集中したポートフォリオで銘柄の分散が行われておらず、その中の2銘柄が下がったことが挙げられます。この下がった2銘柄はクリーンエネルギー銘柄で、他の成長銘柄と同様、2020年に上昇し過ぎたこともあり、2021年前半の株価は調整しました。

クリーンエネルギーは息の長いテーマであり、現在の下げは買いの機会と考えています。このうちプラグ・パワー(PLUG)については、同社のIR(インベスターズ・リレーションズ)担当のロバート・フリードランダーさんに行ったインタビューを、本コラムで随時掲載予定ですので、ぜひご参考になさってください。同社はアマゾンやウォルマートなどを主要顧客に持っており、長期的に非常に有望な銘柄だと考えています。

高配当銘柄は堅調なパフォーマンス

2021年バリュー銘柄が上昇する中、高配当銘柄も堅調でした。S&P500の15.2%の上げに対して、このポートフォリオは17.9%の上げと2.7%のアウトパフォームです。特にシェブロン(CHV)については原油価格の上昇の恩恵を受けて堅調なパフォーマンスとなっています。

一方、AT&T(T)については、シナジーを生み出せなかったワーナーメディア部門をメディア企業のディスカバリーと合併し、スピンオフすると発表したことが嫌気され株価が下落しました。今後同社のスピンオフ後の配当政策がどうなるかを精査してみたいと思います。