代表的な新興国通貨・南アフリカランド

代表的な新興国通貨の1つである南アフリカランド/円の上昇が続き、8円の大台突破含みの動きとなってきた。ところでこれにより、足元で7.6円程度の5年MA(移動平均線)を大きく上回る動きとなってきた(図表1参照)。

【図表1】南アフリカランド/円と5年MA (2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

少なくとも、「リーマン・ショック」が起こった2008年以降、南アランド/円にとって5年MAは上限となってきた。その中で、最も5年MAを上回ったのは2018年1月で、月末終値で5年MAを2%上回ったというもの(図表2参照)。ちなみに、今月末の終値で7.8円以上となると、2018年1月の記録を上回る計算になる。

【図表2】南アフリカランド/円の5年MAからのかい離率 (2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

そんな南アランド/円は、上述の「リーマン・ショック」が起こる前、たとえば2006年にかけては5年MAを2割以上と大きく上回ったこともあった。では、今回も南アランド/円は、5年MAを一段と大きく上回る動きに向かうだろうか。

ただ、「リーマン・ショック」前のこの南アランドなど新興国通貨の対円での大幅な上昇は、ある意味では「異例な結果」だった可能性もあるのではないか。上述のように、南アランド/円は、2006年にかけて5年MAを2割以上上回ったが、もう1つ代表的な新興国通貨とされるトルコリラ/円も、2007年にかけて5年MAを2割以上上回っていた(図表3参照)。

【図表3】トルコリラ/円の5年MAからのかい離率 (2005年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

「リーマン・ショック」前の状況は、今では「信用バブル」局面と位置付けられている。要するに、行き過ぎたリスク・テーク局面だった。それに加えて、当時流行したのが「ミセス・ワタナベ」という言葉。つまり、日本では主婦もFX投資で大儲けするケースが増えているといった意味だった。

以上のように見ると、2006~2007年にかけての南アランド/円など新興国通貨/円の上昇は、世界的な信用バブルと、日本のFX投資熱などが重なった結果の行き過ぎた相場だった可能性があるのではないか。

そして、南アランドにとって、「第3の行き過ぎ」とも言えそうだったのが金相場の上昇ではないか。南アフリカは、世界有数の金産出国としても知られるため、金相場との相関性もある。そんな金相場は、2008年にかけて最高値更新が続いた(図表4参照)。

【図表4】金相場の推移 (2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

世界的な信用バブル、そして日本のFXブーム、さらに金相場の最高値更新。これらは、いかにも新興国通貨の南アランド/円の上昇を後押ししそうだ。こんなふうに上昇要因が集中する中で、5年MAを大きく上回るまで上昇した南アランド/円だった。

ただ、そんな南アランド/円は、金相場の頭打ちや「リーマン・ショック」が起こった2008年よりかなり早い2006年に上昇一巡、下落への転換となった。以上のように見ると、金相場の上昇や、世界的な株高とは別に、5年MAを上回ってきた南アランド/円は、上がり過ぎの限界を極め、下落に転換するリスクにも要注意ではないか。