5月に入ってからもS&P500種株価指数とダウ工業株が史上最高値を更新するなど、強気相場が続いている米国株式市場。そのなかで、米国株投資への関心が高まっています。そこで今回、以前のインタビューで「投資にもチャレンジしてみたい」と語った人気モデルのカロリーナさんに投資未経験者の代表として、マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタントの岡元兵八郎と米国株の強みや長期的な見通しについて対談していただきました。
今、なぜ米国株が注目されているのか
カロリーナ:岡元さん、米国株投資が人気ですね。本屋さんに行っても米国株投資についての本が並んでいます。
岡元:そうですね。個人投資家の米国株に対する興味の表れですね。私も投資やビジネス系雑誌から米国株に関する執筆依頼が増えています。米国株に興味を持っている人たちが増えていると思います。
カロリーナ:なぜこれほど、米国株が注目されているのでしょうか。
岡元:私は米国株が上がり続けていることが大きな理由だと考えています。朝のニュースで「昨日のNYダウは…」と報道されるダウ工業株指数や、米国を代表する500社で構成されるS&P500株価指数が今月(5月)7日には史上最高値を更新していますし。
カロリーナ:日本では今年(2021年)2月に日経平均が3万円を超えたことがニュースになっていましたね。
岡元:はい。日経平均が2021年の2月よりも前に3万円を超えていたのは、バブル景気の絶頂期だった1990年のことで、今から31年前のことです。31年もの年月を経てやっと日経平均が3万円台に回復した、というのが日本の株式市場の状況なのです。一方で31年前のS&P500は330ポイントですが、それが今は4,000ポイントを超えている(2021年5月20日時点)ので、当時から米国株は12倍に上がっているのです。
米国株(アメリカ株)は今後も期待できるのか
カロリーナ:そんな事情もあって米国株に興味を持ち始めた人も多いのですね。「これから投資をしようかな」と考えている人たちにとっては、今後どうなるかが気になりますよね。この先も米国株は、上昇を期待できるのでしょうか。
岡元:はい、私はこれからも米国株は上がっていくと思っています。その理由の1つですが、アメリカでは今後も長期にわたって人口が増えると見られています。米国は移民の国です。世界中から人々が集まります。実際グローバルで、誰もが知っている米国企業のトップは移民や移民の子孫であることが少なくありません。テスラのイーロン・マスクは南アフリカ出身ですし、アマゾンのジェフ・ベゾスの父親はキューバからの移民です。バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットの後継者とされているグレッグ・エイベルはカナダ人です。
自由の国アメリカに住みたいという人もいれば、アメリカで勉強したいという人たちもいます。世界のトップ20の大学の14校がアメリカにあると言われています。世界中からベスト・アンド・ブライテスト、つまり選び抜かれた優秀な人材が集まる仕組みになっています。卒業した後、勿論本国へ戻る学生もいるのでしょうが、そのままアメリカで働きたいと思う学生も少なくありません。そういった優秀な学生の受け皿として、例えばシリコンバレーのグローバル企業があります。それぞれ違う国々から集まった若者たちは組織のダイバーシティという側面で、企業を強くします。
ダイバーシティを持った企業は、イノベーションを生み出しやすくなります。また、トライアル・アンド・エラー(試行錯誤)でまずやってみて、上手くいかなければ修正しながら進むという考え方もアメリカの良さであり、日本ではなかなかない発想です。こういったところからもアメリカは違っています。
日米における経済規模や研究開発費の差が将来の株価にも影響を
カロリーナ:なるほど。人口が増えるだけでなく、発想、考え方も違うということですね。他に日本とアメリカで大きな違いはありますか?
岡元:日米の経済規模の差は約3.7倍、アメリカの約19兆ドルに対して、日本は約5兆ドルです。この差が、今後時間とともに拡大していくという見通しになっています。
現在、日米の経済規模は現在の3.7倍から、2030年には約4倍に、2050年は4.6倍になると見られています。これは私が言っているのではなく、国際機関による予想です。もちろん20年後に日米の差が4倍になっているのか、4.5倍になっているかは、その時になってみないと誰にも分かりません。ですが、はっきりしているのはそのトレンドです。
経済規模が大きいという事は、消費市場も大きく、企業にとって売上を増やし、収益を上げる機会が多いということです。そんな市場には良いサービスや新しい技術なども集まりやすいでしょう。つまり、企業も成長しやすいのではないかと思います。
また、将来に対する投資である研究開発費(R&D)についても、米国企業は日本企業と比べて大金を使って投資を行っています。例えば米国で最も研究開発費を使っているのはアマゾンで、年間5兆円ほど。一方、日本で最も研究開発にお金を使っているのはトヨタですが、年間約1.1兆円です。
カロリーナ:金額の違いって会社の規模によるのでしょうか?
岡元:もちろん、会社の規模が違うのは間違いありません。ですが、アマゾンの売上高に占める研究開発費の割合は11.5%であり、トヨタの場合は3.3%です。そのため、売上に占める割合で見ても、その差は大きいです。このような投資は今年の売上に寄与するのではなく、これから先により良いサービスや製品を作り出し、売上や収益を増やすことを示唆するので、株価を押し上げることになるのです。
サザエさんを観ればわかる!?
岡元:日本における米国企業の浸透を象徴することだと思っているのが、日曜日の夕方のテレビ番組です。サザエさんのコマーシャルって、ずっと昔から東芝という日本を代表する企業のコマーシャルが流れていました。それが、会社の不祥事でスポンサーが変わり、複数の会社がスポンサーになったのです。カロリーナさんがお気づきか分かりませんが、今サザエさんのスポンサーのうちの1社はアマゾンです。日本を代表するお茶の間テレビ番組のスポンサーに米国企業がなったのです。
ただ、私たちがアマゾンのサービスを当たり前に使うようになったことを考えると、決して不思議なことではありません。それだけアマゾンが私たちの生活の一部に欠かせないものになってきているからです。
カロリーナ:私も5歳から日本に住んでいるのでサザエさんはよく観ていましたが、米国企業がスポンサーになっているとは気づいていませんでした。
岡元:その他にもいくつも象徴する例があります。カロリーナさん、カフェはお好きですか。
カロリーナ:はい、よくスターバックス等に行きます。
岡元:マネックス証券のある赤坂のビルの1階にもスターバックスの店舗がありますが、朝も昼も私が見る時はいつも注文を待つお客さんの行列が絶えません。正直、私は並んでまで買いたいとは思わないのですが、多くの人が並ぶのですよね。
カロリーナさんはどこのメーカーのスマホを持っていますか。
カロリーナ:iPhoneです。
岡元:やっぱりそうですか。こうやって私たちが日々、何を使っているか、どのようなサービスのお世話になっているかを調べてみると、結構米国企業が日常生活に馴染んでいるのです。
カロリーナ:確かにそうですね。最近もコロナ禍で外出自粛などに伴いネットフリックスやウーバーイーツなどを使う人が増えているように感じますが、これらも米国企業ですね。
岡元:このようなことは決して日本に限った話ではないのです。私たちが良いと思うのであれば、世界中の多くの人たちも同じように思っており、米国企業のサービスや製品を使いたいのです。言い換えると、米国企業の製品やサービスって世界中で使われている、売れている、だから株価も上がってきているのです。
カロリーナ:岡元さんが仰るように、私も米国企業への期待感が湧いてきました。
米国株の長期見通し、2030年にS&P500指数は約7,000ポイントに到達か
岡元:2021年4月末のS&P500指数は4,181ポイントでしたが、私は2030年には約7,000ポイントに達すると考えています。
カロリーナ:え、そんなに!?その理由は何でしょうか。
岡元:米国株のこれまでの上昇率を考えると、この予想は決してそれほど大胆な予想ではないのです。S&P500指数は過去10年間年間平均12%上昇してきました。2030年に7,000ポイントに達するには年間6%上昇すれば良いのです。ですから、これはどちらかと言うと控えめな予想なのです。
もちろんアメリカでも毎年株価が上がるというわけではありません。景気後退が起きたり、何らかの予想外の出来事が起きて株価を一時的に下げるようなこともあると思います。そのような調整の局面があるとすれば、米国株の将来を信じる投資家にしてみれば最高の追加投資の機会になると思います。今までがそうだったように。
カロリーナ:そうなんですね。今日はとても分かりやすく教えていただき、ありがとうございました。
岡元:こちらこそ、ありがとうございました。