年金収入は老後の生活の柱ではありますが、ご自分の受け取る年金だけで暮らしていくのに十分だと考える方は少数派でしょう。ならば、どのようにして可処分所得を増やすかと言えば、(1)家計を見直す、(2)働いて収入を得る、(3)お金に働いてもらう(運用して収益を得る)、という3つの方法が考えられます。しかし、(1)には限度がありますし、(2)もコロナ禍の今は選択肢が限定され、ご自分の希望にマッチした仕事を探すのが難しいかもしれません。

そこで浮上するのが(3)の「お金の運用」です。しかし、「お金の運用」というと、デイトレーダーのように時機を捉えて積極的に売買を行うイメージが強く、中には「自分にそこまでの金融知識や気力はない」と尻込みしてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回言及したいのが「インカムゲイン投資」、高配当株を長期間に渡って保有し、配当収入を得ていく方法です。

超低金利時代に配当利回り6~7%の企業も

配当とは、企業が利益の一部を株主に分配することで、年1回の本決算時、あるいは中間決算も入れて年2回支払うという企業が多いようです。義務ではないので配当のない企業もありますし、業績不振の年は配当が出ないこともあります。

購入時の株価に対して、年間でどれだけの配当をもらえるかを示す数値を「配当利回り」と言います。東証1部で配当を実施している企業の平均配当利回りは2020年3月時点で2.41%、メガバンクの定期預金の金利0.002%(2020年10月現在)と比べると実に1,200倍という「高利回り」です。

配当利回りランキングの上位に来る企業の中には、6~7%とバブル時代の定期預金や定額貯金の金利を彷彿させるところもあります。しかし、預貯金と大きく異なるのは、運用対象の株式自体が値動きすることです。上がってくれる分にはいいのですが、コロナショックのようなことが起こると、大きく値下がりしてしまう場合もあります。一方で、株主を集めたいが故に無理して高い配当を維持している企業もないとは言い切れません。

インカムゲイン投資を行う際には、シンプルに配当利回りだけを見るのではなく、プロが分析した企業とその業界の現状や、今後の業績予想などを確認しておく必要があります。同時に、今回のコロナショック時に投資したい企業の株価がどう動いたかを調べておけば、今後の備えにもなります。下落相場でも下がりにくい株式なら、いざという時にも心を乱されずに済みそうです。

インカムゲイン投資でも銘柄分散、時間分散が重要

インカムゲイン投資でも、1つの企業に大金を投じるのではなく、何社かに分けて「分散投資」することが大切です。なるべく株価が安い(=配当利回りが高い)状態で仕込みたいところですが、今は株価が比較的高い水準で推移しています。押し目で買うにも、購入時期を数回に分けるといいかもしれません。配当をもらえる時期が異なる銘柄を選べば、配当を「上乗せ年金」として活用することも可能です。

新型コロナウイルス対策で各国の政府がどんどんお金を投入していることから、近い将来のインフレリスクが指摘されています。物価が上がれば企業業績が良くなり給料やボーナスもアップしますから、現役サラリーマンにとっては悪くないことかもしれません。

しかし、リタイア世代にとっては「受難」以外の何物でもありません。公的年金はマクロ経済スライドの導入でインフレへの対応が鈍くなっていますし、資産のほうも現預金や保険だけでは貨幣価値を維持できないリスクがあります。資産の一部を株式(高配当株)に変えて持っておくことで、インフレになっても他の資産のマイナス分をある程度カバーできる公算が大きいのです。

配当は受け取る際に20.315%(所得税+復興特別所得税15.315%、住民税5%)を徴収され、それで課税関係が終了します(原則、申告は不要)。しかし、一般的な年金受給者であれば配当所得を総合課税方式で申告したほうが、納め過ぎた税金が戻ってきてお得になる可能性が高いと考えられます。したがって、インカムゲイン投資は「節税」にもつながるでしょう。