「FIRE」という言葉がバズワードになっていると知りました。たまたま仕事で一緒になった人に聞いても「FIREって缶コーヒーのブランド名?」といったトンチンカンな回答。私も「FIRE」と聞くと有刺鉄線プロレスの大仁田厚さんのイメージしかありません。

FIRE(経済的自立、早期リタイア)を目指すのが世界的なブーム

最近良く聞く「FIRE」とは、そんな「FIRE」とはまったく異なり、Financial Independence, Retire Early(経済的自立、早期リタイア)の略です。

つまり、仕事をしなくても良いくらいの経済力を付けることによって、定年退職するまで働くことなく、若いうちに仕事をしなくて良い状態を実現するということです。

若者の間で「FIRE」を目指せ、というのが世界的なブームになっているようです。

経済的自立は不労所得の仕組みで手に入れる

経済的自立というのは、老若男女問わず誰にとっても大切なことです。将来のお金の不安を解消できれば、人生の選択肢が大きく広がるからです。

経済的自立を実現するために誰でもできるのは、言うまでもなく資産運用を始めることです。ここ数年は、起業や株式、暗号資産への集中投資によって、経済的自立を実現する人もいますが、これは例外と考えた方が良いでしょう。成功者の裏に、その何倍もの失敗者がいる確率の低い方法だからです。

オーソドックスな資産運用の基本は分散投資です。リスクの異なる資産を組み合わせることによって、リターンを狙っていきます。

金融資産を使った資産運用は、投資信託(インデックスファンド)が基本です。NISAやiDeCoのような税制優遇の仕組みを活用しながら、資産を積立等で増やしていきます。

最終的に、経済的自立を実現するためには、安定したキャッシュフローが必要です。定期的に安定した収入が得られる不労所得の仕組みを作ってしまえば、経済的自立を実現できるのです。

これは、株式のようなキャピタルゲインによる収益だけではなく、不動産のようなインカムゲインからの収益も組み合わせる必要があります。

早期リタイアが幸せとは限らない

一方の早期リタイアに関しては、私は実現したからと言って必ずしも幸せになるとは限らないと思っています。なぜなら、仕事によって社会との接点を得る事の価値は、人生において極めて重要で、仕事を辞めれば、その接点が無くなってしまうからです。

仕事をしなくてもお金の不安がないという状態がもし実現できたとしても、全く仕事を辞めてしまう事は、むしろ人生をつまらなくしてしまう可能性があるのです。

だから、早期リタイアするのではなく、自分の好きな仕事だけを自由に選び、続けていくことを目指すべきです。

そして、定年を決めるのではなく、自分がやりたいと思い続ける限りは、年齢に関係なく仕事を続ける。仕事を通じて、社会貢献や、自己承認欲求といったものが満たされることによって、人生はより充実したものとなるのです。

ライフワークで社会とのつながりを

仕事には2つの種類があると思っています。お金を稼ぐためにやる仕事と自分の人生の夢を実現するためにやる仕事です。前者は「ライスワーク」、後者は「ライフワーク」と呼ばれています。

ライス(お米=食べるもの)のためにやる仕事は、できればやらなくても良いようにしたいものです。一方、ライフワークは嫌々やるものではなく、むしろ積極的に関わることで、自分の人生を豊かにしてくれます。

早期リタイアを目指すのではなく、ライフワークを見つけ、ライスワークからの脱却を実現することこそが、目指すべき方向と言えるのではないでしょうか。

ということで「FIRE」に関しては、前半のファイナンシャルインディペンデンス(FI=経済的自立)には賛成ですが、後半の早期リタイヤ(RE)に関しては、賛成できない。これが私の「FIRE」に対する考え方です。