>> >>特別インタビュー【2】巨大市場アフリカに潜むビジネスの課題とソリューション

岡元:アフリカでデジタル決済とフィンテックを開発することがジュミアにとって重要な優先事項だと思います。ジュミア・ペイの現状についてお伺いできますか。今後どのようにジュミア・ペイを収益化する予定でしょうか。

サファエ:当初は自社のニーズを満たし、プラットフォーム上のシームレスなチェックアウト体験を顧客に提供するために、ジュミア・ペイを立ち上げました。

世界中のマーケットプレイス(市場)プレーヤーはデジタル決済サービスを構築しています。例えば、イーベイは ペイパルを取り込み、イーベイ上でデジタル決済サービスを提供しています。同様に南米ではメルカドリブレはメルカド・パゴを通じて支払いシステムを構築しました。中国では、アリババがアリペイを運営するアント・フィナンシャルをグループ傘下に持っています。これら企業の展開が エコシステム内の支払いとフィンテックを開発するための青写真となっています。

ジュミア・ペイの3つの側面

サファエ:現在のジュミア・ペイの支払い方法は、ペイパル口座のようなもので、消費者が選択する支払い方法と連携することができます。ジュミア・ペイ口座をデビットカード、銀行口座、クレジット カード、モバイルマネーウォレットと連携することもできます。

アフリカの特定の地域、特に東アフリカでは、モバイルマネーウォレットがよく使われています。また、キャッシューウォレットサービス(財布サービスに現金)のような他のタイプのサービスと連携する可能性もあります。

私たちは、消費者が使用したい支払い方法となるようジュミア・ペイを構築し、チェックアウトする際のシームレスな体験を提供しています。

ジュミア・ペイの2つ目の側面は、アプリです。これは様々なデジタルサービスを提供するアプリです。このアプリでは、ビデオチャットや公共料金の支払い、小口融資や貯蓄商品、保険などの金融サービスも提供しています。

最近はジュミアゲームも立ち上げました。これを通じて、ユーザーにオンライン取引に慣れもらうことができます。ユーザーの獲得とエンゲージメントの面でも優れています。これは毎日利用するサービスであり、ユーザーがより自然にプラットフォームに戻ってくるためです。

ジュミア・ペイの3つ目の側面は、金融サービスのマーケットプレイス(市場)です。特に、アフリカの中小企業は、金融機関が信用スコアをつけるためのデータが不足しており、金融機関が十分に支援できていません。

その中で、私たちはプラットフォームを通じて企業のビジネスに関する多くのデータを収集していますので、彼らが製造している数量、販売量、在庫、キャッシュ・サイクル (現金化されるまでの期間)等の貴重な情報を持っています。

それらは信用スコアリングの観点からも非常に有用な情報であり、売り手の同意を得た上で、私たちはこのデータを第三者の金融機関と共有し、金融機関は短期ローン、運転資本ローンなどを提供しています。私たちは金融サービス・マーケットプレイス(市場)として、手数料を得ています。

ここまでお話したように、ジュミア・ペイ の3つの側面は「支払いチェックアウトソリューション」、「アプリ」、「金融サービス」です。

「現金は王様」のアフリカでデジタル決済を普及するには?

サファエ:先ほど述べた通り、プラットフォーム上の取引の35%がジュミア ・ペイを使用しています。しかし、まだアフリカでは「現金は王様」であり、配達時に現金で支払えることが消費者にとっては重要です。ですので、ジュミア・ペイの普及は規律を持って、ゆっくりと時間をかけて行う必要があると考えています。

初めてオンラインショッピングを行う消費者に対して、支払い方法と支払いの詳細をオンライン上で入力するよう求めると、2つの心理的障壁になってしまいます。ですので、まずはオンラインショッピングをしていただくことを優先しています。

ジュミア・ペイが稼働しているのは8ヶ国で、ビジネスを展開しているのは11ヶ国です。ナイジェリアとエジプトではジュミア・ペイの普及率が進んでいます。35% の普及率というのは国によって、ばらつきがあります。

岡元:マスターカードとのパートナーシップはビジネス拡大にあたって、どのように役立ちますか。

サファエ:私たちはマスターカードと戦略的パートナーシップを結んでおり、2年前のIPOと同時に第三者割当でマスターカードは当社の株主にもなりました。

私たちは共同で消費者向け商品の開発に取り組んでいます。直近では、エジプトで現地の銀行とマスターカードと共に、提携ブランドカードとプリペイド支払いカードを立ち上げました。

私たちにはアフリカでのフィンテックの浸透を促進するための商品開発ロードマップがあります。

岡元:ジュミア・ペイは銀行サービスを置き換えるものでしょうか。

サファエ:私たちは銀行サービスを置き換えるのではなく、銀行と協業していきたいと考えています。ジュミア・ペイはデビットカードやクレジットカードを銀行口座と連携できますが、消費者は必ずしもジュミア・ペイを使用するために銀行を使う必要はありません。ご自身が信用するデジタル決済方法、例えばモバイルマネーウォレットでも良いのです。

私たちがクレジットや金融商品で銀行と提携しているとの同様に、金融サービスの提供においても銀行と協業していきたいと考えています。

ジュミアの財務戦略を支える4つの柱

岡元:2020年、ジュミアは収益性とユニットエコノミクスに重点を置いていましたね。財務戦略や、成長と収益性のバランスについて詳しく教えてください。

サファエ:2年前に上場して以来、ジュミアの財務戦略は一貫しており、4つの重要な柱のバランスに重点を置いてきました。

第1の柱は、収益拡大。第2の柱はジュミア・ペイの進展です。第3、4の柱はプラットフォームの段階的な収益化を推進し、コスト効率を生み出すことです。この4つの柱をダイナミックに管理し、進捗に応じて各柱に適宜重点を置いています。

本日の対談の冒頭でも話に出ましたが、アフリカには常に多くの関心と好奇心が寄せられており、その可能性が認識されています。そして、ジュミアがアフリカのeコマースの機会に対処するために非常に強固なプラットフォームを構築していることも認識されています。

しかしながら、「アフリカで収益を出しながらeコマース事業を運営できるのか。ジュミアは理にかなったユニットエコノミクスを持っていますか」とよく質問されます。

2020年は、ビジネスの基盤を強化することに重点を置きました。私たちは、ビジネスの長期的な成長をサポートしながらも、黒字化に向けた道筋を示せたと自負しています。

この戦略結果を見てみると、損失額を大幅に減らすことができました。損失削減の進捗状況を判断する上で最も参考になるのは、調整後EBITDA(税前利益)損失額です。

ジュミアは2020年通年の調整後EBITDA損失額を前年比で35%近く減らし、プラットフォームの黒字化に向けて進展しました。フルフィルメント費用を除いた粗利益では、2019年に約150万ユーロの損失を出していました。それが、2020年には約2,400万ユーロの利益を生み出しました。これはフルフィルメント費用を除いた粗利益であり、並行してすべての構成要素の削減作業を行うことができました。

フルフィルメント費用は前年比10%減少、マーケティング・広告費は40%以上減少、販管費も12%以上減少しました。第4四半期のみでは、株式ベースの報酬を除く販管費が35%以上減少したので、黒字化に向かって非常に有意義な進歩を遂げました。

このように、私たちが推進したい分野で選択的にジュミアの利用を拡大し、消費者の生涯価値を高め、魅力的なユニティを提供することで、非常に有意義な進展を遂げました。

また、コスト効率の面でも大きな進展があり、コストベースを削減することができました。このようにして、私たちのビジネスのユニットエコノミクスはより強固なものとなり、収益性の高い、効率的な コストベースを持つことができるようになりました。

>>>>特別インタビュー【4】ジュミア・テクノロジーズの収益化への道筋、金融サービスの大きな可能性

本インタビューは2021年3月25日に実施しました。