>> >>特別インタビュー【3】ジュミア・テクノロジーズのフィンテック、財務戦略
収益化への道筋、今後の目標
岡元:ジュミア・テクノロジーズ(以下、ジュミア)の収益化への道筋をどのように考えていますか。どのような段階を経て損益分岐点に達すると見込まれていますか。
サファエ:収益化への道筋を考えてみますと、2020年に実施した「2020」の進捗状況と、「2020」で実施した施策は、損益分岐点に向けて非常に強力なものだと考えています。(前回の記事で述べた)4つの柱の戦略を維持しながら、損益分岐点に向けた進捗を継続していくことに変わりません。
ここで、営業費用控除後に粗利益を計上する目標についても言及しておきましょう。これは私たちが確立した流れで、過去5四半期にわたって改善してきました。私たちは、この傾向を継続し、営業費用控除後にプラスの粗利益を生み出していきたいと考えています。
次の目標は、営業費用とマーケティング費用控除後にプラスの粗利益を生み出すことです。これが、進捗状況を示す次のマイルストーンです。既に2020年第3四半期では、これをグループとして達成しました。
私たちが進出している大半の国において損益分岐点を達成しており、配送や営業費用控除後にプラスの粗利益を示すための明確な道筋が見えています。
私たちは進歩とともに、国別やその他のケーススタディーなどを通じ、税引き前利益(EBITDA)計上に到達するための期限を設定しています。損益分岐点に到達するまでの期間は特に決めていませんが、マイルストーンと具体的な証拠を四半期ごとに示すよう重点を置いています。
調整後の税引き前損失を削減するというガイダンスを発表しましたが、当面の間、これを継続して取り組んでいきます。今は、四半期ごとの損益分岐点を達成して、調整後の税引き前損失を削減し、年間を通してそれを実現するよう注力しています。
岡元:手元流動性や資金調達の必要性については、どのようにお考えですか。
サファエ:2020年の事業進捗と、経営効率化やコスト削減により、税引き前損失を減らすことができたことで、現金に対する柔軟性をはるかに高めることができました。また、流動性を管理するための積極的なアプローチも取り、2020年12月に株式増資を完了し、約2.3億ユーロを調達しました。
2020年12月末の時点で資金調達額と手元現金の合計は3億ユーロを超えており、今日では事業の黒字化に向けて十分な資本を確保していると感じています。
岡元:したがって、今後数年間は資金調達が必要ではないと。
サファエ:はい。私たちは損益分岐点を達成するのに十分な資本を持っていると感じています。
包括的な金融サービスの大きな可能性
岡元:ジュミアの5~10年先を考えると、アフリカのGDPが世界のほとんどの国よりも成長率が高いことは非常にエキサイティングです。アフリカでは中産階級の人口も急増しています。インターネットへのアクセス増加や、手ごろな価格のスマートフォン、eコマースへの移行といった要因は、日本のような経済が成熟し、人口が減少している国々の羨望の的となっています。
しかし、将来的には困難もあると思います。ジュミアのビジネス規模は5~10年後にはどのように成長していると思われますか。
サファエ:今、私たちは確かに将来の成長機会を見据え、期待に胸躍らせています。私たちはビジネスの成長に大きな志を持っており、今はまだ、アフリカのeコマースの表面にわずかに触れただけにすぎません。その奥には中核があるのです。
eコマースの導入を促進し、プラットフォーム上でより多くのユーザーを獲得し、購入頻度を促進し、より多くの販売者を得ることよって、数十年単位で成長していくでしょう。
また、私たちはオンラインとオフラインの両方を組み合わせる新しい中国式の買い物方法も試行しています。eコマースを運営するだけでなく、新しい買い物方式を試みる価値も認識しているからです。
その他に私たちが構築したものは、単にeコマースというだけでなく、支払いと物流を兼ね備えた包括的なプラットフォームであり、エコシステムの両面でも大きな成長の可能性を見ています。
同様に支払いについて考えてみてください。ジュミア・ペイにおいては、自社のビジネスの範囲を超えた成長の可能性を持っています。私たちの戦略では将来的に、ジュミア・ペイのプラットフォームと決済サービスを提供します。このプラットフォームには2つのバージョン、第三者向けのオンライン版とオフライン版があり、金融サービス事業において大きな成長の可能性が見えています。
金融サービスに関しては、金融機関などと提携して、売り手の中小事業者が金融サービスセンターにアクセスするのを、今後も手助けしていけると考えています。
代金支払いのほかに上乗せできる機能があることをご存知でしょうか。私たちは既にマイクロローン(小口融資)を提供しています。第三者のプラットフォームを有していますが、「今買って、後で払う」というような消費者金融型のソリューションを開発することも考えられます。消費者がクレジットにアクセスするのを支援するもので、eコマースのプラットフォームと非常に相乗効果があります。
私たちのプラットフォームで始まったもう1つの側面は、広告です。広告がデジタルに移行している頃、初期のプラットフォームは広告主が消費者にリーチするための1つのツールでした。オンラインの消費者は、消費者をターゲットとする多様な方法でアクセスできますが、購入を意図していない消費者にもアクセスします。これが初期段階にある今日の私たちのプラットフォームです。しかし、ここに大きな成長の可能性を見ています。
5~10年後にビジネスの大きさや今後どうなるのか述べるのは非常に難しいと思いますが、エコシステムのすべての層にわたって大きな選択の余地があり、資本支出を増加させる必要もないと考えています。
ただ、既存の戦略を継続し、サービスの付加が求められていくでしょう。
岡元:そう確信されているのですね。
サファエ:もちろんです。間違いなくエキサイティングな道のりになると信じているからです。
岡元:最後になりますが、日本の投資家にメッセージをいただけますか。
サファエ:日本の皆様とお話しできる機会をいただき、ありがとうございました。ジュミアの事業や取組み、アフリカにおける起業家精神やデジタルトランスフォーメーションについてお話でき、嬉しく思っています。私たちのプラットフォーム上にはソニーやパナソニックなど日本のブランドの商品も多く並んでいます。
私たちは、ジュミアに興味を持っている投資家だけでなく、アフリカでビジネスを行うことに興味がある方々も歓迎します。皆様がアフリカの消費者のダイナミクスをより深く知りたい場合や、オンライン消費者にリーチしたい場合には、是非お手伝いしたいと思います。
岡元:本日はお話いただき、ありがとうございました。
サファエ:こちらこそ、ありがとうございました。
本インタビューは2021年3月25日に実施しました。