>> >>特別インタビュー【1】アフリカ大陸のeコマース最大手「ジュミア・テクノロジーズ」独自の強み

オンラインショッピングへの心理的な障壁

岡元:今日のアフリカにおけるeコマースの普及率は1%未満です。ということは、アフリカにはまだ極めて大きな潜在的なマーケットがあるわけです。カギとなる障壁は何でしょうか。また、それらの障壁にどのように対処していますか。

サファエ:障壁については、設立時から時間とともに変化してきていると思います。私たちがジュミア・テクノロジーズ(以下、ジュミア)の設立を考え始めた頃の主な障壁は物理的なインフラでしたので、まずは物流のプラットフォームを構築しました。

これらの物理的な課題に独自に適応し、現段階で主な取組みは完了しました。そして、私たちは9年間という年月をかけて、アフリカで非常に強いブランド認知度を築きました。

ブランド認知度を調査するため、私たちは頻繁に消費者アンケートを行っています。最近オンラインショッピング経験者および未経験消費者に行ったアンケート結果によると、オンラインショッパーの80%が過去12ヶ月間にジュミアで買い物しています。

オンラインで買い物をしない人々のほぼ75%がジュミアを知っています。私たちは非常に広くブランドを認知されており、オンラインで買い物したことがない人々の60%以上がジュミアで購入することを検討しています。

ジュミアを知っていているにも関わらず、購入経験がなく、購入を「検討している」と回答した方々に、「なぜ購入したことがないのですか」と伺いました。その主な回答は、「オンラインで買い物をする方法を知らないため、製品の品質もチェックできない」ということでした。

これは心理的な障壁であり、取り除くには、教育が必要です。そこで、私たちは消費者への教育など複数の戦略を検討しています。例えば私たちが「JForce(Jフォース)」と呼ぶチャンネルの活用です。独立した販売コンサルタントがタブレットを持参し、友人や家族や社会的なサークルを回り、ジュミアでオンライン購入する方法を説明します。

他にも、顧客サポートサービスへの電話問合せや、電話での注文にも対応しています。まだオンラインで購入するプロセスに慣れていない方々は、顧客サポートまたはヘルプデスクに電話することもできます。

また、SNSも活用しています。SNS上のインフルエンサーが、オンラインショッピングがどのように機能するか、どのようにジュミアのアプリを活用できるかなどを、説明してくださっています。

私たちはJフォースと消費者と共に、物理的な障壁を解消するようにしています。ジュミアのブランド力は非常に強いので、今は消費者にオンラインショッピングに慣れていただけるように取り組んでします。

eコマースにおける物流の課題、ソリューション

岡元:アフリカの物流には困難があり、一般的にeコマースの発展のための大きなハードルと見なされています。物流プラットフォームの仕組みや、これらの課題にどのように対処してきたかについて、もう少しお話しいただけますか。 

サファエ:はい。アフリカでeコマースを運営する上で重要な課題の1つは、間違いなく物流です。私たちがビジネスを立ち上げた時、フェデックスやUPSのような配送業者や確立された郵便システムの恩恵を受けていませんでした。

物流には2種類のモデルがあります。1つは、中国のJDドットコムの 資本集約的な物流モデルです。自社でバイク、トラックなどを所有しています。2つ目はアリババの物流プラットフォーム「Cainiao(菜烏網絡/ツァイニャオ)」モデルです。こちらは基本的に、第三者の物流能力を活用し、テクノロジーとシステムを通じて統合するモデルです。

私たちは、すべての地域、都市、地域における地元の第三者の物流能力を見極めていきました。第三者のパートナーとは、本質的に断片化している中小企業です。私たちは、彼らが持つ資源をジュミアのシステム内で操作することができるよう、ツールと技術を装備してもらうことにしました。

テクノロジーは、パッケージの工程を完全に制御することを可能にする要素であり、私たちの物流プラットフォームにとって非常に重要です。商品が消費者の玄関口に到達するまでの時間を管理する上でも、テクノロジーが役立ちます。

また、物流に関するすべてのワークフローを管理する上でも役立ちます。テクノロジーを活用して、必要な第三者の物流パートナーにボリュームの割り当てをします。各物流ルートのストップ数を確認するパッケージの配送作業は、消費者との通信により、配達状況がリアルタイムに更新されます。物流プラットフォームの運営において、テクノロジーは中核的な要素です。

私たちのインフラと物流プラットフォームの最後の側面は、物理的なインフラ整備です。アフリカ全土のフルフィルメントセンターと物流センターの広大なネットワークを運営しています。

アフリカ全土に30以上のフルフィルメントセンターがありますが、私たちがそれらを所有しているのではなく、リースして運営しています。

また、ドロップオフステーションのネットワークも築いています。これらは売り手が荷物を持ち込むことができる拠点であり、ドロップオフステーションはジュミアの物流における玄関口となっています。

また、アフリカ全土に1,000以上のピックアップステーションのネットワークもあります。必ずしも自宅までの配達を望んでいない消費者のために、ピックアップステーションでの受け取りを可能としています。

言うなれば、私たちの物流プラットフォームは、技術と物理的なインフラを通じて統合された第三者の物流パートナーの組み合わせです。

岡元:現在の配達のうち、どれくらいが自社で行われていますか。

サファエ:パッケージのほぼ100%は、ジュミアの物流を通じて実行されています。このシステムを介して、第三者の物流パートナーの車両、パートナーのトラックやバイクを活用し、より広いエコシステムの中でパッケージの過程を完全に制御できています。

岡元:現在、フルフィルメントセンター(配送用倉庫)の数は足りていますか。今後数年間の成長を支えるためは、さらに必要でしょうか。

サファエ:現段階で我々は十分なキャパを持っています。現在のインフラの利用率を高める余地があると思いますし、近い将来の数量増加を支えるには 十分だと考えています。

岡元:例えば、ナイロビの郊外に住んでいる場合、配達を受け取るのにどのくらいの時間がかかりますか。エクスプレイスサービス(特急配達サービス)はありますか。

サファエ:はい。私たちはナイロビ市内では翌日配達できるエクスプレスサービスを提供しています。このエクスプレスサービスでは、売り手が注文を受け取った時に私たちの倉庫で梱包し、ジュミアの物流内に送り出します。

つまり、最初の工程の時間短縮ができます。ナイロビ市内であれば翌日、ナイロビ市以外の都市の場合は、2—3営業日以内に入手できます。配達のタイミングは送り先だけでなく、販売者の所在地も影響します。

国を越えたビジネスの場合については、私たちは中国の深センにハブを持ち、中国に販売者がいます。例えばあなたが消費者で、ある製品を中国に注文した場合、国を越えるので配達まで通常約3週間と、少し長くなります。商品の90%は国内の配達のものですので、配達時間ははるかに短いです。

岡元:ナイロビ市内の出荷の場合は翌日に届きますか。

サファエ:エクスプレスサービスの場合、在庫があれば翌日届きます。

岡元:エクスプレスサービスでなければ、どのくらいの時間がかかりますか。

サファエ:倉庫に商品在庫がない場合は、売り手が荷物を拠点に持ち込むために24時間または1営業日かかりますのが、3〜4営業日で届きます。

岡元:なるほど。最近、ジュミアの物流プラットフォームを第三者に開放することが発表されましたが、それについてご説明いただけますか。それがどのように機能することを期待されていますか。

サファエ:ジュミアの物流プラットフォームは自社のマーケットプレイス(市場)活動の成長を支える大きな資産であるだけでなく、第三者企業にとっても非常に有意義で、問題点を解決できるのではないかと気づき、開放することにしました。

このアイデアは、私たちの販売者から始まったものです。これまでは第三者のために開放していなかったので、輸送価値は必ずしもジュミアのeコマース市場に変換されていませんでした。

そこで、私たちは技術インフラとシステム整備に取り組んできました。まず、第三者の物流を自社のeコマースと一緒に輸送することができるようにしました。その一環として、2020年に試験的に 第三者企業にロジスティクス・サービスを提供し始めました。

私たちには、幅広い業界の約300のビジネスクライアントがいますが、例えばナイジェリアで銀行の支払い業務を代行したり、モロッコでカード決済を代行しています。他にも、消費者にSIMカードなどを提供する際にも通信事業者と協力しています。

ジュミアの物流プラットフォームには利点があり、アフリカの他の多くの企業が抱える悩みを解決しています。

>> >>特別インタビュー【3】ジュミア・テクノロジーズのフィンテック、財務戦略

本インタビューは2021年3月25日に実施しました。