3月下旬の中国株はまちまちの動きとなっています。上海総合指数は3月15日の終値3,419.946ポイントから3月29日には+0.4%となる3,435.296ポイントに、香港ハンセン指数は3月15日の終値28,833.76ポイントから3月29日には-1.7%となる28,338.3ポイントとなっています。

上海総合指数、香港ハンセン指数共に買い戻しが入るも軟調傾向

上海総合指数は3月25日までは軟調な基調が続いていたのですが、3月26日から買い戻しが入っています。値頃感からの買い戻しもありますが、新型コロナウイルスのワクチン普及によって経済活動が元に戻るのではないかとの期待から、酒造株や銀行株、エネルギー株などが買い戻されています。

もっとも、中国の金融当局は主要国では例外的に新型コロナウイルスの感染拡大収束後は金融引き締めを行うと示唆しており、その懸念から上昇幅は限定的なものとなりました。

一方、香港ハンセン指数も3月26日から買い戻しが入っているのですが、その戻りは弱いものとなっています。

これは、香港市場が4月2日はキリスト受難節で、4月5日は清明節の振り替えで、それぞれ休場となり、長期連休前のポジション整理の売りということもあります。しかしながら、一番大きな原因は、セカンダリー上場を果たした中国検索最大手のバイドゥ(BIDU)や、テンセント傘下のテンセントミュージック(TME)、ディスカウントECのビップショップ(VIPS)など良く知られたメジャーな米国上場の中国企業が大幅安となっていることです。

上記以外にもXPeng(XPEV)、ニオ(NIO)、Li Auto(LI)の中国EV3社も3月24日に10~15%の大幅安となりました。この急落にはタイガー・アジアの元運用担当者ビル・ホワン氏が設立したヘッジファンド、アルケゴス・キャピタル・マネジメントの取引が関係していると伝わっています。

香港上場のIT関連株は大幅安。しかし急落は長期目線ではチャンスにも

アルケゴスがマージンコールに応じられなかったことを受け、アルケゴス関連の200億ドル(約2兆2,000億円)を上回る規模のポジションが強制的に解消されたことから百度(BIDU)などが急落し、それ以外の米国上場の中国株にもその流れが波及した可能性が指摘されています。

同社の関連ポジションはまだ完全に整理が終わっていないとの指摘もある一方で、同じようなポジションを抱えるヘッジファンドの整理売りが続くのではないかとの懸念が中国株全体の株価の重しとなっています。

そして、世界的なグロース株からバリュー株への資金シフトも手伝って香港上場のIT関連株は大幅安となり、これが香港ハンセン指数の足を引っ張っています。

しかし、足元の中国大手IT企業の業績は堅調です。たとえば、アリババ(09988)の2020年10-12月期決算は相変わらず力強いものでした。

売上は大幅に過去最高を更新して初めて四半期で2,000億元を超え、実質的な利益である調整後の純利益(普通株主帰属分)はこれまで最高だった493億元を大きく超えて606億元となりました。3か月間に生み出した営業キャッシュフローは1,032億元にもなり(うち962億元がフリーキャッシュフローとして残ります)、日本円で約1.7兆円にもなります。

規模、成長力、キャッシュを生み出す力のいずれもが非常に力強いもので、アジアでも屈指の収益力を持つ企業と言えるでしょう。

また、テンセント(00700)の2020年10-12月期決算も営業利益以外の売上、粗利益、純利益、非IFRS準拠の調整後純利益は全て四半期として過去最高を更新しました(ただ、最終的に重要な非IFRS純利益に基づく一株あたり希薄化後利益は3.41元となり、市場予想平均の3.45元を少し下回りました。このため将来の予想売上、利益額ともアナリストが下方修正する動きも出ています)。

これらの大手プラットフォーム企業は、中国当局によるネット大手に対する規制強化への懸念も向かい風となり、株価はかなり軟調に推移しているところです。

しかし、ファンダメンタルズは極めて強く、調整を乗り越えた先に次の投資機会があると思います。もうしばらく調整が続くと見ていますが、長期視点では現在の調整局面をチャンスとして注目しても良い銘柄群であると思われます。