確定拠出年金は、会社の制度として導入されている企業型確定拠出年金(以下、「企業型DC」)もiDeCo(個人型)も、運用は加入者である本人が行い、その運用商品はあらかじめ商品ラインアップ(運用商品一覧)として提示されているものに限られます。

そして、その運用成績次第で60歳以降に受け取る金額が変わります。ですので、商品ラインアップとして品揃えされている商品が老後資産形成をしていく上で、適切と言えるものであることは非常に重要です。また、必要であれば見直すことも大事なことです。

運用している商品がラインアップから除外されるということは、長期の資産形成商品として適切ではなくなったことを意味しますので、自分の運用先について見直しが必要です。具体的に何をすればよいか見ていきましょう。

除外されると、その商品に新たなお金を預け入れできない

ラインアップから外れると、その商品を新たに買うということができなくなります。ですから、毎月の積立金を除外される商品で運用していた場合は、商品ラインアップに並んでいる他の商品に切り替える手続きを取ります。

商品ラインアップから突然外されるというようなことはなく、半年、場合によってはもっと前に、除外を検討している段階で企業型DCであれば会社から、iDeCoであれば運営管理機関から、除外候補商品としてお知らせが届きます。そこに自分が積み立てしている商品、保有している商品があれば、すぐに加入者サイトにアクセスして、まずは翌月以降の購入商品の変更を行いましょう。

もしこの手続きを怠ったまま除外ということになると、積立金のうち除外商品を買付する配分になっていたお金は、購入商品が指定されていないお金として取り扱われ、買付指定がない場合に預入先として指定されている商品(「指定運用方法」という)を買うことになります。具体的な商品は、会社ごと・運営管理機関によって異なりますが、預金やターゲットイヤーファンドなどになっている場合が多いです。

除外される商品を残高として保有していたら、他の商品に預け替えを

残高についても、もし除外される商品を保有していたら売却して他の商品に切り替えましょう。その残高は、運用をスタートしてからの年数が長い場合、まとまった金額になっているかもしれませんし、利益が出ているならまだしも、損失が出ているとすると、売却することに抵抗感を感じるかと思います。

しかし、これから60歳までの期間、老後資産形成のための商品として適切ではないと判断された商品で運用を継続することは、将来の受取額を考えるとお勧めはできません。刷新された商品ラインアップには除外される商品と同じ資産クラスの商品や、よりコストの安い商品等が並んでいると思いますので、改めてそれぞれの商品の内容を確認して預け替えを検討してください。

ここからは、もし除外日までに残高を他の商品に切り替えなかった場合、どのような取り扱いになるかについて、説明します。(2021年2月現在の取り扱い)

商品除外については改正DC法が2018年5月1日に施行されたことにより、保有者全員ではなく、商品保有者の2/3の同意で除外ができるようになりました。その2018年5月1日以前に保有していたかどうかで残高の取り扱いが異なります。

2018年5月1日以前より保有している残高はそのまま残高が据え置かれ、2018年5月1日以降に購入した残高は売却され、その売却代金は購入指定のないお金として積立金同様に「指定運用商品」の購入に充てられます。

この扱いについては、一般の加入者にとって非常にわかりにくく、企業型確定拠出年金で商品除外を実際に行われた先進的なご担当者の方々からも改善すべきだとの声が続々と挙がっていました。厚生労働省もこの声を受け止め、2020年12月23日の厚生労働省 社会保障審議会 企業年金・個人年金部会で、2018年5月以降の購入分も売らずにすべてを保有し続けるような商品除外も認める方向性が打ち出されました。

保有商品を一部とはいえ、強制的に売却することは、加入者の財産に与えます。それは商品除外を進めて商品の見直しを図りたい企業や運営管理機関にとっても、除外手続きを躊躇する要因となっていました。

ですから、時期は未定ですが、除外商品の残高を売らずに保有継続が認められるようになると、除外しやすくなり、優良とは言えない商品のふるい落としがより活発化することでしょう。そのことは加入者にとってもプラスになると思われます。

企業型では元本確保、高コスト・パッシブ型が除外の動き

商品除外はiDeCoではほとんど行われておらず、企業型が先行しています。企業型確定拠出年金の担当者調査によると、預金や保険といった元本確保型での絞り込み、国内株式のアクティブ運用で成績の悪い商品の除外、国内株式や外国株式のパッシブ運用で運用管理費用(信託報酬)の高い商品の除外といったあたりが目立ちます。

運用管理費用については、既存商品の費用を値下げしてくれれば除外にもならず、加入者にとっても何も手続きしなくてよいので非常に助かります。しかし、既存の販売先や運営に関わっている各社との調整がなかなか大変だそうで、そのようなことを行なう運用会社は稀です。

そのため、同じ投資対象、同じ運用手法でコストだけ下げた新商品を売り出す運用会社が多く、企業にとっても、加入者にとっても、除外による商品変更といった負担を現状は強いられています。最近のSDGsの流れから言えば、「誰も高コスト商品に取り残さない」ために、運用会社も既存顧客を大切にするような取組みをしていただきたいと感じます。

確定拠出年金の制度が始まって今年(2021年)で20年です。その間、マーケットだけでなく、商品も制度もより良いかたちを目指して変化してきました。

商品除外だけでなく、加入者にとって影響がある大切なお知らせは勤務先やiDeCoの契約運営管理機関から必ず届くようになっています。見落としがちな通知かもしれませんが、必ず内容を確認して自分の老後資産にとって必要な手続きを行っていただきたいと思います。