半年ほど前に、「コロナ禍から約半年。マーケットはどう変わった?」という記事を2本掲載し、日本国内における新型コロナウイルス感染拡大から最初の半年間を振り返って、マーケットがどのように動いたかについてお伝えしました。

コロナ禍から約半年。マーケットはどう変わった?(1)
コロナ禍から約半年。マーケットはどう変わった?(2)

同記事では、当時のマーケットの特徴として以下の点を挙げていました。

・山あり谷ありの半年間
・実体経済とマーケットの乖離
・進む二極化

その後さらに半年が過ぎ、今、マーケットはどのようになっているでしょうか。

コロナ禍の1年でマーケットはどう変化したのか

まず、この1年間の日経平均株価の推移をチャートで見てみましょう。

【図表1】日経平均株価の推移(2020年2月~2021年2月)
出所:マネックス証券
※マネックス証券では株価の推移を見るときに一般的によく使われるチャートの他、その株価の動きを表形式で見られる時系列データが便利です。

2020年3月に大きな谷をつけた日経平均株価は2020年6月にかけて、急速に回復しました。その後、11月までは、ほぼ動かなかったことが見てとれます。時系列情報ですと、この動きがより分かりやすく見えます。

【図表2】日経平均株価の四半期ごとの推移を示した時系列データ
出所:マネックス証券

2019年12月末から2020年3月末にかけて、日経平均株価は5,000円近く下げています。2020年3月の四本値つまり2020年1月から3月の動きを見ると、高値が24,000円を超えており、安値は16,000円台ですので、瞬間で最大8,000円近く下げたのです。

一方、その嵐の時期を過ぎた2020年6月末は22,288円で、2019年12月末と比較すると1,500円ほど安いだけです。2019年10月から12月にかけて1,900.78円上げているので、2020年6月末には2019年9月末とほぼ変わらない水準まで株価が回復していたと言えます。そして、2020年7月から9月にかけては1,000円弱上がっただけで、高値、安値ともに2,000円も離れていません。チャートを見ても分かるように、小康状態が続いていたのです。

それが大きく変化したのが2020年10月から12月です。実に4,000円強上昇しています。チャートを見ると11月までほとんど動いていません。それが11月に急激に上昇しているのが見てとれます。11月の上昇の理由は、新型コロナワクチンの登場でした。その上昇は現在も保たれており、単純化するとマーケット的には同ワクチンへの期待が冷めずにここまで来ていると言えるでしょう。

そして、半年前は実体経済と乖離しているように映ったマーケットですが、直近では同ワクチンへの期待がいよいよ増してきているようです。ワクチン接種でリードしているイスラエルでは1週間あたりの新たな感染者が30%以上下がってきています。この1週間で同じくワクチン接種でリードする英国・米国も医療関係者が「峠を越えた」と述べており、両国の新規感染者も急激な減少を見せています。両国はロックダウンなどその他の対策も影響している可能性がありますが、実態がマーケットに追いつきつつある傾向のように見えます。

半年前の勝ち組銘柄・負け組銘柄はどうなった?

それでは、上述の8月28日付記事で指摘した二極化についてはどうでしょうか。同記事では、Zホールディングス(4689)、エムスリー(2413)、SGホールディングス(9143)が買われている銘柄(強い3社)で、キヤノン(7751)、JR東日本(9020)、JR東海(9022)を売られている銘柄(弱い3社)として挙げていました。それら6社の値動きを見てみましょう。まず、1年前を起点とした比較チャートです。

【図表3】2020年8月28日付記事でご紹介した6社の株価の比較チャート(期間:1年)
出所:マネックス証券
※マネックス証券のチャート機能では複数のチャートの比較ができ、様々な銘柄の動きが分かりやすく見られます。

図表3を見ると、9月にかけては強い3社が順調に伸びてきていたことが分かると思います。逆に、弱い3社は徐々に落ちています。しかし、9月以降は若干、動きに違いが出てきています。強い3社の中でもZホールディングスは伸び悩んでいるように見え、SGホールディングスも弱くなってきています。その中でもエムスリーは上昇していましたが、2021年1月から変調しているようです。逆に弱い3社はこの1ヶ月間で、やや盛り返しているように見えます。

では、比較チャートで時期を「6ヶ月」に変えて見るとどうでしょうか。

【図表4】2020年8月28日付記事でご紹介した6社の株価の比較チャート(期間:6ヶ月)
出所:マネックス証券

先ほどの1年チャートですと強い3社と弱い3社が明確に分かれて見えていましたが、この「6ヶ月」では実は違いがまだらになってきていることが分かります。この半年間で見ると、キヤノンのパフォーマンスが2位で、JR東日本・JR東海もZホールディングスとSGホールディングスを上回っています。

さらに、期間を「3ヶ月」に変更してみると、どうでしょうか。この3ヶ月と言うと、新型コロナワクチンのニュースが出た11月頭からの動きになります。なんと、パフォーマンスのトップはキヤノン、JR東日本・JR東海が続き、強い3社のパフォーマンスが下回るという結果になりました。

【図表5】2020年8月28日付記事でご紹介した6社の株価の比較チャート(期間:3ヶ月)
出所:マネックス証券

期間を「1ヶ月」に変更すると、その傾向がさらに明確に確認できます。強い3社のパフォーマンスはすべてマイナスになる一方、弱い3社が10%以上のパフォーマンスになっています。特に2月に入ってJR2社が大きく伸びていることが分かります。

【図表6】2020年8月28日付記事でご紹介した6社の株価の比較チャート(期間:1ヶ月)
出所:マネックス証券

コロナ禍の影響を受けたマーケットの特徴については12月8日付記事でもご説明しました。同記事の要点は一部の超優良株、つまりここで例として挙げている強い3社のような銘柄に引っ張られる日経平均株価の上下動は多くの投資家の体感と大きく異なる、というものでした。

先ほどの比較チャート機能を使い、日経平均株価とTOPIXの過去1年間の推移を見てみると、日経平均株価の伸び方がTOPIXと大きく異なっていることが分かると思います。

【図表7】日経平均株価とTOPIXの推移の比較(期間:1年)
出所:マネックス証券

しかし、この1ヶ月間ほどで見ると、ややTOPIXも回復してきていることが分かります。

【図表8】日経平均株価とTOPIXの推移の比較(期間:1ヶ月)
出所:マネックス証券

さらに、この5日間で言うと、TOPIXが逆転してきていることが分かります。これは新型コロナワクチンが実際に広い範囲で接種されることによる変化をマーケットが吸収し、今後の道筋を示し出しているように思われます。全体像としてこのような変化を把握しておくことがマーケットを理解する上で有用でしょう。

【図表9】日経平均株価とTOPIXの推移の比較(期間:5日)
出所:マネックス証券

では、このような変化がアクティビストの動きに対して、どのような影響を与えるでしょうか。次回以降、見ていきたいと思います。