山あり谷ありの半年間

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大で株式市場も大きな影響を受けました。日本国内で新型コロナウイルスが大きく注目されるきっかけとなったのは、「ダイヤモンド・プリンセス号」での感染拡大ではないでしょうか。同船の下船が完了した2020年3月1日から、ちょうど半年ほどが経ったことになります。その前営業日(2月28日)の日経平均株価は21,142円でした。その後、3月19日に16,358円の最安値をつけているので、実に3週間で23%という大暴落があったことになります。そこから6月にかけて株価は回復基調を強め、5月下旬には2月末の水準を超え、6月頭に23,000円台に回復しています。

非常に値動きの激しい半年でした。今回からは、この間の株式市場の動きを振り返り、今マーケットに起きていること、今後のアクティビストの投資戦略予想をお伝えしていきたいと思います。

3月に急落した株価ですが、直近8月27日の日経平均終値は23,208円、年始が23,319円なので、ほぼ同水準に戻ってきたことになります。一方、GDPなどの経済統計を見ても、鉄道や飲食店、街の人などの動きを見ても、今回の感染症の拡大が経済に大きな影響を与えているのを実感します。

実体経済との乖離

このマーケットと実体経済の明らかな乖離は世界各国で政府や中央銀行が大規模な財政出動・金融政策を行ったことで説明できそうです。財政出動で市中、金融政策でマーケットに多くのお金が流通しました。米国では外出が制限されている中で給付金を受け取った人々がオンライン証券経由で給付金を投資に回したという報道も見られました。それらのお金がマーケットを支えているという見方もあります。

典型的なのは金価格で、米ドル建てでの金価格は2019年末から2割以上値上がりしています。つまり、大量のお金がマーケットに入る中で、お金の価値が下がっている結果、株価が上がっているとも考えられます。

実体経済とマーケットの乖離を理由に現在の株価をバブルと見なしている人も少なくないようです。もちろん、上記のようにお金の価値が下がっていることで株価が上がっている面もあるため、従来のお金の価値からするとバブルと言える側面もあるかも知れません。しかし、実際の株価を見てみると値上がりしているものと値上がりしていないものは二極化しつつあり、単純にマーケットで株が買われ過ぎているとも言えないことにも注目すべきでしょう。

マネックス証券の株式スクリーニングサービスで東証上場の時価総額1兆円以上の銘柄をスクリーニングすることができます。現在、条件を満たす銘柄は125銘柄です。それに26週移動平均乖離率を加えます。26週移動平均乖離率というのは26週間(約半年間)の平均の株価と今の株価がどれだけ離れているかを示すもので、この半年間に買われている・売られている銘柄が分かるわけです。

買われている上位3銘柄

銘柄名称 銘柄コード 26週移動平均乖離率
Zホールディングス (4689) +55%
エムスリー (2413) +51%
SGホールディングス (9143) +50%

 

売られている上位3銘柄

銘柄名称 銘柄コード 26週移動平均乖離率
キヤノン (7751) -17%
JR東 (9020) -15%
JR東海 (9022) -11%
 

進む二極化

つまり、全体で見ると株価はこの半年で戻していますが、大きく買われている銘柄と、その中でも下げている銘柄があるわけです。ネットビジネスのZホールディングスやエムスリー、佐川急便を展開するSGホールディングスが上がっている一方で、オフィスでの事務機需要の縮小が懸念され、配当金を減額したキヤノン、ビジネス・観光両面で鉄道需要の減少に直面しているJR2社の下落が目立つのはマーケットが合理的に銘柄を評価していることを表しているようです。まさにこの半年間で企業価値を高めた企業と下げた企業の二極化が進んでいるわけです。

アクティビストは価値が十分に評価されず、割安な企業の株式に投資するのが王道です。そうすると、社会の大きな変化が起こっている今、行動の改善余地が大きく、株価が大きく変動していているなかで正しい評価がされていない割安な企業を見出すにはいいチャンスかもしれません。このような状況下でアクティビストがどのような動きに出るか。次回見ていきたいと思います。