前回コラムでは、2020年のマーケットにおいて実体経済とマーケットに乖離があると見られるものの、それは金融政策や財政政策によるものと考えられ、大きく値上がりしている銘柄と低迷している銘柄に二分されていることをお伝えしました。つまり、現在の株式の上昇はおそらく単純なバブルではないということです。

また、金融政策や財政政策が長期化する可能性はありますが、ずっと継続されることもないでしょう。「株価がその会社の将来の収益をベースに形成される以上、長い目で見ると経済は正常化していくが、一定の変化は避けられない」とマーケットは見ているように思います。

なかなか変わらない人間の習性

人間の習性の力というものは強力で、たとえば運送実績を公表している小田急電鉄(9007)の開示によれば2020年4月から6月の通勤定期の輸送人員は-18.5%でした。定期外によるものは-57.5%です。4月から6月は新型コロナウイルスの感染拡大に大きな影響を受けていた時期ですが、5人のうち4人は前2019年と同じように通勤定期を利用して移動していたわけです。定期外によるものも5分の2は残ったということで、様々な社会制度・関係などを前提とした習性の力は強力なものだと言えそうです。

コロナ禍で加速した変化

一方、スマートフォンを使い始めたら再びガラケーに戻ることはなく、suicaを使い始めたら再び切符売り場に並ぶことがないことからも考えられるように、一度行動に変化が起きたら、元の行動に戻りにくい事象も少なくありません。コロナ禍で、オンライン通販や出前・テイクアウトの利用、オンラインでの会議、動画・音楽・ゲームの配信サービスなどが一気に普及しました。これらはすでに進んでいた変化を加速させたものかもしれませんが、これらの変化は不可逆的な面が大きいように思います。街中のアルコール消毒やアクリル板、ソーシャルディスタンスがずっと続くかは分かりませんが、当面の間は続きそうです。

株価の変動期はアクティビストにとって投資のチャンス!?

必ずしも変化が得意でない人々が、強制的かつスピードの早い変化にさらされているのが現状です。この半年間のうちに大きく変化する環境に適していた会社にとっては大きなビジネスチャンスが生まれました。上記にあげたオンライン通販などは利益を大きく伸ばしました。引き続き、環境変化に適応できる会社には大きなビジネスチャンスが待っていると思われます。一方、今後柔軟性の乏しい組織はさらに自ら変化することが難しそうです。そこにアクティビストの投資機会があるように思われます。

これまでにも取り上げてきたように、基本的にアクティビストは投資先に変化を促します。それはまさに上記のように会社が自らの力で変化することが容易ではなく、外圧を必要とするケースがあるからだと思われます。しかも株価の大きな変動期は会社の価値をしっかり見抜く投資家にとって絶好のチャンスと言えます。

今後、アクティビストは変化しうる会社への投資を進めていくものと思われます。鉄道会社や不動産会社、ホテルなどの観光事業者はコロナ禍で苦境を強いられており、再編が起きやすい状況のように思われます。

また、オンラインへの動きが加速したことで、テレビ局や映画会社、小売業などは従来の商流を見直していかねばならないでしょう。そして、それらの動きの中でアクティビストなど投資家も一定の役割を果たしていきそうです。そうした中、世界一の投資家として有名なウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイが子会社を通して日本の商社5社に投資したことが話題になっています。日本の総合商社のどのような面が評価されたのでしょうか。同種の会社にどういうものがあるか等も含め、次回お伝えしたいと思います。