◆こういうご時世だから無観客、リモートでの開催となった昨年大晦日のNHK紅白歌合戦。僕が注目したのはテレビで初パフォーマンスを披露したYOASOBIだ。YOASOBIはボーカロイドプロデューサーのAyaseとシンガー・ソングライターのikuraによる2人組で「小説を音楽にするユニット」。デビュー曲「夜に駆ける」はストリーミング再生回数2億回突破の大ヒットとなった。

◆YOASOBIと似たグループにヨルシカがある。こちらはコンポーザーのn-buna、ボーカルのsuisによる男女2人組のロックバンド。さらに「ずっと真夜中でいいのに。」というグループもある。彼らはネットカルチャー発の次世代型アーティストだが、これら3つのグループに共通するのは「夜」である。これらのグループ及びそのファンは「夜行性」と呼ばれている。

◆いずれも魅力的なユニットだが、僕は通称「ずとまよ」こと、ずっと真夜中でいいのに。が好きだ。繊細でロマンチックなメロディー、歌詞、映像、どれをとっても非常にハイセンスな感性にあふれている。だが、彼らの代表曲「正しくなれない」にも、ユニット名にも表れている通り、どこかシニカルで(良い意味で)ひねくれたものを感じる。

◆相場もそうかもしれない。史上最高値更新が続く米国株、30年ぶり高値の日本株、その背景にあるのはコロナの感染拡大だ。コロナで世の中が大変だからこそ、空前絶後の財政・金融政策が打ち出され、それが株高の原動力になっている。いわばコロナだからこその株高だ。であるならば、「ずっとコロナが終わらないでいい」という、ひねくれた見方も一部にあるかもしれない。

◆しかし、そうした考え方はダメだ。コロナの完全終息は人類共通の願いだ。コロナが終わり、政府・中央銀行の支援がなくとも企業の成長力を評価して株価が上がるステージへの移行を目指すべきである。今はまったく見通せないが、果たしてそういう時がいつかくるだろうか。使い古された言葉だが「明けない夜はない」。ずっと真夜中なんてこともない。ずっと真夜中ではよくないのである。みんなで夜明けを祈ろう。2021年 元旦。