FOMC後も米ドル安が続く

既知のように、先週は米連邦公開市場委員会(FOMC)後に行われた米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の会見内容を受けて、一気に米ドル安が進みました。どうやら市場の受け止めは「議長が緩和姿勢へのコミットを強調した」というものだったようで、少なくとも市場には米ドルの売り安心感が広がることとなった模様です。

足下では、いまだ新型コロナウイルスの感染が猛威を振るっている真最中です。ようやく米国内で新型コロナワクチンの接種が始まったと言っても、その成否を確認するまでには、まだ数ヶ月の時間を要することと思われます。そのような現状にあって、FRBが「常に柔軟に対応できる姿勢」を示したことが、市場で「ハト派寄りだった」と解されたとしても、それは致し方ないことなのかもしれません。

ただ、いずれ新型コロナワクチンの有効性が広く認められるようになる可能性は高いと思われます。また、このほど米議会が大筋合意した追加経済対策の効果も遅かれ早かれ確認できるようになるでしょう。

相場は将来的に起こり得る事象を先取りして動くものですから、そろそろアフターコロナの時代を見越した動きが散見されるようになってもおかしくはありません。いずれ、コロナ禍とは全く異なる新たな時代のフェーズが訪れ、相場の顔つきも一変することとなるでしょう。

当然、各種の相場材料に対する投資家の捉え方、市場の反応も大きく異なってくるに違いありません。コロナ禍においてのみ通用した法則やパターンなどといったものが、次第に通用しなくなってくるということもあるでしょう。

株高により個人消費は活発化するか

先ごろ、米アップルが2021年上期における「iPhone」の生産計画を大幅に増やす方針であることが明らかになりました。「5G」対応の新型機種の販売が伸びており、なかでも上位の「12プロ」と「12プロマックス」の販売が好調とのことです。当初、これらの上位機種は「スペックも販売価格も高すぎて売れない」とされていました。それにもかかわらず、極めて好調に売り上げを伸ばしているのは、1つに足下の米株高が一因と見ていいものと思われます。

つまり、今後は株高の資産効果が目に見えて現れるようになり、その上で新型コロナワクチンの有効性が確認されるようになった場合には、これまで抑圧されていた人々の消費意欲が一気に盛り上がるものと考えられます。個人消費が急激に活発化すれば、想定以上に消費者物価指数も跳ね上がるものと見られます。そして、結果として全体的にインフレ傾向が目に見えて強まってくると、それはFRBの政策方針にも確実に変化をもたらすことになるでしょう。

米株価が一旦調整入りする可能性に要注意

もちろん、今はまだコロナ禍にあるわけで、なおも「リスク選好のドル売り」や「リスク回避のドル買い」などといったパターンが今しばらく繰り返されることでしょう。その意味では、まず大いに期待されていた米追加経済対策が合意に達したことで、ひとまず「材料出尽くし」となり、米株価が一旦調整入りする可能性があるといった点に要注意です。

この週明け以降にNYダウ平均が終値で史上最高値を更新する可能性は十分あると思われますが、そこが目先の天井となる可能性もあると見ています。米株価が一旦調整入りすると、これまでうず高く積み上がってきた米ドルのショートポジションが巻き戻される可能性も高まるでしょう。

また、一方ではユーロ/米ドルの上昇が過熱気味になっています。ですので、この年末年始にかけてもう一段の上値を取りに行ったとしても、ほどなく一旦調整の場面を迎える可能性があると見ています。

このところは、シカゴIMM通貨先物の投機筋によるユーロの買い越しも目立って積み上がっており、そう遠くない将来に利益確定の売りが強まることも想定しておく必要があるでしょう。

もともと、ユーロ/円や豪ドル/円などのクロス円は全般に強気の基調を継続しています。そこで、米ドル安が一服すれば、米ドル/円にも一定の上値余地が生じてくるものと思われます。