南アランドとメキシコペソ
11月13日付けで「新興国通貨の「上がり過ぎ」リスク」というレポートを書いたが、その後も株高、リスクオンが続く中で、為替相場においてリスク資産と位置付けられる新興国通貨も選好される状況が続いている。代表的な新興国通貨である南アフリカランドの対円相場は、一時90日MA(移動平均線)を8%上回った(図表1参照)。これは、2018年以来となる90日MAを大幅に上回る記録だ。
【図表1】南アフリカランド/円の90日MAからのかい離率(2010年~)
また、メキシコペソ/円も最近、90日MAを最大で6%以上上回った(図表2参照)。これは2017年以来だ。こんなふうに、90日MAを大きく上回る動きは、短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっているといった意味でもあるだけに、下落に転じるとそれが加速するリスクも要注意だろう。
【図表2】メキシコペソ/円の90日MAからのかい離率(2010年~)
たとえば、メキシコペソ/円は、3月の「コロナ・ショック」前後の1ヶ月で約3割もの大暴落となった。これだけ下落が急激なものとなった一因は、短期的な「上がり過ぎ」の反動が重なったこともあっただろう。
ちなみに、「コロナ・ショック」でメキシコペソ/円の暴落が始まる前、90日MAからのかい離率は5%近くまで拡大していた。要するに、当時のメキシコペソ/円は「上がり過ぎ」気味となっていたところ、「コロナ・ショック」に急襲されたことから、「上がり過ぎ」の逆流も重なり、大暴落になったということではないか。
足元のメキシコペソ/円は、90日MAとの関係で見る限り、そんな「コロナ・ショック」前より「上がり過ぎ」懸念が強くなっている。その意味では、下落に転じた時はそれが加速するリスクに要注意ではないか。