ストラテジックキャピタルが広告を出した株主提案先の会社は、京阪神ビルディング(8818)、蝶理(8014)、東レ(3402)、淺沼組(1852)、極東貿易(8093)、世紀東急工業(1898)の6社です。蝶理と東レは広告上ではセットで掲示されています。東レ以外の会社は時価総額が1000億円に満たない会社ですが、東レは1兆円近い時価総額の会社で、この中では少し異質です。東レに対する株主提案は蝶理に対するものの関連と考えるのがよさそうです。事実、東レに対する株主提案は「上場親会社としての子会社監督責務を果たすため、グループ全体としての企業価値向上や資本効率性の観点から、子会社として維持することの適否に関する考えの開示」のみです。

東レ以外の5社に対しての株主提案の共通点

資本効率について考えるとき、見るべきポイント

それでは、東レ以外の5社に対しての株主提案はどういうものでしょうか。まず、どの会社にも見られるのが資本効率についての意見です。ここでは資本効率について考えてみましょう。会社がどういう資産を有しているかを示す貸借対照表という決算書があります。バランスシートとも呼ばれる貸借対照表は左側に資産、右側に負債、資本が掲載されています。会社がビジネスを行うための様々な材料である商品、設備、有価証券や現金などは資産です。一方、その資産の調達方法が負債、資本側で示されます。負債は外部から調達しているもので、借入金などがそうです。資本は、会社の所有者である株主が投じている資金です。資本はまさに株主の有する価値で、株主資本と呼ばれます。まとめると、会社がビジネスを行うために資産があり、その資産を外部調達する負債と、自身の保有する株主資本で賄っているということです。

負債と株主資本の割合のベストバランスとは

そこで、負債と株主資本の割合はどういうものがいいか、という話が出てきます。負債にも様々な種類がありますが、ここではコントロールしやすい借入金を考えましょう。会社のビジネスに必要な資産を一定とすると、借入金を増やせば自己資本を減らせます。借入金を減らす(つまり、返済する)には自己資本を増やす必要があります。株主資本でコントロールしやすいのは配当金です。つまり、借入金を増やせば配当金は増やせ、借入金を減らすには配当金を減らす必要があるということです。

無借金企業はいい会社?

無借金企業と呼ばれる会社があります。無借金企業はいい会社のように言われます。しかし、無借金であるためには株主資本を増やさねばならず、その分、配当は出しにくくなるわけです。ここで、個人投資家のことを考えてみましょう。個人投資家の中には株式投資をすると同時に住宅ローンなど借入をしている人もいると思います。仮にその個人投資家が2%で借入を行っているとします。この低金利下ですから、投資している会社は0.5%で借入を行えるかも知れません。

この場合、個人投資家にとっては会社が借入をして、それを配当してくれれば、会社が0.5%で借りた資金を用いて2%で借りているお金を返せるのです。0.5%で借入を行えるということは貸し手もその金利で借りてほしいわけで、三方良しです。この例はかなり単純化していますが、投資家は基本的にこの個人投資家と同様に株主資本が不要であれば配当として返してほしいのです。上記の話は、資産は一定としていましたが、資産の中でもビジネスにつながらないものは売却して、株主に返してほしいというわけです。

ストラテジックキャピタルの提案とその姿勢

ストラテジックキャピタルの提案の多くは上記のような資本効率、資産の使われ方についての要望です。そのうえで、それらの要望に実効性を持たせるために取締役会の選任や上記の資本効率などの開示を継続的に行うことを求めています。逆に、各社の本業に関する提案はほとんどありません。京阪神ビルディングに対し、保有不動産物件をREITに譲渡すべきと主張していることくらいがそうでしょうか。これは本業については会社側に独自の知見があるので資本効率などのファイナンス面に絞って提案を行う意図に見えます。今回の広告もそうですが、ストラテジックキャピタルは提案内容や会社とのやりとりを原則開示するなどオープンな姿勢も印象的です。

今回、このストラテジックキャピタルのようなアクティビズムの進め方は実際に個人投資家から見るとどのように映るかアンケートをさせていただきたいと思います。こちらのアンケートフォームからご意見いただければ幸いです。