直近の価格動向
J-REIT価格は、上昇基調となっている。東証REIT指数は、10月6日にコロナショック後の終値ベースでは高値となる1,754ポイントまで上昇した。連騰という動きではないため安定的な上昇基調とは言えないが、東証REIT指数は1,700ポイント台での推移となっている。
用途別で見ると、ホテル系銘柄の価格上昇が顕著だ。特に高額の宿泊施設を多く保有する星野リゾート・リート投資法人(証券コード3287、以下HRR)は、Go Toトラベルの恩恵を受けやすいとの思惑から、価格の上昇基調が続いている。10月7日には終値で548,000円まで上昇し、コロナショック前の2月上旬の水準まで回復している。
HRR以外のホテル系銘柄も価格が上昇しているが、 Go Toトラベルの恩恵を受けにくいビジネスホテルがポートフォリオの中心となっている銘柄が多い。さらにHRRの変動賃料はホテルの売上げや収益に対し6ヶ月程度遅れて反映するものとなっている。
従って実際にコロナ禍の影響を受けた期間の変動賃料は第16期(2021年4月期)に影響を受けるため、第16期の予想分配金が大幅に上方修正となる可能性が低い点には注意が必要だ。
2020年度後半の価格下落シナリオとは
前回の連載では2020年度下半期(20年10月から21年3月)の東証REIT指数は上値で2,000ポイント、下値で1,500ポイント程度と価格上昇要因となる要素が多く、現状の価格水準より上振れする可能性が高いことを述べた。
一方で、下落する要素も存在している。具体的には新型コロナウイルスの感染再拡大が最も大きな要因と考えられる。
新型コロナウイルスの感染再拡大に伴い、米国のニューヨーク市の一部では、店舗が閉鎖に追い込まれる事態になっている。同様に日本でも感染再拡大が起きれば、多くの用途にマイナスの影響が生じることになる。
特に前述の価格上昇が続いているホテル系銘柄では、固定賃料を支払っているホテル運営会社の経営の立て直しに多大な悪影響を及ぼすことになると考えられる。そのため、感染再拡大が起きた場合は、固定賃料が減額となる事態も視野に入れる必要が出てくるだろう。
さらに感染再拡大が日本では起きなくても海外で起きた場合には、J-REITがグローバル指数に組入れられている影響を受けることになりそうだ。
前回の連載では、新たにFTSEラッセル社の株式指数に組入れとなることが需給面でのプラス材料となり、価格が上昇する可能性を指摘した。しかし指数が下落基調となれば、J-REITも当然売却されることになる。
つまり、世界的な新型コロナウイルスの感染再拡大となれば、日本の感染状況に関わらずJ-REIT価格が下落する可能性があることも、念頭に置いておいた方が良さそうだ。