直近の価格動向
J-REIT価格は、方向感のない動きとなっている。特に9月18日の東証REIT指数は、一時1,762ポイントまで上昇したが、終値では1,694ポイントまで一気に下落した。3月の急落後の終値ベースでの高値は6月10日の1,761ポイントであるため、今回は高値更新とはならなかった。
この日の乱高下は、J-REITがグローバルインデックスに組入れとなる日を前に投資家の利益確定売りが影響したものと考えられる。FTSEラッセル社が算出しているFTSEグローバル株式指数シリーズに組入れとなる銘柄は8月21日に公表されていたが、実際の組入れは9月21日からスタートすることになっていた。9月18日は、組入れが始まる前営業日に当たることから投資家の思惑が交錯したものと考えられる。
2020年度後半の高値目処は2,000ポイント
J-REIT価格が2020年度下半期(2020年10月から2021年3月)に上昇するための材料は多く存在する。具体的には、次の2点が価格上昇に大きく影響を与えると考えられる。
(1)利回り狩り対象の拡大
物流系銘柄の価格は、3月に市場全体が急落した後でも全銘柄が2019年来高値を更新している。この点が示す通り、収益の安定している銘柄に対して投資家の需要は高い状態となっているという点は2019年と変わっていない。
従ってコロナ禍の悪影響が払拭できる予想分配金の開示が続けば、利回り狩りの対象が拡大し、J-REIT価格全体の上昇が期待できると考えられる。
J-REITの分配金はリーマンショック後には大幅に低下したが、コロナ禍は今のところ金融危機を伴っていない。従って物件売却は買い手の融資がつくため可能な状況であり、賃貸収益の低下は売却益で充分に補える状態であるという点でリーマンショック後とは大きく異なっている。
(2)グローバル指数組入れの買越し需要
前述の通り9月18日にJ-REIT価格は乱高下したが、指数に対する組入れが始まる時期が9月21日であり、これらの指数に対応するETFや投資信託がJ-REITに投資する時期は今後本格化すると考えられる。
また、指数に対するJ-REITの時価総額のウエイトは3ヶ月ごとに徐々に引き上げられ、2021年6月まで続く予定となっている。指数全体に占めるJ-REITの時価総額の割合が4%であった場合には、1%ずつ指数に算入されるという方式だ。
この4回の組入れで、3000億円程度の買越し需要が発生すると考えられているため、少なくとも3月の年度末までには20年9月と12月分の組入れ分が完全に寄与することになる。さらに指数対象となっている銘柄は54銘柄と市場全体の9割以上を占めている点から、東証REIT指数に対する影響も大きくなりそうだ。
東証REIT指数が2,000ポイントになっても、J-REITの予想分配金が現状の水準を維持できれば、分配金利回りは3.5%を超える水準となる。2019年にJ-REIT価格が2,200ポイントを超えていた時には、利回りが3.5%を切る水準まで低下したことを考慮すれば、充分可能な価格水準と考えられる。
2020年度後半の下値目処は1,500ポイント
一方でコロナ禍の影響が拡大すれば、物流系や住居系以外の銘柄の収益が下落する可能性が高い。また前述の通り、指数組入れは投資家のJ-REIT投資需要拡大に繋がるが、新型コロナウイルスの感染が日本ではなく世界で拡大すればグローバルインデックスには悪影響を及ぼすことになる。
この場合、指数下落による売り越しがJ-REITにも波及する影響を考慮する必要がありそうだ。
この点については、次回の連載で改めてリスクシナリオとして記載する予定としている。