トランプ米大統領の容体が相場に影響
先週は、週末10月2日の午後(日本時間)にトランプ米大統領が新型コロナウイルスに感染していたことが明らかとなり、その一報を受けて日経平均株価や米ドル/円、クロス円などが一旦大きく下落する場面を目の当たりにしました。
時間外でNYダウ先物が一時急落したことも一因であったと考えられ、それはアルゴリズム取引の為せる業であったところも多分にあったと考えてよいでしょう。つまり、あくまで一過性の反応がやや過剰に生じた結果であると捉えることができるものです。
実際、ほどなく米ドル/円やクロス円は持ち直す動きとなりましたし、同日のNYダウ平均は400ドル超の下げ(前日終値比)から始まったにも関わらず、その後は下げ幅を大きく縮小し、終値は134ドル安に留まりました。
むろん、トランプ氏の容体が「今のところ軽症」であると伝えられたことも大きく、当面は「同氏の容体が重症化せず、順調に快方へ向かうかどうか」を関連の報道やトランプ氏自身のツイートなどで確認しながら相場と向き合うことが重要であると言えるでしょう。
米追加経済対策を巡る協議
一方、トランプ氏の容体とともに大いに注目されるのは、米追加経済対策を巡る与野党協議の行方です。先週10月2日には民主党のペロシ下院議長が合意について「楽観している」と述べたと伝わり、市場は合意への期待をやや強めている模様です。
米債券市場の10月2日の序盤は米10年債利回りが低下する場面もあったものの、終盤にかけては0.70%前後にまで上昇し、市場のムードはややリスクオンの方向になびいていると見られます。
トランプ氏の新型コロナウイルス感染の報道を受けて、一時105円割れの水準まで下押した米ドル/円も、下げ一服から切り返した後はNY時間の終わりにかけて105.40円処まで値を戻す動きとなりました。
また、さらに週明け(10月5日)のオセアニア時間帯には一時105.60円処まで値を戻す場面も見られており、目先は先週末にかけて幾度か試された105.70-80円処まで勢いが継続するかどうかを見定めたいところです。
むろん、米追加経済対策を巡る協議に合意のメドがつけば、市場は素直に米ドル買いで反応し、一目均衡表の日足「雲」上限が位置する106円台前半の水準あたりまで上値を伸ばす可能性も十分にあると考えられます。
RBA政策会合は利下げを見送る公算
なお、先週を通じて豪ドル/円を中心にクロス円全般が持ち直す動きとなっていたことも米ドル/円の支援材料の1つと言えます。
豪ドルについては、今週10月6日に行われる豪準備銀行(RBA)の政策会合で「利下げ実施の決定が下される可能性がある」との思惑から9月下旬にかけて下落基調を強めていました。しかし、足下でビクトリア州の新型コロナウイルスの新規感染者数が着実に減少してきていることもあり、今回の会合ではひとまず利下げが見送られる公算が大きくなってきている模様です。
今週、ECBラガルド総裁の発言にも注目
また、一方でユーロ/米ドルの戻りに限りが見られ始めていることも、米ドルの買い戻しを通じて米ドル/円を下支える一因として見逃せません。
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は9月末、「インフレ率が一時的に目標を上回ることを容認する政策は検討に値する」との考えを示しました。つまり、米連邦準備制度理事会(FRB)が掲げる新たな政策指針と歩調を合わせる用意があるとしているわけで、これはユーロの弱気材料の1つとなり得ます。
先週10月2日に欧州連合(EU)統計局が発表した9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値は前年同月比で0.3%の低下という弱めの結果となりました。今週はラガルド総裁がコメントを発する機会が幾度か設けられていますので、さしあたっては、その内容に耳を傾けておくことが重要となるでしょう。