前回の振り返り

前回の記事では公開買付が実施される場合の株価の決まり方について説明しました。その中で、公開買付が実施される際は、「公開買付に応募する」、「取引所で売却する」という2つの方法があり、取引所で売却する場合は公開買付価格に合わせて設定される「買付条件」によって取引所での株価が妥当かを考える必要性をお伝えしました。

取引所で売却する場合の公開買付では、買い付ける株数の「上限」・「下限」が設定されます。そのため、「上限」が設けられる場合は「上限」を前提に上限以上の応募で公開買付されない部分を考慮して株価が形成され、「下限」が設けられる場合は応募株数が「下限」に達せず公開買付自体が不成立になる(すべての株式が買い付けられない)ことを考慮して株価が形成されます。(詳細については前回の記事をご確認ください。)

行動を起こす前に知っておきたい2つのポイント

さて、今回は公開買付が実施される際、個人投資家が、どのような行動をとるべきかについてお伝えしたいと思います。まず、皆さんに知っていただきたいポイントが2つあります。

1つ目は、「取引所での売却」と「公開買付への応募」の大きな違いです。取引所で売却した場合、その売却を取り消すことはできません。これは通常の株式取引と同じで、当然のことだと思います。一方、公開買付へ応募をした場合は、公開買付期間中であればその応募を取り消すことができます(通常、取消期限は公開買付期間の最終日です。時間が定められていますので正確な時間を事前に確認しておく必要があります)。

2つ目のポイントは、公開買付の条件が開始後にも変更されることがあるということです。通常、公開買付の条件を改悪する(買付価格を下げる、買付株数を減らす)ことはできません。しかし、公開買付条件を改善する(買付価格を上げる、買付株数を増やす)ことは基本的に自由に行えます。

なお、通常、買付価格を上げる場合、買付価格を上げる前に応募されていた株式についても変更後の買付価格で買付が行われます。この公開買付の条件の改善は、よりよい条件で公開買付を行おうという対抗者が現れた場合やもともとの条件で十分な応募が集まらない場合に行われます。(前回の記事はこのような公開買付の条件が改善される可能性を考慮せず、公開買付が単一条件であることを前提とした取引所での株価の形成について書いております)

取引所で慌てて売らず、公開買付期間中は動きをよく見る

上記2つのポイントを合わせると、どのようなことが考えられるでしょうか。公開買付が発表されると、取引所での株価もその発表に合わせて値上がりすることが普通です。これは、前回の記事で説明した通りです。しかし、その株価はその公開買付の分しか考慮されていないことがあります。つまり、その公開買付に対抗する公開買付が行われた場合など、公開買付の条件が改善されることで、さらに株価が上昇する可能性があるというわけです。その場合、もし最初に発表された時点において取引所で売却してしまっていると、その売却を取り消すことはできません。そのため、仮にその後株価が上昇しても、それ以後の株価の上昇を享受できないことになります。

一方、公開買付への応募であれば、期間中であればその応募を取り消すことができます。対抗の公開買付は、少しでも多くの株式を買い付けるため、最初の公開買付期間が終わる前(つまり、最初の公開買付者の買付が完了する前)に予告されることが普通です。つまり、取引所での売却と違って、他の提案や最初の公開買付の条件の改善を見てから公開買付への応募を取り消すことも可能であるなど、よりよい条件で株式を売却できる可能性があるのです。

もちろん、取引所では公開買付が発表された段階で、対抗者の登場や公開買付条件の改善を予想して、公開買付価格より高い株価がつくこともあります。対抗がなく、結果的に株価がもともとの公開買付価格近辺に落ち着き、その時点で取引所で売却しておくのが一番良かったというケースもあり得ます。

ただ、取引所での株価と公開買付で買い付けてもらう株価(単純な公開買付価格ではなく、前回の記事に記載の通り、公開買付価格に加え、上限・下限などの買付上限を考慮したもの)があまり変わらないのであれば、取引所で慌てて売らず、公開買付期間中は動きをよく見ることが適切です。公開買付への応募は、期間中であればいつ応募しても同じ条件で買い付けてもらえますし、応募したあとで取消を行って取引所で売却することも可能だからです。

いかがでしたでしょうか。次回はこれらの公開買付制度の基本をもとに、公開買付対象となった銘柄が実際にどのような動きをしたかについて解説してまいります。