米ドル安の流れが一服
前回コラムで、当面の注目ポイントとして「ユーロ/円や豪ドル/円などのクロス円がなおも強含みの展開を続けるかどうか」という点を挙げました。あれから2週間が経過し、なおもユーロ/円や豪ドル/円の強気基調に変化はありません。つまり、なおも基本的に円安傾向が続いているということになります。
その一方で、この2週間は「米ドル安の流れがとりあえず一服した」という点も見逃すことができません。その背景には、何より米10年債利回りの上昇という米ドル買いの判断材料があり、実際、8月4日に一時0.5036%まで低下した米10年債利回りが、先週8月14日には一時0.7257%まで上昇することとなりました。
米債利回り上昇の背景には、1つにコロナ禍に伴う米景気の先行き懸念が後退し、足下で俄かに回復期待が強まっていることがあります。既知のとおり、米大統領が8月8日に追加の経済対策を実施する大統領令を発令したことが一因で、いまだ与野党の意見対立は続いているものの、市場にはいずれ双方が歩み寄るものと楽観視するムードがあり、その実、米国の主要な株価指数はいずれも高止まりの状態を続けています。
また、コロナウイルスワクチンの開発に関わる前向きな話題がジワジワと増えてきていることも、世界景気の回復期待を通じた米債利回りの上昇に一役買っていることは間違いないでしょう。もっとも、先週は過去最大の米10年債入札に加えて30年債の入札も行われたことで、需給悪化の懸念から米債券相場全体が弱含みになったという側面があることも一応、念頭に置いておく必要があると思われます。
とは言え、米10年債利回りの上昇が米ドル安の流れを一服させることに貢献したことは紛れもない事実であり、そこにもとからあった円安の流れが加わったことで、先週の米ドル/円は幾度か107円台に乗せる強気の展開となりました。結果、米ドル/円の日足は89日移動平均線(89日)が位置する水準まで上値を伸ばすこととなりましたが、足下では同線が一つの上値抵抗として意識されているようにも感じられます。
米ドル/円は一段の上値を追う展開になるか
同時に、目下の米ドル/円は一目均衡表(日足)の遅行線が日々線と交錯する格好にもなっており、当面は「89日線をクリアに上抜けるかどうか」という点と「日足の遅行線が日々線を明確に上抜けるかどうか」という点に注目しておくことが重要であると思われます。仮に上抜ける動きが鮮明となった場合には、ひとまず7月20日高値=107.53円あたりが意識されやすくなると見られ、同水準をも上抜けた場合は次に108円処が試されやすくなるものと見ます。
なお、米ドル/円が一段の上値を追う展開になるかどうかは、引き続き豪ドル/円が強気の展開を続けるかどうかということにも関わっていると見られます。今後、6月第2週の高値=76.78円や7月第3週の高値=76.86円などを上抜け、そのまま77円台に乗せるような動きとなれば、同時に週足の「遅行線」が週足「雲」を上抜け、そこから一気に上値余地が拡がりやすくなってくると見ていいでしょう。
なお、豪ドル/円と日経平均株価との間に強い相関が認められていることは、過去に本欄でも触れてきましたが、その日経平均株価が先週の週足・終値で一目均衡表の週足「雲」を上抜けてきたという点も見逃がせません。同時に、週足の「遅行線」が週足ロウソクの位置するところを上抜けるかどうかという点も注目されるところで、仮に日経平均株価が一段の上値にトライすることとなれば、豪ドル/円や米ドル/円の上値期待も一層強まることになると思われます。