先週木曜日、日経平均は6月9日の戻り高値2万3185円を上回った。翌金曜日は株価指数オプション8月物のSQ算出日だった。金曜日の東京市場では、SQ値に取引時間中の日経平均が一度も届かない「幻のSQ」が意識されていた。弱い相場ならそれを懸念して崩れるところだが、結局金曜も利益確定売りをこなして小幅続伸で終えた。相場の基調は強いと見るべきだろう。ストラテジーレポートで述べた通り、75日線が200日線を下から上に抜けるゴールデンクロス達成目前。25日線、200日線の両者とも上昇するなかで示現するGCだけに強い上昇シグナルだ。一段高の兆しはじゅうぶんある。仮に今週上値追いがなくても先高観は醸成されるだろう。

8月に入り日経平均は2週間で約1,500円上昇してきた。8月は毎年パフォーマンスが良くないので8月相場は厳しいものになると見られていたが、そうなっていない。過去、8月のパフォーマンスが悪かったのは海外投資家の売りが主導してきたが、今年は買いに転じている。東京証券取引所が14日発表した投資部門別売買動向によると、8月3~7日に海外投資家は現物株を2週ぶりに買い越した。買越額は1791億円と、株価急落後の回復局面で高値をつけた6月1週目以来、9週ぶりの多さだった。

先週の「マーケット展望」で、<例年なら「夏枯れ」となるが、しかし今年は少し状況が異なるかもしれない>と述べたが、先週の東証1部の売買代金は2兆5000億円前後だった。

今年の夏はいつもと違う。そうであれば、今週も一段高となるかもしれない。普通なら「材料難で一服」と考えるのが定石だろう。決算発表も一巡して目立った材料もないからだ。一応、経済指標を見ておくと、国内では17日に4-6月期のGDPがあるくらい。米国では17日にニューヨーク連銀製造業景況指数、18日に住宅着工件数、20日にフィラデルフィア連銀製造業景況指数が発表される。エンパイアもフィリーも鈍化が見込まれる半面、住宅着工は増加が見込まれている。どれも相場を動かす材料にはならない。

予想できないからサプライズなのだが、あえてサプライズになりそうなものを挙げれば、まずフィリー。フィラデルフィア連銀製造業景況指数はもともと予想と乖離しやすい指標だ。先週金曜日にフィラデルフィア連銀が発表した経済見通しは7~9月期の実質成長率を10.6%→19.1%に大幅上方修正した。フィリーの上振れはじゅうぶんあり得るだろう。

次は19日のエヌヴィディア、20日のアリババの決算発表だ。これらの銘柄の好決算は市場のセンチメントへの影響力が大きい。

今週の一大イベントは民主党の全国党大会。19日にハリス氏の副大統領候補の指名受諾演説、最終日の20日にバイデン氏の大統領候補の指名受諾演説があるが、サプライズ=目新しい政策はもう出てこないだろう。むしろ、すでに掲げている政策のネガティブな部分の修正 - 例えば法人増税、富裕者増税を景気への悪影響を考えてすぐには実施しないなど - があるかどうかに注目したい。あれば大きなサプライズになる。

最後のサプライズ中のサプライズは急転直下、米議会がコロナ対応の経済政策で合意に至るというもの。共和党のマコーネル上院院内総務は、レーバーデー明けとなる9月8日まで上院採決を行わないことを発表した。与野党合意は議会が夏季休暇から戻る9月以降に持ち越されるというのがコンセンサスだ。しかし、今年の夏はいつもと違うのだ。何があっても不思議ではない。相場は高値圏にある。普通ならダウンサイドを警戒するべきところだが、今はアップサイド・リスクを意識する局面だろう。

今週の予想レンジは2万2800円~2万3500円とする。