前回に続き7歳の時にお金の勉強を始め、株式投資を始めたイオニー・マクニールさんとのインタビューを紹介します。
投資を成功させるために忘れてならないこと
Q:近年、ウォーレン・バフェットは市場のリターンを上回るリターンを上げられていませんが、その理由は何だと思いますか?
A:ウォーレン・バフェットの投資方法は、毎年必ずマーケットを上回る実績を出すことを目標とはしていません。彼の投資スタイルは非常に保守的となっていると思います。彼は直近で株価が大きく上昇しているような企業、近年ではIT企業ですが、そういった企業に大きく投資するようなことはしません。なぜなら彼はその実際のビジネスを理解しきっていなかったり、理解するのに時間がかかったりすることを知っているからです。結果的に彼がそのビジネスを十分に理解し、投資したいと思えるようになる頃には、それらの企業は割高になっているため、彼の”バリュー(価値)”の基準に反してしまうのです。
このような理由もありウォーレン・バフェットは過去数年マーケットの実績を上回っていませんが、同時に大きな損失も出していません。そしてこれこそが投資を成功させるために忘れてはならないことなのです。つまり、いくら儲けるのかということだけではなく、リスクを最小化し、敗者(株価が下落する企業)に投資をしないということが大切なポイントだと思います。
FANG銘柄を現在保有していない理由
Q:イオニーさんはFANG銘柄(※1)を一切保有していないとのことですが、興味はないのですか?
A : 過去にこんなことがありました。フェイスブック(FB)が最初に上場した時、IPO価格が40ドルであることを友人がわざわざ電話で伝えてきたにも関わらず、私は買い損ねてしまったのです。その後6〜8ヶ月のうちにフェイスブックは20ドルまで下落しました。今考えると、この時がベストの買い時だったと思います。しかし私はその当時フェイスブックの事業を理解しておらず、どうやって売り上げを上げているか知りませんでした。ウォーレン・バフェットのように私はチャンスを掴み損ねてしまいました。実際に私は、FANG銘柄のいずれも買い損ねています。これらの銘柄を買い損ねたことこそが、過去数年の経験においての最大の学びであり、私の投資戦略、PER(株価収益率)が30より小さい企業に投資するという厳密な戦略を一旦見直すきっかけとなりました。
私は現在、スモールキャップであっても、MOATつまり「経済の壁」(※2)を有し、創造的破壊をしながら成長する可能性がある銘柄、例えばフェイスブック、ネットフリックス(NFLX)、テスラ(TSLA)等への投資についてはオープンな姿勢です。しかし、私が現在も続けている戦略でもっとも賢明だったと思うのは、過去18年継続してバンガード・トータル・ストック・マーケットインデックスファンド(VTI)を保有していることです。なぜならこのファンド(ETF)は米国のほぼすべての上場銘柄を投資対象としているため結果的にFANGやその他の銘柄等がそれぞれわずかですが投資対象となっているからです。
※1:フェイスブック(FB)、アマゾン(AMZN)、ネットフリックス(NFLX)、グーグル(GOOGL / GOOG)
※2:ウォーレン・バフェットも度々言及する概念で、ビジネスに高い参入障壁があり、持続可能な競争優位性がある企業のこと
Q:イオニーさんは長期的な投資を目標としていますが、短期の利益を得ることを目指している人もいます。彼らについてどう考えますか?
A : 私は世の中には色々なタイプの人間や投資家、ウサギと亀(短期と長期)が必要だと思っています。私は短期トレーダーとの関係においては問題なく、むしろ恩恵を受けています。投資家がマーケットに何を求めるか分かっている場合においては、一般的にトレーダーは、マーケットに絶好の売買機会を作り出すカオスを生み出す存在です。トレーダーが株を売りポジションに持っている時、それは私がバリュー銘柄をディスカウント価格で買うタイミングなのです。トレーダーがコールオプションを買って株の値段が急騰する場合も、企業価値と資本評価額を増加させるので、私が保有する銘柄のPERの数式を拡大させることになります。
相場急変時の対応策とは
Q:例えばコロナショックのような大きな株価の下落に対し恐怖を抱く人も多いと思いますが、イオニーさんも恐怖を抱きますか?もしそうでない場合はなぜですか?マーケットが大きく下落した時はどういうアクションを取りますか?
A:いい質問ですね。私は、この予測不能で不安定な米国経済は、2020年の後半にも再び大きい反落を引き起こすと考えています。経済その他の不安定さは、通常マーケットを停滞させ、調整が起きます。2020年の初めに経験した大きな下落は、私にとっては資本投下することができ、良い買いの機会となりました。
2週間マーケットが下落するのを見て、保有銘柄のうち、過大評価されていた株をいくつか手放すことを決め、その売却資金で今後もマーケットが下落し続けるのに備えてポートフォリオを分散させるための銘柄を購入しました。おかげで2020年2月からの利益を確定し、同時に3月と4月にほぼ半値で追加の株式に投資をすることができました。結果的に私のポートフォリオは、以下のようなエネルギー、航空業界、銀行、金融、消費者サービス、バイオテクノロジー等の業界に分散しました。
・景気連動型消費財 :アルタビューティー(ULTA)、MGMリゾーツ(MGM)
・金融サービス:アメリスバンコープ(ABCB)
・ヘルスケア:リジェネロン(REGN)、アライン(ALGN)、ヴィーバ(VEEV)
・工業:ジェットブルー(JBLU)
・不動産:ペブルブルックホテルトラスト(PEB)
・テクノロジー:グリーンスカイ(GSKY)
米国株式市場に対する長期的な展望は
Q:米国株式市場に対する長期的な展望を教えてください。
A:私は米国マーケットに対して非常に強気な展望を持っています。なぜなら米国企業は、アメリカのカルチャーと商品もひっくるめて彼ら自身を国外に進出させているからです。そのため多くの米国の大型企業はいまや国際企業となっていますが、それがたまたま米国の証券取引所で株式が取引されているに過ぎないのです。
それ故に、米国株式市場に投資するということは、結果的に全世界に投資先を分散させるということになるのです。そのため世界的に資本主義や消費主義が続く限り、米国の株式市場の将来は明るいと考えています。
Q:最後に、日本で米国株式に投資している投資家へのアドバイスがあれば教えてください。
A:第一に伝えたいのは、とにかく投資を始めることです。気になっていたり、興味があったりする米国の株式を、いずれか1つでもいいのでとりあえず買ってみてください。「やることで学ぶ」ということをしてみてください。経験や実践からくる学習に勝るものはありません。「眺めているだけではゲームを制することはできない」と思います。まずは始めて、実践してみて、そこからしっかりと学び進み始めてみてください。
※マネックス証券では、ペブルブルックホテルトラスト(NYSE:PEB)の取扱いはしておりません。
※本内容は2020年5月1日に開催したオンラインセミナーの内容を記事化したものです。
オンラインセミナーは、以下にてご覧ください。