徐々に日常が戻ってきたという安心感と、新型コロナウイルス第2波への不安が織り交ざった日々が続いています。海外ではまだ新型コロナウイルスの猛威に衰えはなく、グローバル規模でみるとまだまだ不安要因が尽きないのが実際のところでしょう。

一方、予想以上に(と言ってもいいでしょう)強い株価には、実際の景況感との乖離を感じざるを得ませんが、それだけ「アフターコロナの世界」への期待値が高まっているということかもしれません。今後株価が調整局面を迎えた場合には、コロナ禍を景気とした産業構造の変化をしっかり見極めて銘柄選択をしていく必要があると考えています。

さて、今回のコラムは閑話休題として、つい先日、最新号が発刊された「会社四季報2020年夏号」の見どころ・見方に言及したいと思います。

なぜ会社四季報2020年夏号は注目されているのか

実は、筆者はこの会社四季報の新刊をかなり待ちわびていました。これほどに待望したのは本当に久々です。それはとりも直さず、春号発刊以降にコロナ禍が発生したことが理由になります。

通常であれば経済状況は連続的に変化するため、少々古めの会社四季報でも情報そのものの有用性はそれほど低下しません。しかし今回は、コロナ禍に伴う歴史的な経済停滞により、コロナの前後で経済状況に明確な断絶が生じてしまいました。

先行きが不透明なまま、多くの企業は当期の業績見通しも開示できない状況にあります。こういった非連続的な変化によって生じる「アフターコロナの世界」をどう見るか、そしてどう見られているか、を早く確かめたいと考えたのです。

このコラムのシリーズ初回で触れた通り、会社四季報の見解は1つの「コンセンサス」と考えられます。筆者自身もある程度独自の見通しを持っていますが、それが「コンセンサスと比べてどうなのか」を確認する比較対象として会社四季報のデータを見てみたいと思っていました。

新刊ではここをチェックしよう!

会社四季報の新刊で筆者がまず確認をしたのは、いわゆる“四季報文学”が冴え渡る業況欄と、四季報独自の見通しが示されている業績欄です。投資対象(および投資を検討している)企業について、これらの欄をざっと一読しました。

第3者である会社四季報が現時点で最も妥当であろうとする観測(Best Guess)に対し、業況欄では筆者が漠然と持っている業績動向感と不一致はないか、業績欄では特に下期の回復力はどうかを確かめるためです。

業況欄で何らかの見方の不一致があれば、こちらの見方を改めるべきかどうかを考えなければなりません。不一致があると、何となくこちらの認識が間違っているように思ってしまいがちですが、時として会社四季報よりも正確な予測を個人がしているケースも少なくありません。

ここは同業他社の業況欄にも目を通し、極力冷静に判断することが重要です。そこで自らの景況感に自信を深めることとなれば、コンセンサスと異なるその考え方は強力な投資機会の提供に繋がるかもしれません。

しかし、新刊の夏号でより詳細に見ておくべきポイントは業績欄でしょう。当期見通しの開示を保留とする企業が多い中、会社四季報の見通しの数字は間違いなく一つの基準として受け止められるはずだからです。

業績見通しにおいて重要なのは、3月決算の会社を例に取ると、下期の捉え方です。上期(特に第1四半期)がかなり厳しいことは既に周知の通りであり、この点において(特殊なケースを除けば)もはやサプライズはありません。むしろ株式市場の大きな関心は「アフターコロナの世界」における業績の回復力に既に移行していると考えるべきでしょう。
具体的には、当期通期見通しから上期見通しの数字を差し引くことで、下期のみの業績見通しを算出し、それを上期見通しおよび前年の上期実績の数字と比較してみるのです。上期見通しとの比較では業績の回復力を数字で把握することができます。

さらにコロナの影響が皆無であった前年上期の実績と比較することで、業績の復元度合いも数字で確認できるのです。もちろん、これには季節要因などを考慮する必要はありますが、それでも大きな流れを把握することは十分可能でしょう。

さらに翌期の業績見通しも併せて比較し、この回復力と復元度合い、会社四季報ページ上段の株価チャートを見比べてみて下さい。そこに何らかのギャップを見つけ出すことができれば、そこには投資機会が発生している可能性があります。

地道な作業とはなりますが、こういったプロセスを積み重ねることが「独自の投資スタイル・投資手法」を確立する礎になるでしょう。

今回は会社四季報の新刊発売直後ということもあり、そのタイミングでの「閑話休題」としました。前回まで継続していた「他社比較・銘柄選択」は次回より再開しますので、どうぞお楽しみに。