裾野が広がり上昇する米国株
先週のこのコラムでは、米国株市場においてマーケットの裾野が広がっていることについてお話をしました。
米株市場は、年初からFANG,GAFA(※)と呼ばれるグローバルなメガ企業の上げに牽引され上昇してきました。加えてS&P500 指数のなかでも時価総額の大きい銘柄が相対的に上がり市場を押し上げてきました。それが、最近になって、これまでアンダーパフォームしてきた大型銘柄以外の銘柄が、アウトパフォームする兆しがあったのですが、そのトレンドが先週も継続しているのです。
先週1週間(5月18日~22日)で、米国を代表する企業で構成されているS&P500種指数は3.2%上昇していますが、S&P小型株600種指数は8.9%の上げ、S&P中型株400種指数は7.42%、ラッセル2000種指数も7.84%と、時価総額の小さい株価指数が軒並みS&P500指数の上昇率を大きくアウトパフォームしています。
加えて、株式指数全体の先行指数と言われているダウ運輸株20種指数も前週に引き続き上がっており、先週は8.3%上昇しています。
年初からFANG銘柄が米国株市場を牽引できた理由ですが、FANG銘柄のEPS成長率がS&P500指数のEPS成長率を超えているという非常にわかりやすい理由に他なりません。
2020年のS&P500指数のEPS予想は前年同期比で22%の減益に対し、FANG銘柄の平均収益予想は前年同期比で17%の増益です。2021年についてもS&P500指数の29%の増益に対し、FANG銘柄は38%の増益が期待されており、いずれの年もFANG銘柄がS&P500指数の成長率を上回る見通しになっており、FANG銘柄が買われた理由は明らかです。
出遅れていた大型株以外の銘柄、上昇の理由
では、このところの出遅れていた大型株以外の銘柄の上昇の理由を考えてみたいと思います。
以下のチャートは、S&P500指数と、ITセクターを除いたS&P500指数のEPS成長率の推移を比較したものです。
今年のS&P500指数のEPSは22%の減益予想なのですが、ITセクターを除いたS&P500指数は26%の減益なのです。つまり、ITセクターがS&P500指数全体の企業利益を押し上げている訳です。
これはITセクターがS&P500指数全体のパフォーマンスをアウトパフォームしてきたことは納得がいきます。それが2021年になると状況は少し変わってきます。S&P500指数のEPSは2021年になると大きくリバウンドし、前年同期比で26%の増益と予想されていますが、ITセクターを除くS&P500指数のEPSは29%の増益が期待されており、来年になるとITセクター以外のセクターの業績の伸びがITセクターの業績の伸びを上回り始めるのです。
これは、今後米国経済が回復する過程において、ITセクター以外の業種の企業業績が相対的に大きく回復し始めてくるという見通しなのです。その最初の兆しが見えてくるのが2021年第1四半期からなのですが、今のマーケットの動きを見ているとそのような兆しを織り込み始めているということなのかもしれません。
株価指数は上がるなか、多くの投資家のセンチメントはネガティブ
このように米株市場は、経済再開に関するポジティブとネガティブなニュースのヘッドラインに一喜一憂しながら上昇しているのですが、その一方で米国の投資家のセンチメントはどうかといいますと、引き続き悲観的な見方が多いことが分かります。
米国の大手証券の顧客調査によると、10%の投資家だけが米国経済のV字型回復を予想、75%の投資家はUまたはW型の経済の回復を予想しています。また、25%の回答者だけが新たなブルマーケットが始まると思っており、68%の回答者が今回の上げはベアマーケットラリーだと回答しています。同社の顧客の過去10年間の現金保有率は4.7%なのだそうですが、現在は5.7%と歴史的にも高いレベルとなっています。
このようなデータは、一般的には逆張り的にみられることを考えますと、このような悲観的な見通しが根強い一方で、市場が徐々に上がっていくことについてはなんとなくですが納得感があります。
5月25日月曜日は、米国ではメモリアルディ(戦没将兵追悼記念日)で株式市場は休場となります。
米国では経済再開の一環で、ビーチなどに多くの人々が集まることが予想されます。
日本でも同じですが、連休中にコロナ感染者が増えないことを祈るばかりです。
(※)FANG: FANG:フェイスブック(FB)、アマゾン(AMZN)、ネットフリックス(NFLX)、グーグル(GOOGL,GOOG)の4社のこと。
GAFA: グーグル(GOOGL)、アマゾン ドットコム(AMZN)、フェイスブック(FB)、アップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)の5社のこと
(グーグルは、親会社のアルファベット(GOOGL、GOOG)が上場。)