新型コロナウイルス感染拡大もピークを迎えるか

ホワイトハウスの国民向けブリーフィングに登場、米国民に発言が注目されている感染症研究所の所長のドクター・ファウチは、医療関係は楽観的な見方をするようになっており、近いうちに米国での新型コロナウイルス感染はピークを迎える可能性が高いとの見解を発表しています。ソーシャル・ディスタンシングなどの緩和策が功を奏しているようです。同じく時の人となったNY州のクオモ知事も、州内では感染者増加カーブが平たん化してきていると発言しています。

S&P500指数は4日間で12%上昇

先週は、復活祭の休日を控えた3連休前の米国株でしたが、S&P500指数は4日間で12%上昇、週間で1974年来の大幅高となっています。
これにより、S&P500指数は、先月からスピード調整で始まったベアマーケットから早くも抜け出すことになりました。

米国では今週から第2四半期決算発表が本格化

米連銀が、企業や地方自治体に向けた追加で2兆3000億ドルの資金貸出を行うと発表、企業倒産が避けられるとの見方が強まり、株式市場の上げに貢献しました。
これで安心できるとよいのですが、そういう訳にもいきません。米国では今週から第2四半期決算発表が本格化するからです。今週は43のS&P500指数採用銘柄の決算発表が予定されています。

先週金曜日、4月10日時点での第1四半期のS&P500指数採用銘柄のEPSは、前年同期比で11.21%のマイナスと予想されており、1週間前の8.28%のマイナスから約3ポイント下方修正されています。このところ企業はアナリストの事前予想を平均4%程度上回る決算発表を行ってきましたが、今回事前予想を上回っていてもいなくともそれは関係なく、市場は第2四半期の業績や今年の後半の見通しに注目するでしょう。市場の期待感に対し、企業の経営陣が楽観的に見ているか、それとも悲観的に見ているか。決算発表が終わる来月半ばまで、株式市場はそういったコメントに一喜一憂するボラティリティの高い相場が続くでしょう。

4月13日週の決算発表予定

今週予定されているS&P500指数の主要企業の決算発表スケジュールとEPSコンセンサス予想は以下の通りです。尚、現時点で発表予定時間が分かっているものについはその記載もしています。時間は日本時間です。

EPSコンセンサス予想 vs 前年同期実績で記載(出所:Bloomberg)。

4月13日週はメガバンクの決算発表のオンパレードです。米国の銀行は2008年の金融危機の際には、金融危機を引き起こした悪党という位置づけでしたが、今回は米国民および企業にとっては今の経済危機の助け役となっています。今回の決算発表は、彼らのビジネスを通して見た米国経済の現状を示すものであり、見通しが注目されます。

4月14日(火)

ジョンソン・エンド・ジョンソン(NYSE:JNJ)  1.972ドル vs 1.39ドル (引け後)  
ウェルス・ファーゴ(NYSE:WFC) 0.559ドル vs 1.20ドル (21時)

4月15日(水)

バンク・オブ・アメリカ(NYSE:BAC)  0.543ドル vs 0.70ドル (19時45分)
シティグループ(NYSE:C)       1.424ドル vs 1.87ドル
ゴールドマン・サックス (NYSE:GS) 3.251ドル vs 5.71ドル     (20時30分)

4月16日(木)

ユナイテッド航空(NASDAQ:UAL)   -2.947ドル vs 1.15ドル
 

4月17日(金)

シュルンベルジェ(NYSE:SLB)   0.255ドル vs 0.30ドル    (20時)
カンザスシティー・サザン(KSU)   1.769ドル vs 1.54ドル        引け後

 トランプ政権の景気対策資金は米国経済に流れ始める

米国では今回の新型ウイルス対策の為の経済対策案に基づいた直接給付金が個人にも届き始めているようです。今回私のNYに住む友人が職を失う事になり、彼は先々週の水曜日(4月1日)に失業保険の申請を行ったそうですが、先週の金曜日には早速彼の銀行口座に、通常の失業保険に加え、失業者1週間辺り600ドルの特別手当も入金されていたそうです。通常は3~6週間かかるそうなのですが、彼の場合10日で入金されています。トランプ大統領が今回の経済対策法案に署名したのは3月なので、かつてない速さで国民に必要なお金が届くようになっているようです。失業保険の支払いも、通常であれば失業日から7日間は待機期間として支給されないのですが、今回は特例で失業日から手当てが支払われているようです。

米国では失業すると、日本のように役所に行って面接等を受ける必要はありません。失業保険の申請に必要な情報は、名前、社会保障番号(SSN)、免許証の番号、住所、連絡ができる電話番号、過去18か月の雇用主の名前と住所、雇用主事業番号だけで、特に失業を証明するような書類等を入手する必要はなく、オンラインやファックスで申請することができます。私の友人は、失業保険は銀行口座へ入金されましたが、希望すればデビットカードへの入金も可能なのだそうです。先月中旬からの3週間で1600万件を超えるという、今までにない数のアメリカ人が失業給付金の申請を行っていることもあり、州によってはシステムがパンクする状況も起きているようです。

刺激策の一つである、年収7万5000ドル(約820万円)未満の大人1人につき1200ドル、共働きの二人だと年収合計15万ドル(約1620万円)を上限に2400ドル、加えて全ての子ども1人につき500ドル(約5万5000円)の給付金は、所得の少ない人を優先し、今週にも送金が予定されています。

全てのお金の米国経済への流れがスピーディに起きているわけではないようですが、少なくとも個人にはお金が滞りなく回るよう配慮がされているのでしょう。
トランプ政権は、追加の景気刺激策を検討しており、今回の新型ウイルスで経済的なダメージを受けた分野に対ししっかりとした援助をしたいようです。

トランプ大統領の新型ウイルス政策の遅れ、様々な発言が多くのメディアに批判されている一方、米国政府によるこのような迅速な対応は、今後の米国経済の行方に大きなプラスとなることは間違いないのではないかと思います。2兆ドルという前例のない資金が必要なビジネスや人々に遅延なく届くか、それが今後の米国経済の方向性を決める重要なポイントになるのではないかと思います。

今週も新型ウイルスに負けない、健康な1週間をお過ごし下さい。