今週の株式相場は、引き続き神経質な展開ながら底値固めの動きと予想する。日経平均は1万8000円台を回復してまずはその水準を固めることが肝要だ。朗報は米国市場が落ち着いてきたこと。先週のダウ平均は前日比で1000ドルを超える値幅の騰落が4週ぶりになかった。週間の変動率は、前週まで2桁%だったが、2.7%の下落と通常の範囲に落ちついた。これを受けてVIX指数も3/10以降はじめて50ポイントを下回ってきた。とりあえずサーキットブレーカーが頻発するような一時のパニック状態からは抜け出したと言える。

先週末発表された米国の雇用統計でNFP(非農業部門の雇用者数)が前月比70万1000人減と、2010年9月以来の減少となった。市場予想の約14万人減を大きく上回る大きな減少となった。失業率も4.4%と前月の3.5%から大きく上昇した。驚くような数字だが、今後はもっと悪化するだろう。今回の統計の対象期間は、政府による外出制限措置で数百万人が解雇される前の段階だからだ。週次の新規失業保険申請件数が2週間で1000万件に達したことを考えればNFPも、さらに驚愕するような数字が今後発表されるだろう。

ただ、それにマーケットが驚かないことが救いである。確かに先週末のNY市場は雇用の悪化が重しとなったが、NFPの数字でショック安したわけではない。雇用統計が短期間でこれだけ悪化するのは、それだけ流動的な職種が解雇されたわけで、逆に言えばコロナが落ち着いた後の再雇用も早く行われるだろう。

今週8日には中国の武漢の封鎖が解除される予定である。イタリアの感染者拡大も峠を越えたと見られる。イタリア市民保護局の最新統計によると、前日からの感染者増加率は4%にまで減少した。アジアで中国に次ぐ感染規模となった韓国だが、新規の感染者は1日100人程度かそれ以下に抑えている。いち早く悪化した国々から、感染拡大のピークアウトが認められている。これらに共通するのは都市封鎖などの行動制限であり、行動制限すれば感染スピードが鈍化することの証左である。

そうしたなか日本政府が緊急事態宣言を行うかどうかも相場の大きな焦点だが、仮に宣言が出されても一時的な動揺にとどまるだろう。というのも、それで行われるのは、これまでと同じ、自粛の「要請」に過ぎないからだ。強制力も罰則もない。すでに多くの店舗や施設、公演などが休止され、学校の休校も決まった今、これからさらなる機能停止は限定的だろう。

決算は9日のセブン&アイ・ホールディングス(3382)やファーストリテイリング(9983)、10日の安川電機(6506)などがあるが、終わった2月期だけでなく今期の予想も今は意味がない。

今週の注目は「OPECプラス」の会合だ。OPEC(石油輸出国機構)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」は、6日に予定していた緊急のテレビ会合の開催を延期したが暫定的に9日に開くことを目指すと伝わる。ロシアの出方など注視したい。

いずれにせよ、コロナウイルスの感染拡大ペースが最大の焦点であることに違いはない。米国の外出制限等の効果が表れるまでもう少し時間を要するだろう。それは日本も同じである。よって市場は宙ぶらりんな状態が続くが、他の地域(中国、イタリア、韓国)のピークアウトを、数週間、数か月後の我が国の状況と受け止める前向きさが欲しい。

今週の予想レンジは1万7500~1万8700円とする。