米国経済は「未知の領域」へ突入
米国では、新型ウイルス対策として、国の経済活動を一時停止するという思い切った政策が続いています。昨年11月に上映されたディズニーのアナ雪2の、主題歌の「イントゥ・ジ・アンノウン」(未知の領域へ)はまるで、今の米国の置かれている現状を説明するかのようなタイトルとなっています。
先週米労務省が発表した失業率申請は328万人と近年の歴史ではみたことのない記録的な数字となりました。米国では、今後も当面この様な今まで見たことがないような経済が悪化する数字が発表されると思いますが、誤解を恐れずに言いますと、それらの数字はあまり意味がないのではないかと思っています。
米国政府が自国の経済活動を止めているのですから、どのような悪い数字がでても全くおかしくない状況下な訳です。その「未知の領域」で起きている米国経済へのダメージを緩和し、本来のあるべき姿に戻すため、米国時間先週金曜日の株式市場が引けた後、トランプ大統領は2兆ドルという前代未聞の規模の経済対策法案に署名しました。トランプ政権は、米国の威信にかけて米国経済を回復軌道に戻すため、必要があれば追加経済対策も辞さないとの強いコミットメントを表明しています。
今回の問題解決にあたっては、米国政府と米国のグローバル企業等が一丸となって対応しており、事態が収束に向かうのはIF(本当に向かうのか)ではなくWHEN(いつ起きるのか)の問題だと考えています。
今後の企業業績
週末に3月27日段階でのS&P500企業の今後の業績成長率予想を入手しました。
3月21日段階では2020年全体の業績予想は前年比1.52%の増益だったのですが、今回はついに1.73%の減益へと下方修正されました。世の中で起きていることをより現実的に反映した予想になり始めています。
四半期の業績予想の変化を見てみますと、2020年第2四半期は前回の3.79%の減益から、今回は9.81%の減益へ、第3四半期は3.04%の増益だったのが0.57%の減益へ下方修正されています。
第3四半期の予想についても、前回の3.04%の増益から0.57%の減益、第4四半期も8.4%から5.76%へ下がってきています。第4四半期も8.4%の増益から5.76%の増益へと下方修正です。
つまり、新型肺炎が米国企業の業績に与える影響というのは、第2四半期が9.81%の減益で最悪となり、その後第4四半期からは増益基調となり、来年2021年の第1四半期には15.55%の増益になることが見込まれるというのが現時点での市場のコンセンサス予想です。
但し、下方修正のレベルは十分でない可能性があり、下方修正は今後も続くのではないかと思いますが、今年の後半に改善してくるというトレンドは変わらないのではないと思っています。
では、このような業績トレンドを前提として、これからの米国株の動きについて考えてみましょう。
これは1990年から今までのS&P500指数と一株当たり利益(EPS)の推移を示したものです。
これをお見せしている理由は、五回の例を赤丸で囲んでいますが、これらの例を見ていただくと、歴史的に米国株の調整局面の後は、株価は、EPSが上昇し始める前に上がり始める傾向が散見できるということです。言い換えると、株価が最初に上がり、その後業績がついてくるという、株価はまさに先行指数になることが多いということです。
そうしますと、この事実が意味するのは、遅くとも第2四半期の決算発表が本格化する7月の半ばまでに株価は上がり始めている可能性が高いのではないかと思います。
もちろん、その時までに、米国での新型ウイルスの状況が改善し始め、米国経済が再開しているのが大前提となりますが。
株価が底を付けるもう一つの兆し
3月17日付のこのコラムで、2016年のJPモルガン(NYSE:JPM)のCEOが同社株価の底で行った自社株買いの話や、今回のダウ・インク(NYSE:DOW)のCEOによる自社株買いがあったことを紹介しました。
その後、多くの企業のマネジメントが自分の資産で自分の会社の株を買い始めているというデータが発表されました。インサイダーの自社株買の調査を行っているワシントン・トラッカーによると、今年の3月のインサイダーによる自社株買いは2009年3月来の高いレベルなのだそうです。
例えば、PCメーカーのデル・テクノロジー(NYSE: DELL)の創設者のマイケル・デルCEOは今回の下げで約2630万ドル(約2.89億円)相当のデル・テクノロジー株を市場で買っています。ウエルス・ファーゴ(NYSE:WFC)のチャールズ・シャーフCEOは約500万ドル(約5.5億円)、プラネットフィットネス(NYSE: PLNT)のCEOクリス・ロンドーは400万ドル(約4.4億円)分の自社株買いを行ったことが報告されています。このデータによると、2月24日の相場全体の下げ辺りからインサイダーのセンチメントがポジティブに変わり自社株買いが積極的になり始めたようです。
多分、一番会社の事をわかっているのは会社のトップ、そのトップが自分の現金で自社の株を買うということは、その企業の将来に対して自信の表れであり、株価が絶対的な底を当てることは難しいものの、現在の企業の株価のレベルが紛れもなく割安であるということは事実なのではないかと思います。
【米国株ツイッターアンケート】個人投資家はどう見ているか
先週末、ツイッターでアンケートを実施しました。投資家の皆さんの気持ちを知っていただくためです。
※アンケート回答期間は2020年3月26日から27日の早朝までです。
※下記に記載した質問文は、実際のTwitter上で投稿した文言とは異なりますが、意図する内容は変わりません。
今のあなたの米国株に対するセンチメントを最も適切に表しているのは以下のうちどれだと思いますか?
(回答 184)
ファンダメンタルズ的に強気である 27%
テクニカル的に強気である 13%
ファンダメンタルズ的に弱気である 48%
テクニカル的に弱気である 12%
企業のファンダメンタルズに強い懸念を持っている人が最も多い(48%)一方、強気に思っている人もそれなりに(27%)います。
マーケットのテクニカル的な見通しについては、意見がほぼ半分に分かれており相場の方向性にコンセンサスはないという興味深い内容です。
ご協力いただきました皆様、この場を借りてお礼を申し上げます。