米ドル/円が意外に下げ渋る要因!?
週明け3月9日、米ドル/円が一気に101円割れ寸前まで暴落したのは、新型肺炎への懸念、「コロナ・ショック」に、原油価格暴落、「原油ショック」が新たなリスクオフ要因として加わったことが大きかっただろう。原油安に歯止めをかけるための減産合意が決裂し、逆にサウジアラビアとロシアがシェアを優先する増産合戦に出る見通しとなって原油価格、たとえばWTIは一時30ドルを大きく割り込んだ。
では、サウジとロシアが増産合戦に動いて原油価格は一段安に向かうだろうかといえば、少し微妙な点もある。すでに原油価格は、記録的な「下がり過ぎ」になっている可能性があるからだ。
WTIの90日MA(移動平均線)からのかい離率は足元でマイナス40%以上に拡大した(図表1参照)。これは、2000年以降では2番目に大きなマイナスかい離率だ。
また5年MAからのかい離率もマイナス50%近くに拡大した(図表2参照)。これは、1990年以降では2番目のマイナスかい離率だ。
以上のように見ると、このWTI30ドル前後の水準は、短期的にも中長期的にもかなり「下がり過ぎ」懸念が強くなっているといえそうだ。その意味では、すでにかなり行き過ぎ懸念が強くなっている原油価格の下落が、さらに広がるには目先的に自ずと限度があるのではないか。
私は、3月11日付けレポート「パニック相場の裏側、金利低下の異常」で、金利低下が記録的な行き過ぎになっている可能性があることを紹介した。「コロナ・ショック」などを受けたリスクオフの中での米金利低下、そして原油価格の暴落などで、米ドル/円は一気に暴落した。ただ、その米金利低下、原油価格下落とも、すでにかなり行き過ぎ懸念が強まり、その修正が入りやすくなっている。それは、米ドル/円を目先意外に下げ渋ることにする要因になる可能性があるかもしれない。