FRB議長が先週示唆
新型コロナウイルスによる経済的打撃に備え連邦準備制度理事会(FRB)が3日、0.5%の利下げに踏み切ったが、ダウ工業株30種平均は急落した。市場の反応はそれほど不思議なことではない。
この日発表された先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁の共同声明は、新型ウイルス感染拡大への対応策を具体的には示しておらず、市場は失望。不安定な展開となっていた。
ジェローム・パウエルFRB議長が先週末2月28日に感染拡大による経済的打撃に対応して金融政策を打ち出すことを示唆しており、市場では既にFRBの利下げを見込んでいた。
市場は利下げをどうとらえていいか確信が持てず、当初NYダウは、300ドル超上げ、その後、下げに転じた。終値は2.9%安の2万5917.41ドル、S&P500指数は2.8%安の3003.37、ナスダック総合指数は3%安の8684.09。
相場が下げたのは道理にかなっている。利下げは相場を押し上げ、信用の流れを維持する一方で、新型コロナウイルスをめぐる状況がさらに悪化するのかという疑問を皆に抱かせてしまう。ナットアライアンス・セキュリティーズのアンドルー・ブレナー氏は「市場はどう反応していいかわからない」「われわれは、パウエル議長の記者会見で、FRBが利下げに続き、市場への無制限の流動性供給をするかどうかを知りたい」と語った。
問題は世界的大流行への恐れ
しかし、より大きな問題は米国経済が直面している脅威の類かもしれない。問題は金融危機や信用の危機ではなく、(新型ウイルスの)世界的大流行の恐れであり、FRBにできることは限られている。インディペンデント・アドバイザー・アライアンスのクリス・ザッカレリ最高投資責任者(CIO)は「FRBはCOVID-19の治療法やワクチンを開発できない。FRBは金融政策という、唯一やり方を知っている手段で、経済活動に対する脅威に対処している」と書いた。「FRBは明らかに、何もしない場合の打撃について検討し、何もせずに、リセッション(景気後退)に陥るリスクを冒すよりも、利下げの方がより説得力があると判断している」と述べた。
FRBに対する信頼は現在それほど強くない。実際多くの者は、FRBは株式市場を支えようとしているだけで、面白くない仕事をしていると考えている。ただ、混乱の中から買いの好機が現れつつあるとみる者もいる。エバーコアISIのデニス・デブッシェール氏は「ほとんどすべての者が、供給上の制約を鑑みると利下げはたいしたことはないと考えていることに留意すべきだ」「われわれがその考えを弱めよう。需要は明らかに影響を受けているが、供給が戻りつつあると合理的に想定できるのなら、FRBの利下げは需要に作用する」と述べた。
原文 By Ben Levisohn
(Source: Dow Jones)
翻訳 時事通信社
Published by Jiji Press in association with Barron's Group
当記事は、バロンズ・ダイジェストで2020/03/04に公開された記事を1営業日遅れで掲載しています。