急落でPER17倍に低下

週明け2日、ウォール街のアナリストによる投資判断引き上げが41銘柄に達し、過去30日間の最高を記録した。これに対し、引き下げは6銘柄にとどまり、ネットでもこの30日では最多。ブルームバーグのデータと本誌調査で明らかになった。

問題は、投資家にとってこれが何を意味するかだ。新型コロナウイルスで急落した後、株価が十分安くなったというしるしで、買いのシグナルなのか?それとも、無作為のデータで、投資家が問題なく無視できるものなのか?よくあることだが、それらの中間だ。株のバリュエーションは大きく低下し、市場はより魅力的になったものの、引き続き不透明感が強い。

新型ウイルスによる急落は早急かつ激しかった。ダウ工業株30種平均は先週12.4%下落し、S&P500指数は11.5%下げた。いずれも、直近の高値を10%以上下回り、調整領域に突入した。ダウ・ジョーンズ・マーケット・データによると、S&P500指数が最高値から調整領域に落ち込んだスピードはこれまでで最も速い。

株価急落で、S&P500指数の、株価に対する2020年の予想収益率(PER)は約19倍から17倍に低下した。19倍は歴史的平均をほぼ20%上回る水準。17倍は最近ではウォール街でノーマルとみなされている。

今回の急落が、投資判断変更のきっかけになったかどうか言うのは難しい。第1に月曜日は他の曜日に比べ、判断変更が多い。アナリストは週末を通し、最近の状況を検討する。データを見ると、アナリストはここ数週間、月曜日は他の曜日に比べ、若干ブルな傾向がある。

ただ、最近アナリストは全般的にベアで、過去1カ月間、評価引き下げが引き上げを約10%上回っていた。長い間には全体的には引き上げと引き下げはほぼ均衡するはずだが、最近の負のバイアスは、アナリストがバリュエーションについて若干不安を感じていたことを示している。

ベアードは急落後のチャンス期待か

投資判断の引き上げ、引き下げの数は、もちろん全体的なものだ。全体数は、判断引き上げの理由や、どのセクターが選好もしくは除外されるかなど、何も示していない。例えば、エネルギー銘柄は原油相場安のため、最近の市場急落局面で打撃が他よりも大きかった。原油の指標価格は年初来20%超下げており、最も強気なエネルギーアナリストの見方でさえも後退している。

2日には、エネルギーセクターで唯一、投資判断を引き上げられた銘柄がある。ゴールドマン・サックスはホーリーフロンティア<HFC>を「売り」相当から「ホールド」に上げた。株価は年初来35%安。石油精製業であるため、利益はエネルギーのスプレッド、すなわち、原油とガソリンの価格差などに、より大きく左右される。原油相場の絶対値との関係は比較的低い。2日の投資判断引き上げにより、エネルギー(セクター全般)について、より大きな結論を類推することは困難だ。

多くのハイテク銘柄も2日に投資判断を引き上げられた。ハイテクセクターは、半導体や電子機器の製造・組み立て工場が集まる中国に対するエクスポージャーを理由に、打撃がきつかった。例えば、ベアードはマイクロン・テクノロジー<MU>を「売り」相当から「ホールド」に引き上げ、ウエスタン・デジタル<WDC>を「ホールド」相当から「買い」に上げた。いずれの株も新型ウイルス懸念の影響を被っていた。ウエスタン・デジタルは直近の高値から約16%下げ、マイクロンは10%下落した。ベアードは急落後のチャンスをみているようだ。

投資判断を含め、どんなデータも見方は幾多ある。2日の判断変更は、突出した数値であり、吟味する価値がある。また、市場全般についても、小さいものではあるが、良いしるしだ。他の市場関係者が恐れている時に、一部アナリストがより多くのチャンスを見込んでいる。

 

原文    By Al Root
(Source: Dow Jones)
翻訳    時事通信社

Published by Jiji Press in association with Barron's Group

 

当記事は、バロンズ・ダイジェストで2020/03/03に公開された記事を1営業日遅れで掲載しています。