みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。

株式市場ではにわかに売り買い交錯の様相が見え隠れしてきました。ただし筆者は、直近の上げピッチが急であったことを考えれば、当然の調整とも受け止めています。焦点はやはり調整の後でしょう。再び上昇基調に戻るのかどうかを占うカギとしては、世界景気の堅調、消費税増税の影響軽微というマクロ面での確認が必要条件になると考えます。

世界景気に関しては米国の年末商戦や米中貿易摩擦の行方が大きな指標となる一方、消費税増税の影響についてはもう少し見極めに時間がかかる可能性があります。当面はボラティリティインデックス(恐怖指数)などを見ても波乱が起きやすい状況が続いています。ここは波乱が生じても動じないよう冷静な準備をしておきたいところです。

「ヒト・モノ・カネ」のうち、モノとカネの交友関係を知る

さて「アナリストが解説、会社四季報データ」基礎編8回目となる今回は、最下段右端のコーナーである「系列欄」に目を移してみましょう。ここでは銀行や証券、仕入先や販売先といった「系列企業」が記載されていますが、前回の資本欄と同様、この欄も決して頻繁に内容が変わることはありません。しかし、銘柄選択の際には筆者が丹念に目を通す部分でもあります。それは、この欄がいわば、当該企業の「交友リスト」だからです。

【図表1】会社四季報の誌面例
出所:マネックス証券作成

情報量豊富な会社四季報ですが、他社との関わりを直截的に記載しているのは実はこの欄しかありません(その他の欄は基本的に当該会社に関してのことのみ)。当然、「どういった企業と取引関係にあるのか」を知っておくことが投資銘柄を検討するうえでいかに重要であるかは議論の余地もないでしょう。

しかもこの欄では、ビジネスで最も重要な3つの要素である「ヒト・モノ(サービス)・カネ」のうち、モノとカネの部分で誰と主に交友しているか、が記載されています。少なくとも最低限の「交友リスト」を把握することができるのです。

メガバンク以外の銀行はあるか、証券会社の多様性は?

会社四季報でこの系列欄を見る際には、まず「カネ」の面での交友リストを確認したいところです。欄の中程に列挙されている銀行と証券会社がそれで、銀行では主としてメインバンクやサブメインバンク、証券会社であればファイナンス時における幹事会社が名を連ねています。

ここで筆者がまずチェックするのは、銀行であればメガバンク以外の銀行がリストされているかどうか、そして証券会社であればどの程度多様性があるか、です。

銀行についてはどうしても主流をメガバンクが占めるのですが、中には地方銀行や政策金融機関、農林中央金庫などがリストされているケースがあります。その場合、なぜそういった金融機関がメインもしくはサブメインの位置にあるのかに興味を持つのです。

地銀の場合は当該企業発祥の地で創業期から支援してきたという経緯かもしれません。政策金融機関であればメインの補完的役割がその起点であった可能性がうかがえます。銀行の交友リストを見るだけで、その会社の歴史や経緯の一端が読み取れると考えます。

証券会社についてもやはり大手5社となるケースが多いのですが、ネット証券や地場証券などがリストされているケースも少なくありません。また、証券が銀行とは異なる系列にあるケースも珍しくなく、メインバンクとは違って、発行体企業は柔軟に幹事証券を使い分ける傾向があります。一概に言い切ることはできませんが、幹事証券が多様な発行体企業ほど、シビアに証券会社を評価し、より合理的な選択をしている可能性が高いのではと想像することもできるでしょう。

仕入先・販売先の動向から企業の付加価値、依存度を見る

次は「モノ」の面での交友リストです。具体的には、欄下段に記載されている仕入先企業と販売先企業が注目されます。

ここでは2つのことを考えることができます。1つはバリューチェーンです。仕入先企業、販売先企業が上場していれば、会社四季報において一度それら企業のページもめくってみてください。そこに記載されている業績コメントや実際の業績トレンドを確認することで、一連の「モノ」の流れの中で当該企業がどういった位置づけなのかを推察することができるはずです。

もちろん、仕入先・販売先の各企業は当該企業以外にも取引があるわけですから単純に比較することにはリスクがあります。しかし、大きな流れや枠組みを把握することは十分可能でしょう。当該企業の産み出す付加価値を仕入先・販売先の企業動向から理解しようというプロセスです。

もう1つは、特定の仕入先・販売先への依存度です。特に、売上高の10%を越える販売先については有価証券報告書での開示義務がありますのでそちらも要確認なのですが、特定企業への依存度の高さは、それだけ効率が良いという反面、業績がその特定企業に強く影響されてしまうリスクも内包しています。やはり銘柄選択をするうえでは押さえておきたい情報の1つと言えるでしょう。

今回は「交友リスト」という視点で系列欄を解説してみました。人間でもその人を信用するかどうかを考えるうえで交友関係は非常に重要な情報です。こういった視点も是非、銘柄選択に取り入れていただければ幸いです。