日本の新紙幣発行は発表の5年後、その理由は?

日本銀行券の一万円券、五千円券、千円券について、偽造抵抗力強化等の観点から2024年度を目途に様式を新たにして製造することになったと4月9日に財務省から発表された。

香港に住んでいると、日本からのニュースは5月1日に平成から令和へと元号が変わり、関連ニュースでテレビ・雑誌等のメディアが埋め尽くされている感がある。他方、海外メディアは祝賀ムードの中、過剰報道とも思える姿勢にやや批判的な視点から今回の一連の動きを取材しているメディアも散見される。そんな中、一般庶民には忘れられたかと思われるのが、日本の新紙幣の発行である。

そもそも新紙幣の発行は発表から5年後(前回は発表から発行まで2年)と言うので、色々と「街中」では憶測を呼んでいた。日経新聞4月16日記事によると、現在50兆円あると言われるタンス預金をあぶり出して数兆円規模の景気刺激策になるのではとの期待が先行しているようである。

無論、財務省のホームページにはご丁寧に「現行の日本銀行券は、新しい日本銀行券が発行された後も、引き続き通用します」と注意喚起されているので、筆者はあまりそのようなあぶり出し効果があるかどうかは、疑問なしとしない。

したがって、最新技術を駆使して偽造防止強化が目的と素直に理解するしかないとは思うが、消費税増税に併せて官民一体となった「キャッシュレス」対応をしている中で、5年先の新紙幣発行発表はタイミング的にはやや違和感を感じる。

香港新紙幣、飲茶や中国歌劇が「顔」に

実は、香港も昨年2018年7月に新紙幣の発行を発表しており、500ドル紙幣は、今年2019年から、100ドルと50ドルと20ドルは、2019年半ばから2020年にかけて発行されると日本でも報道された。日本では日本銀行1行が発行するのに対して、香港では、HSBC, Standard Chartered Bank,そしてBank of Chinaの3行が発行体なので3行が足並みをそろえる必要があり、準備に相応時間がかかりそうである。

が、そこは香港何でも早い。5年でなく1年で実施だ。

しかも、日本銀行券のように新種の偽造防止策はここかしこに埋められるようであるが、もう一工夫されている。それは、香港当局が、The Hong Kong Society for the blind (香港視覚障害者協会)のスポンサーをしていることから、視覚障害のある方が紙幣を触って、紙幣の種類の違いが判る様な線を新紙幣には入れ込むとある。さすが、障害者向け対策をしっかりとしている街「香港」である。ちょっと鼻が高い。

ともあれ、やはり新紙幣のデザインが香港新紙幣でも最も話題になるところである。庶民が毎日最も頻繁に使うと思われる20ドル紙幣デザインの「顔」は、香港人大好物の「Dim Sum=飲茶」である。そして100ドル紙幣が「中国歌劇」とある。

日本の1万円札の人物像が、学問のすすめの「福沢諭吉」から日本資本主義の父とされる「渋沢栄一」に代わるということで大いに話題になっている一方、香港では歴史上の著名人が紙幣のデザインに採用されることなく、香港を連想させる「文化」「情景」などが採用されるところに興味を惹かれる。人物画を排除する事で政治色を紙幣からも払しょくさせたいという当局の意図の有無は不明だが、いかにも「香港」らしいデザインである。

以前仕事を何度かご一緒させていただいた渋澤健氏は、この新紙幣のデザインに渋沢栄一氏が採用された途端に五代目子孫ということでメディア露出が急速に増えた。同氏が主催するコモンズ投信も更に注目を浴びることになったことはご同慶の至りだが、香港では、「時代の花」より「飲茶」であることが個人的には好感がもてる。

香港も街を挙げての、フィンテックブーム下でキャッシュレスを政府主導で進めている中での新紙幣の発行。なぜこの時期にという疑問は自ずと出てくる。