香港は元号とは無縁の社会システム

4月1日に、日本の新元号「令和」が発表された。新元号は、新たな時代を予感させ、それが新年度スタートと合致して、筆者自身も清々しい気分で新年度を迎えることができた。

一方、香港には元号というものは日常生活の中では使われることはない。元号発表の翌日の当社全体会議で、日本の新元号について講話の中で引用したところ、香港人スタッフからは今ひとつ反応も弱く、何の話をしているのか…という顔をされてしまった。

ここで、元号について少しWikipediaで調べてみた。元号そのものは、年を数えたり、記録する方法である紀年法の一種であるが、歴史を遡ると、日本よりも中国の元号が使われ始めた時期は遥かに早い。日本は紀元645年の大化の改新の時に「大化」が用いられたのが最初と言われているようだが、継続的に使われるようになったのは、701年の「大宝」からだそうだ。

一方、中国の元号は、前漢の武帝の治世である紀元前115年頃に「建元」という元号が使われて以来、清王朝が辛亥革命(1911年)によって倒れるまで使われ続けたというのだ。実に2000年以上使われてきた歴史があるのには驚く。

その後1949年に中華人民共和国が設立され、西暦が採用されて以降、元号が中国本土で使われたことはないようだ。従って、香港も1997年まで英国領であり、その後中国に返還後も、元号については無縁の社会システムで動いている。

香港地元紙では日本の新元号がトップニュースに

そんな中、4月1日の地元紙「South China Morning Post」では比較的大きな記事で、日本の新元号のニュースを特集している。

「Japan names new imperial ‘Reiwa’era, signalling a ‘new mindset’ as abdication approaches」 (日本は、天皇退位に際して、‘新思考’を連想させる「令和」と言う新元号を名付けた) と概ね日本でのニュースと同様の趣旨のニュースタイトルを流していたが、わざわざトップニュースで流す処は意外であった。

まあ、恐らく日本に香港からの旅行者が、旅行するたびに、一般的な「西暦=グレゴリー暦」と「元号をつかった和暦」の読み替えに振り回されており、「元号=和暦」への関心が自ずと高くなったのではと想像した。

以前のコラム「外国人花見客と日本・香港間「貿易不均衡」」でも書いたが、香港の人口約760万人中、年間約230万人が日本に遊び(または仕事)に行き、日本滞在中、和暦に触れることが多いのだろう。

外国人旅行者が戸惑う日本の「西暦と和暦」

元号法によると、日本では基本的に元号の使用に関しては使用する人間の自由で、私文書などで使用しなくても罰則規定はないそうだ。結果として日本国中「西暦と和暦」が入り乱れた状況になっているのである。

ちなみに、運転免許証の記載は和暦であり、食品の消費期限も食品表示法で和暦と西暦の選択表示となっている。特に食品の消費期限が和暦の場合は、多くの外国人旅行者は戸惑うに違いない。

また、香港の金融機関では、当局の規制に従った本人確認義務を負っているが、日本居住者に対しては、パスポートと免許証の提示を求める場合が一般的だ。本人確認のための書類は、旅行書類が優先されるという規定があり、パスポートの記載が西暦であることで概ね問題は発生しない。

一方、免許証は居住を明らかにすることが目的であるため、生年月日欄が和暦記載になっていても問題にならない。もし、パスポートが和暦のままであったら、日本人が海外にて銀行口座を開設する場合に、本人確認ができなくて苦労するということになっていたのではないかと思う。

和暦=元号の議論が再び巷でされるのは、数十年先のことかもしれないが、予想以上に人々の生活に直に影響するだけに、公文書関係については西暦に統一など、世界を意識した「暦」を使うのが良いのではと考える。無論、カラオケでは、存分に「昭和世代」を満喫したい筆者であるが。

 

※次回の掲載をマネックスメールにおいて、 4/30(火)とご案内しておりましたが、5/7(火)掲載となります。