・仮想通貨市場は沈静化したように見えるが、今でも日々の変動率は主要金融市場の中で最大。過去2か月間の日次変動幅は平均4.1%。1日で12%上昇した日があった半面14%下落した日も。

・変動の要因を、規制、システム問題、株式市場の動向、参加者や商品の拡大に分解すると、市場が最も大きく反応したのは株式市場の動向、次いで、ハードフォーク等のシステム問題。

・米株市場がパニック的なリスクオフに見舞われた12月中旬はさすがに連れ安したが、それ以降は、米株やドルの下落時にはBTC(ビットコイン)が買われるという逆相関は健在。一方、規制強化や市場参加者増減等のニュースにはそこまで反応しなくなっている。

・現在の動きは、2013年の第一次仮想通貨ブームと暴落の時に極めて近い。当時はピークから8割下落した後、約1年半かけて復活。当面の注目は、金融緩和と米株市場の動向、米仮想通貨交換業者BakktのBTC先物取引開始や、米での仮想通貨ETF承認、各種「トークナイゼーション」の進展など。

ブームから1年、市場はすっかり動きがなくなったように見えるが・・・

仮想通貨市場は、2017年末のブームから1年が経ち、時価総額は13.5兆円と、17年12月のピークから8割程度下落した(1/18時点)。特に11月半ばに、BCH(ビットコインキャッシュ)のハードフォーク(仕様変更)による下落以降のこの2か月は、すっかり動いていないようにもみえる(図表1)。

 

しかしこれは以前の変動幅があまりにも大きかったため。いまでも、他の金融資産と比べると、仮想通貨はやはりまだ最もボラティリティが高い資産である。コインの種類は、1年で5割以上増え、現在2,111種類に上り、現在もじわじわと増え続けている(Coinmarketcap)。

過去2か月の平均日次変動率(前日からの変動率。価格はブルームバーグ)は4.1%と、トルコリラをも大きく上回る(図表2-1)。しかも、下落方向だけに動いているわけではなく、最大の上昇率は12%と、下落幅14%と同程度となっている(図表2-2)。この上昇は、アマゾンがブロックチェーン関連の商品のリリースや、BCHのハードフォーク問題収束などの好材料によるものだった。それ以外にも、12月中は、米国の株式市場が暴落に伴い、5~10%程度上昇した日もあった。

市場を最も大きく動かした要因は、「株式市場の動向」

足元で仮想通貨市場を動かしている要因は何だろうか。仮想通貨の値動きが大きかった日を抽出し、日々のニュースフローから、その要因を、規制、システム問題、株式市場の動向、市場参加者や商品拡大/減少に分類し、これらのファクターごとに前日比の価格変動幅(絶対値、つまり、下落幅もプラスとして合計)を合算した(図表3)。この結果、最も大きく市場が反応したのは「株式市場の動向」の要因だったことがわかる。
 

 

12月初頭には、パニック的なリスクオフ・ムードで株式とともに暴落した日もみられたが、過去1か月ではダウ平均が下落した際に仮想通貨が買われる動きが顕著になった(図表4)。

 

株式市場に次いで仮想通貨市場を動かしたのは「システム問題」である。特にこの時期は、前述のBCHの問題や、ETH(イーサリアム)の大型アップデートなどが大きく影響した。但し、足元で発生したETC(イーサリアムクラシック)への51%攻撃(1/7報道)や、ニュージーランドの取引所のハッキング(同1/16)などの小規模な不正事件に対しては、市場は殆ど反応しなかった。

「規制」のニュースもある程度市場を動かした。例えば、のちに誤報とわかったが「金融庁が仮想通貨ETFを検討するのでは」という報道があった1/7には、ビットコインが4.5%程度上昇し、逆に、米国の仮想通貨交換業者Bakkt(米証券取引所のグループ会社)がビットコイン先物の開始を延期と発表した12月末には5.6%下落した。但し、以前ほど市場を動揺させることはなかった。

一方、「市場参加者や商品拡大/減少」のニュースへの反応はまちまちだった。ETHベースのブロックチェーンゲームが活況を呈しているなどのニュースにはある程度ポジティブな反応もみられたが、中国のマイニング大手ビットメインや日系企業の事業縮小等のネガティブなニュースには市場はほぼ無反応だった。ある程度想定の範囲ということだろう。

当面の変動要因は?

ここまで価格が下がると、なかなか強気にはなれないが、一筋の光明は、2013年のマウントゴックス事件前の第一次仮想通貨ブーム後の暴落と復活の例である。図表5にある通り、現在の仮想通貨の動きは、第一次ブーム後の暴落時に近い。この時には、ビットコイン価格は、ピークから8割下落した後、1年半の低迷を経て大きく復活した。

 

当面の注目は、米国の金融政策と株式市場の動きであろう。米FRBが早期に利上げを停止し、緩和的な政策を続けつつも、米株式市場が軟調になった場合、再び仮想通貨に資金が向かう可能性もある。

また、市場参加者の拡大を促す動きとして、11月に延期されたBakktのBTC先物取引の開始や、米国での仮想通貨関連ETF承認の可否などが注目される。また、大きな流れとしては、「トークナイゼーション」の動きが注目される。最近では、不動産や、非上場株式等を「トークン」に小口化して販売する動きが出始めている。こうした市場が活発化すれば、仮想通貨の投資家層が拡大し、実用性への道筋も見え始めるだろう。

これらの動き次第では、仮想通貨市場の復活も夢ではない。

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